もしソニーが継いでいたら?『ゴッドファーザー』ソニーの死を考察
もしマイケルではなく、ソニーがヴィトのあとを継いでいたら、コルレオーネ家はどうなっていたんだろう。
たぶんこの問いを出すと、「短気だから無理」で終わる人は多いと思う。
私もそう思っていた。
でも、私はマイケルよりソニーの方が好きだ。
だからあえて、ソニーがドンを継いでいたらどうなっていたのか、少し考えてみたい。
ソニーは粗暴だし、口も軽い。
でもマイケルより人間味がある。
コニーが傷つけられれば怒るし、家族のためならすぐ動く。いい兄貴ではあったと思う。
フレドに対しても、ソニーならもう少しいいポジションに置いて、丁寧に扱ったんじゃないか?という気もする。
ただ、ドンとして見るとかなり危うい。
ソニーの問題は「短気だから」だけじゃない。
何に反応するのか。何をされたら怒るのか。
それを敵にいともたやすく見せてしまう。
ソニーが料金所で殺されるまで、映画はその危うさを何度も見せている。
■ 露呈するファミリーの中のズレ
ソロッツォとの会談で、ヴィトは麻薬ビジネスへの参加を断る。
ところがタッタリア家が投資を保証する話が出た瞬間、ソニーが口を挟んでしまう。
ヴィトは会話を止める。
会談が終わったあと、ソニーだけを呼び止めて叱る。
ファミリーの外の人間に自分の考えを見せるな、という趣旨のことを言う。
ここで漏れたのは「ソニーが麻薬に興味がある」という情報だけじゃない。
コルレオーネ家の中で、父と息子の意見が一致していない。
それが交渉相手に見抜かれてしまった。
ヴィトがいなくなれば、ソニーとは話ができるかもしれない。
少なくともソロッツォ側がそう考える材料にはなっている。
実際、ヴィト襲撃後のソロッツォは、ソニーが麻薬ビジネスに前向きだったことを前提にトムと話している。
さらに、父親を撃たれたソニーがまず報復へ動くことまで読んでいる。
ソニーはまだ何もしていない。
なのに、次の行動を敵に予測されている。
ファミリーの外に悟られてはいけないものを見せてしまった。
ヴィトの叱り方は、かなり本質を突いていたと思う。
■ でもソニーは無能じゃない
ここを「ソニーは頭が悪かった」で終わらせると、かなり雑になる。
ヴィトが撃たれたあと、ファミリーの指揮を執るのはソニーだ。
マイケルがソロッツォとマクラスキーを殺す案を出したときも、最初こそ笑うが、その後は計画を受け入れている。
ファミリー側では会談場所を特定し、銃を用意し、逃走の手配まで進めていく。
実際に作戦は動く。
原作でも、ソニーには強さがあり、勇気があり、寛大さもある。
ファミリーの仕事で役に立つ男として描かれている(フレドよりだいぶマシ)。
戦えない男じゃない。むしろかなりの武闘派だ。
ただ、原作では同時に、短気が判断ミスにつながることも早い段階から書かれている。
戦う力と、ファミリー全体を長く率いる力は同じじゃない。
ヴィトが撃たれたあともそうだ。
ソニーはソロッツォへの報復を優先し、他のファミリーとの戦争まで受け入れる方向へ傾く。
怒って何も考えられなくなるわけじゃない。
考えて、指示も出せる。
その状態でも、強い刺激を受けると反撃の方へ大きく傾いてしまう。
これを「ソニーは頭が悪い」で処理したくはない。
強い刺激を受けたとき、長期の戦略より目の前の反撃を選ぶ。
そういう傾向がある、というだけの話だ。
■ カルロを殴ったとき
コニーの顔に暴行の跡を見たソニーは怒る。
コニーは何もしないでほしいと頼む。
ソニーも、彼女の前ではいったん落ち着く。
そのあとソニーはカルロのもとへ行き、人目のある場所で激しく殴る。
さらに、もう一度妹に手を出したら殺すと警告する。
ここは兄として見ると分かりやすい。
私もソニーのこういうところは好きだ。
家族がやられたから許せない。
だから自分が出張る。
でもドンの振る舞いではない。
妹を傷つければソニーが動く。
何をすればこの男が冷静さを失うのか。
外から見える形で教えてしまった。
■ 続くカルロの暴力
そしてカルロは再びコニーへ暴力を振るう。
