クリスティの表紙|心に花束
色鮮やかな≪花々≫が表紙を飾る表紙を紹介します。今回は米国William Morrow版(HarperCollins USA)から刊行されたミス・マープル・シリーズをご紹介。表紙絵はHolly Ovendenによるボタニアカル・アート、モチーフは≪毒をもつ花≫(deadly flowers)です。あと、草花の中にミス・マープルのシルエットが隠されているらしいですよ。
牧師館の殺人
嫌われ者の老退役大佐が殺された。しかも現場が村の牧師館の書斎だったから、ふだんは静かなセント・メアリ・ミード村は大騒ぎ。やがて若い画家が自首し、誰もが事件は解決と思った……だが、鋭い観察力と深い洞察力を持った老婦人、ミス・マープルだけは別だった! ミス・マープルの長篇初登場作を最新訳で贈る。
表紙を飾るのは待雪草(スノードロップ)。球根や茎にガランタミンというアルカロイド系の毒性を含むそうです。キーアイテムとして拳銃(リボルバー)が描かれています。

火曜クラブ
甥のレイモンドを筆頭に、前警視総監や画家など様々な職業の人々がミス・マープルの家に集った。一人の提案で各自が真相を知っている昔の事件を語り、その解決を推理しあうという〈火曜クラブ〉ができたが……田舎の老婦人ミス・マープルが、初めて驚異の推理力を披露した短篇13篇を収録。
今回紹介するWilliam Morrowのシリーズに『火曜クラブ』はないのですが、その内容はすべて「Miss Marple: The Complete Short Stories」に収録されています。
表紙を飾るのは短編「青いゼラニウム」( The Blue Geranium)に因んだと思われるゼラニウム。キーアイテムとしてナイフが描かれています。

書斎の死体
書斎に転がる死体なんて探偵小説の中だけ――が、現実に見知らぬ女性の死体が大佐の書斎で発見された。深まる謎を解くため、ミス・マープルが駆り出され、まもなく被害者と〈マジェスティック・ホテル〉の関係が明らかになるが……クリスティーが「ありふれた設定」を「意外な展開」でみせる渾身作。
表紙を飾るのはアサガオ(ヒルガオ科)。種子にファルビチンやコンボルブリンなどの毒性を含みます。キーアイテムとして一冊の本が描かれています。

動く指
傷痍軍人のバートンが療養のために妹とその村に居を構えて間もなく、悪意と中傷に満ちた匿名の手紙が住民に無差別に届けられた。陰口、噂話、疑心暗鬼が村全体を覆い、やがて名士の夫人が服毒自殺を遂げた。不気味な匿名の手紙の背後に隠された事件の真相とは? ミス・マープルが若い二人の探偵指南役を務める。
表紙を飾るのはオニゲシ(オリエンタルポピー)。テバインやオリパビンなどのアルカロイド性有毒物質が含まれています。ただし、阿片の原料となるケシとは違って、麻薬成分は含まれていません。キーアイテムとして羽ペンが描かれています。

予告殺人
その朝、新聞の広告欄を目にした町の人々は驚きの声をあげた。「殺人お知らせ申し上げます。12月29日金曜日、午後6時30分より……」いたずらか?悪ふざけか?しかし、それは正真正銘の殺人予告だった。時計の針が予告の午後6時30分を指したとき、銃声が響きわたる!大胆不敵な殺人事件にミス・マープルが挑む。
表紙を飾るのはジギタリス(キツネノテブクロ)。めっちゃ毒性の強いジギトキシンが含まれています(死にます)。キーアイテムとして懐中時計が描かれています。

魔術の殺人
旧友の依頼で、マープルは変わり者の男と結婚したキャリイという女性の邸を訪れた。その家は非行少年たちを集めた少年院で、異様な雰囲気が漂っていた。キャリイの夫が妄想癖の少年に命を狙われる事件が起きたのも、そんななかでだった。しかも同時刻に別室で不可解な殺人事件が発生していた!
表紙を飾るのはパロットチューリップ。ツリピンという有毒成分が含まれているそうです。キーアイテムとしてタイプライターが描かれています(タイプライターは『動く指』では?とも思うのですが)。

