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音楽教育のリアルと理想 ― 第12話:私がたどり着いた答え 

前回の記事の続きです。

前回も書いたことですが、楽譜を作り終えたとき、私は「これで一区切り」だと思っていました。
ところが、本当に時間がかかったのは、楽譜そのものではなく、それを誰かに届けることだったのです。


♪1. 良いものを作れば届く、というわけではない

オリジナルの楽譜を作る。
それ自体にも、もちろん手間はかかります。
けれど、作り終えてから配信するほうが、ずっと長い道のりです
 
今は、良いものを作ったからといって、自然に誰かの手に届く時代ではありません。
情報があふれる中では、「見つけてもらう」こと自体が、ひとつの仕事目標になっています。
楽譜を必要としている人に届けるために、演奏動画を作り、YouTubeやInstagramで発信することにしましたが けれど、ここで思いがけない壁にぶつかったのです。

♪2. 本業は「教えること」なのに

私の本業は、ピアノやエレクトーンを教えることです。
動画を配信して届けようとするということは、私は「動画編集のやり方を覚える」ところから始めなければなりません。
撮影の仕方、音と映像の合わせ方、テロップの入れ方、書き出しの設定――どれも、ピアノやエレクトーンの指導とはまったく別の技術、ITスキルです。
覚えなければ、何ひとつ前に進みません。

けれど、本当に困るのは、その編集作業に時間を取られてしまうことです。
今はチームを組んでいるので一人作業ではなくなりましたが、1本の動画を仕上げるのに、想像していた何倍もの時間がかかります。
撮り直して、音がずれて、また撮り直して、ようやく編集に入っても、思うように仕上がらない。
気づけば、一日の多くが「編集の時間」に取られてしまいます。 
 
その間、生徒さんと向き合う時間や、レッスンを準備する時間は、確実に削られていきます。
本業のはずの「教えること」が、どんどん後ろに追いやられていく。
やりたいことのために始めたはずの作業に、やりたいことの時間を奪われていく――
この感覚に、「自分は何屋さん?」と思うこともありました。
何より時間がなくなり自分の時間はほとんどないものでした。

♪3. それでも「届ける」を選ぶ理由

それでも、これを続けていくこと。
理由は、はっきりしています。
弾きたい曲が見つからず、諦めてしまう人をなくしたいからです。
楽譜がないから弾けない。
教室に合わないから続かない。
そうやって、音楽から静かに離れていく人を、私は現場で何人も見てきました。
だからこそ、まだ出会えていないその人に向けて、楽譜を作り、動画を届ける。
発信は、宣伝ではなく――まだ会えていない、会えない生徒さんへプレゼントを贈るようなものだと、今は思っています。

作ることより、届けることのほうが、ずっと難しい。
けれど、その難しさの先にしか、本当に必要としている人との出会いはないのだと思います。
楽譜販売事業を立ち上げてまだ1年くらいですが、すでに多くの方に譜面を購入してもらえています。
目には見えないですが、私が制作・アレンジした譜面を購入し使ってくださり、それを弾いてもらえているというのはすごいことだと思っています。

♪4. 連載を終えるにあたって ― 私がたどり着いた「理想」

この連載では、ピアノが続かない理由から始まり、良い指導とは何か、教室の選び方、これからの教室像、発表会の役割、そして楽譜販売のことまで、思うままに書いてきました。
たくさん書いてきて、たどり着いた答えは、とてもシンプルなものでした。
理想の音楽教育とは、「続けられる」こと 「続けていく」こと
上手にさせることでも、たくさん通わせることでもなく、その人が音楽を好きなまま続けていってくれること。
弾きたい曲を、弾きたいと思ったときに弾けること。
そのために、楽譜を作り、慣れない動画編集も覚え、こうして配信を続けています。

リアルは、理想ほど簡単ではありません。
けれど、リアルと向き合った先にしか、理想は形になっていかないのだと思います。
 
長い連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。
これからも、Dolce Of Musicは「音楽を続けたい」という気持ちに、楽譜という形で寄り添っていきます。

⭐️オリジナルアレンジの楽譜を各サイトで販売しています♪
私が主宰するDolce Of Music音楽教室では、
「弾きたい曲に楽しく取り組める」「だから楽しく続けられる」
ことを大切にし、譜面が発売されていない曲も一人ひとりのレベルに合わせてアレンジしています。 
生徒さんの選曲や譜面作りに悩む講師の方に役立てていただきたくて、デジタル楽譜の販売を始めました。
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