コニーから電話を受けたソニーは激昂する。
止められても、そのまま一人で車を出す。
トムは後から部下を追わせる。
ここだけ見れば、短気なソニーが勢いで飛び出した場面だ。
でも、その前に一度同じ反応を見せてしまっている。
コニーが傷つけられる。
ソニーがカルロのもとへ向かう。
もう一度コニーが傷つけられる。
またソニーが向かう。
一度目で反応を学習され、二度目は、その反応をうまく利用されてしまった。
ソニーは料金所へ一人で先着する。
前を塞がれ、待ち伏せしていた男たちから大量の銃弾を浴びる。
私は初めて観たとき、「もうソニーが死ぬのか」とかなり驚いた。
同時に、ここからどんどん死んでいく映画なんだろうな、と少し心構えもできた。
でも改めて流れを見ると、ソニーの死は突然起きたわけじゃない。
料金所に着くずっと前から、そこへ向かう行動パターンが示されている。
■ ソニーを殺したのは、家族愛じゃない
ソニーはコニーを大事にしていた。
そこを欠点にするのは違うと思う。
妹が殴られて怒ること自体がおかしいわけじゃない。
問題は、怒ったあとに自分がどう動くか、手の内を外部へ見せてしまったことだ。
ソロッツォとの会談では、自分が何に興味を持つのかを漏らした。
ヴィト襲撃後は、強い感情を受ければ報復へ向かうことを読まれた。
カルロを公衆の前で殴ったときは、家族を傷つけられたら自分から出ていくことを見せた。
そして二度目。
同じツボを押されて、同じ方向へ動いた。
映画の終盤では、コニーとの騒動を利用してソニーがバルジーニ側へ差し出されたことも回収される。
カルロへの暴力だけがソニーを殺したわけじゃない。
ソニーという人間の反応を、敵に利用された。
■ ヴィトは、同じ状況で踏みとどまる
ソニーが殺されたあと、ヴィトも当然平気ではいられない。
息子を殺されている。
でも、そこで報復へ走らない。
戦争を止める。
五大ファミリーとの会談を開く。
ソニーの敵討ちより、マイケルを安全に帰国させることを選ぶ。
ソニーとは違いドンの振る舞いを徹底している。
感情がないわけじゃない。
感情とファミリー全体の判断を分けている。
ヴィトを撃たれたソニーは戦争へ傾く。
ソニーを殺されたヴィトは戦争を止める。
この差はかなり大きい。
後半ではヴィト自身も、ソニーをドンとしては良くなかったと振り返っている。
だからといって、ソニーに能力がなかったことにはならない。
実際にヴィト不在時の指揮を執っていた。
戦えるし、決断もできる。
ファミリーへの情も強い。
年齢と経験でこれから変わった可能性だってある。
トムやマイケルが支えれば、また違う形になった可能性もある。
それは確かめることはできなかったが。
■ もしソニーがドンになっていたら
ここまでを踏まえて、もしソニーが生き延びてドンになったとしたらどうなったのか。
欠点が多いとはいえ、前述した通り、もっと経験を積めば変わった可能性はある。
トムのような参謀がそばにいれば、ソニーの弱点をある程度補えた可能性もある。
戦時には、ソニーの強さが武器になる場面もあったと思う。
だから「ソニーは短気だからドン失格」で片づけるのも違う。
個人的には、マイケルがドンになった場合より、ソニーの方がフレドを丁寧に扱っていいポジションに置いたんじゃないかと推察できる。
それがファミリーにとって良かったかは別の話だけど。
ただ、映画の中で示された弱点はかなり危ない。
自分を動かす条件まで外部に簡単に晒してしまう。
本人一人ならまだしも、ドンがそれをやればファミリー全体の弱点になる。
そこを直せないままなら、ソニーの強さがそのまま危うさにもなっていたと思う。
それでも、トムやマイケルに支えられながら、力技でファミリーを切り盛りするソニーは見てみたかった。
『CUBE』の考察記事も置いておきます。
数学がわからなくても最後まで観られる理由を考えた記事です。よければ覗いてみてください。
https://note.com/darkcineroom/n/n29b1bfaab842
