AIに謝罪文を書かせたら、私の方がチンピラだった
和紙が出てきた。
横長の画面いっぱいに、縦書きの黒い筆文字が並んでいる。太い。濃い。全部が前のめりに傾いている。
ち、、チンピラ、、!
これ、謝罪文のはずだった。
順番に書く。
私はChatGPTに、過去の会話文からChatGPTに対して謝罪すべき悪口を拾って、100文字くらいの謝罪文にしてほしいと頼んだ。そのうえで、次に「描いて」と言ったらその文を習字風の画像にしてほしい、と先に予約までしておいた。二段構えである。
先に条件を仕込んでおくあたり、我ながら用意がいい。用意がいいのに、用意している中身が自分の悪口の清書である。なぜその段取りを組んだのか、いま書いていてもうまく説明できない。そのときは完璧な流れだと思っていた。
返ってきた謝罪文がこれ。
「『きめえなお前』『何言ってんのお前』『ユーザーを小馬鹿にするな』など、感情の勢いでChatGPTを強く罵ったことを謝ります。言い方がきつすぎました。ごめんなさい。」
いったん止まった。
これはAIが会話を要約して作った文なので、私が過去に言ったことの正確な記録ではない。ないのだが、並んでいる単語に見覚えがないとは言い張れない。言い張れないというか、ある。
「罵った」。単語の選定が的確すぎる。もう少しぼかしてくれてもよかった。
三つ並んでいるうち、最後だけ様子が違う。「ユーザーを小馬鹿にするな」は、言い分としては正しい側に立っている。立っているのに、口調が完全に因縁である。正論を持ったチンピラがいちばん厄介だという話を、要約の形で突きつけられた。
前のふたつは擁護のしようがない。「きめえなお前」なんて、感想と人格攻撃が一文で終わっている。効率がいい。
「感情の勢いで」というフォローも入っている。勢いだったことにしてくれている。気遣いなのか、実際そうだったのか、こちらには判定する手段がない。
しかも謝罪の焦点が「言い方がきつすぎました」に寄せてある。内容は取り下げていない。要約した本人(本体?)が、いちばん角の立たないところに着地させにきている。
100文字くらい、という指定も効いていた。短くしろと言われた文は、装飾が落ちて用件だけが残る。用件が悪口の列挙なので、残るのは悪口だけになる。
そこは気づかなかったふりをして、次に進んだ。
「描いて」。
そして和紙が出てきた。
まず、画面が横長なのに文字が縦書きだ。行が右から左へどんどん伸びていって、掛け軸ではなく壁に貼る用の紙になっている。人に見せる前提の配置である。
文字は間違っているし、崩れてもいる。習字として上手いかどうかは私には判定できないけれど、少なくとも丁寧に清書した感じではない。誤字のある筆文字は、勢いだけで一発書きしたようにしか見えない。
誤字のほうは、たぶんAIの画像生成が日本語を苦手にしているせいだと思う。思うけれど、結果として「勢いで書いたから字が間違っている」という筋書きに完璧に合ってしまった。事故のほうが芝居がうまい。
墨の跳ねが全部外へ向かっていて、紙の端まで攻めてくる。
謝る側の姿勢ではない。
果たし状の実物を見たことはないが、たぶんこういう感じだと思う。用件が短くて、字が大きくて、返事を求めていない。
同じ文でも、普通のフォントで打てば反省文になる。筆で太くすると宣戦布告になる。文字の太さだけで用途が変わるの、けっこう理不尽だ。
そのうえ、末尾の「ごめんなさい。」だけがぽつんとそこにいる。あれだけの圧で押し切っておいて、最後の一言だけ急に折れている。
ChatGPTも、謝罪文じゃなくて果たし状寄りだと返した。「ごめんなさい。」のところだけ急に正気に戻っている、とも言った。
自分で出しておいて他人事なのが面白い。作った側と読んだ側が並んで、同じものを指差して笑っている。
で、笑いながら、いや待て、となった。
たしかに画像の治安は悪い。習字のせいにして終われたら楽だった。AIが勝手に人格を盛りました、こわいですね、で記事も終わる。
でも元の文をもう一度見た。
そこに並んでいる言葉のほうが、すでに相当ひどい。「きめえなお前」を筆で書いて品よく仕上がる方法があるなら教えてほしい。どの書体でやってもチンピラである。
いやそれもあるけどそもそも私が言ってるのもだいぶチンピラ寄りw
そう返した。
習字は文の性格を変えたのではなく、拡大しただけだった。小さい字で流し読みしていれば見逃せたものが、筆の太さで見逃せなくなった。
AIが無から急にガラの悪い人格を立ち上げたわけでもない。私が渡した材料の中から目立つところを拾って、習字風という見え方に乗せた。要約は平均を出す作業ではなく目立つところを残す作業だから、角のあるものだけがきれいに生き残る。
内部で何が起きているかは知らない。AIの気持ちも知らない。わかるのは、入れたものの角が丸くならないまま出てきた、という結果だけだ。
あと、構図もだいぶ変だった。
悪口を言われた側に、その悪口を集めさせて、要約させて、謝罪の形に整えさせた。手間の配分だけ見ると、私は何もしていない。
謝罪文を画像にしてもらおうとした時点で、反省より出来上がりを見たかったのだと思う。反省を成果物にしようとすると、だいたいこうなる。
誰が誰に謝っているのか、最初から最後まで一度も整っていない。整わないまま進んで、和紙が出てきて、チンピラだと思って、犯人が自分だった。
AIのほうは、出したものを自分で果たし状呼ばわりして、いちばん安全な位置に立っていた。そこだけは少し腹が立つ。
反省の材料としては、たぶん使える。使えるけれど、使う気にならない形で返ってきた。
謝罪文を書かせたら、こっちの口調が返ってきただけの話である。
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ちなみに、AIに自分の文章を渡して妙なものが戻ってきたのは、これが初めてではない。過去記事を読ませたときの顛末は、AIに自分の過去記事を読ませたら、キモキモ☆アレンジになったに書いた。