ポケットにライ麦を
投資信託会社社長の毒殺事件を皮切りにフォテスキュー家で起こった三つの殺人事件。その中に、ミス・マープルが仕込んだ若いメイドが、洗濯バサミで鼻を挟まれた絞殺死体として発見された事件があった。義憤に駆られたマープルは、犯人に鉄槌を下すべく屋敷に乗りこんだ。マザー・グースに材を取った中期の傑作。
この花は何でしょう? シャクヤク(芍薬)? ボタン(牡丹)? 詳しい方、教えてください。キーアイテムとして描かれているのはティーカップです。

パディントン発4時50分
ロンドン発の列車の座席でふと目をさましたミセス・マギリカディは窓から見えた風景に、あっと驚いた。並んで走る別の列車の中で、いままさに背中を見せた男が女を締め殺すところだったのだ……鉄道当局も、警察も本気にはしなかったが、好奇心旺盛なミス・マープルだけは別だった!
表紙を飾るのはトリカブト。ミステリ好きで知らぬものはない、植物界屈指の独走です。猛毒アコニチンを根に含有します。キーアイテムとして薬瓶が描かれています。

鏡は横にひび割れて
穏やかなセントメアリ・ミードの村にも、都会化の波が押し寄せてきた。新興住宅が作られ、新しい住人がやってくる。まもなくアメリカの女優がいわくつきの家に引っ越してきた。彼女の家で盛大なパーティが開かれるが、その最中、招待客が変死を遂げた。呪われた事件に永遠不滅の老婦人探偵ミス・マープルが挑む。
表紙を飾るのはジャーマンアイリス。葉や根などにイリジンやイリシジンなどの有毒成分を含んでいるそうです。キーアイテムとしてカクテルグラスが描かれています。

カリブ海の秘密
転地療養のため西インド諸島を訪れたマープル。一週間は何事もなく穏やかに過ぎていった。しかし、まもなく彼女を相手に懐古談をしていた少佐が死体となって発見される。以前から少佐は何かを憂いていたようなのだが、いったい何が起こったというのか?美しい風景を舞台に老嬢ミス・マープルが事件の謎に挑む。
表紙を飾るのはベラドンナ。こちらもアトロピンやスコポラミンなどを含有する猛毒植物です。キーアイテムとしておしろいが描かれています。

バートラム・ホテルにて
大都会ロンドンの一画に、エドワード王朝時代そのままのたたずまいを保つバートラム・ホテル。だが、その平和で静穏なムードの裏でも、事件の影はうごめいていたのだ。常連客の牧師が謎めいた失踪をとげ、やがて霧の夜、恐るべき殺人事件が! ホテルで休暇を過ごしていたミス・マープルが暴く、驚愕の真実とは?
表紙を飾るのはドクニンジンではないかと思われます。その名の通り、もちろん毒。ギリシャの哲学者ソクラテスが飲んだのが、このドクニンジンだと言われているそうです。キーアイテムとしてルームキーが描かれています。

復讐の女神
マープルは、かつてともに事件を解決した富豪の死を知る。その一週間後、「ある犯罪調査をしてほしい」と富豪が記した手紙が届く。だが、具体的な犯罪の内容については何も書かれていなかった。マープルは手紙の指示通り旅に出るが、そこには様々な思惑をもつ人々が待ちかまえていた。『カリブ海の秘密』の続篇。
表紙を飾るのはキダチチョウセンアサガオ(エンジェルストランペット)。チョウセンアサガオの仲間なので、もちろん有毒です。キーアイテムとしてホイッスルが描かれています。

スリーピング・マーダー
若妻グエンダはヴィクトリア朝風の家で新生活を始めた。だが、奇妙なことに初めて見るはずの家の中に既視感を抱く。ある日、観劇に行ったグエンダは、芝居の終幕近くの台詞を聞いて突如失神した。彼女は家の中で殺人が行なわれた記憶をふいに思い出したというのだが……ミス・マープルが、回想の中の殺人に挑む。
表紙を飾るのはアジサイ(紫陽花)。こちらも毒性があるそうです。キーアイテムとして手紙(封筒)が描かれています。

世の中の植物にはすべて毒が含まれてるんじゃないか、という気になってきました。次回は『エッジウェア卿の死』を紹介します。
