音楽教育のリアルと理想 ― 第8話:未来のピアノ教室 実践編 ~「ピアノを続けられる教室」はどう作るのか~
前回の記事の続きです。
これまで、子どもたちがピアノを続けやすい環境のためにピアノ教室やレッスンがどうあるべきか、私の意見を書いてきました。
今日はもう少し具体的に書いてみたいと思います。
♪1. 今の時代に必要なのは「子どもたちの興味を引き出す工夫」
今の時代、ピアノ教室は「習わせる」「通わせる」だけでは、なかなか続かない時代になってきていると思います。
前回の記事にも書いたように、子どもたちが音楽に興味をもつ入り口は、
「好きな曲を弾きたい」
という気持ちであることが多いのではないでしょうか。
だからこそ、講師側が一方的に曲を決めるのではなく、
「何か弾いてみたい曲はある?」
「最近、好きな曲はある?」
と、生徒本人の気持ちを引き出してあげることが大切だと思います。
もちろん、生徒さんが言ってくる曲を講師側が知らないこともあります。
でもそこで、
「知らないから無理」
「この曲はレッスン向きではない」
とすぐに判断するのではなく、講師側も最近の曲を聴き、研究し、今の子どもたちがどんな音楽に興味をもっているのかを知ることが必要なのではないかと思います。
今の子どもたちが興味をもつ曲は何なのか。
どんな曲なら、弾いてみたいと思えるのか。
そこに目を向けることが、これからのピアノ教室には必要になってきていると感じます。
♪2. ポップス導入の必要性
昔のピアノ教室では、クラシック中心のレッスンが当たり前でした。
もちろん、クラシックを学ぶことはとても大切です。
基礎力、読譜力、表現力、音楽の土台を作るうえで、クラシック教材には大きな意味があります。
ただ、今の時代はそれだけでは、子どもの興味を持続させることが難しくなってきているように思います。
子どもたちは、テレビだけでなく、YouTube、SNS、配信サービスなどを通して、日常的にたくさんの音楽に触れています。
アニメの曲、映画の曲、ゲーム音楽、流行りのポップス。
そういった音楽が、子どもたちにとってはとても身近な存在です。
だからこそ、ピアノ教室でもポップスを取り入れることは、単に流行を追うということではなく、今の子どもたちの音楽への入り口を広げる大切な工夫なのではないかと思います。
♪3. 発表会も昔とは変わってきた
発表会も、昔とはずいぶん変化してきました。
私が子どもの頃を振り返ってみると…
ピアノ教室に通っていれば、発表会に参加するのはほぼ強制で、断ることもできず、選曲に関しても先生が選んだ曲を弾くだけでした。
聞いたこともないクラシック曲ばかりでしたが、
「有無を言わせない」といった感じです。
今のように参考音源や参考演奏が簡単に聴ける時代でもありません。
先生がお手本にと弾いてくれることもほとんどなく、それでも一生懸命、ひたすら練習するしかありませんでした。
そして何より、暗譜のプレッシャーがとても苦痛でした。
昔は、発表会では暗譜で弾くことが当たり前で、それ以外の選択肢はありませんでした。
だから、子ども心に、発表会が楽しいとか、毎年出たいと思った記憶は、正直あまりありません。
発表会に参加するのが嫌で嫌で、それは「人前で弾く緊張」だけではなく、
「暗譜しなければいけない」という苦痛とプレッシャーも大きかったように思います。
もちろん、これは私自身の体験であり、すべての教室がそうだったわけではないとは思います。
ただ、少なくとも私にとって、幼少期の発表会は「楽しい思い出」というより、どこか我慢して乗り越えるものだったように感じています。
また、生徒さんの演奏も、次から次へと流れていくだけ。
聴いていても、心から楽しいとか弾いてみたい曲と感じることはあまりありませんでした。
講師演奏もなく、今思えば、私は自分の先生の演奏を一度も聴いたことがなかったのです。
♪4. 自分が嫌だったことを、生徒には体験させたくなかった
その過去の苦い経験が、今の私の教室づくりにつながっています。
私が独立して音楽教室を始めたとき、強く思ったことがあります。
自分が子どもの頃に嫌だったことを、生徒さんたちには体験させたくない。
発表会が、苦痛なものではなく、良い思い出になるようにしたい。
毎年楽しみにしてもらえるような場所にしたい。
そんな思いから、私は自分なりのオリジナルな手作り発表会を目指してきました。
ただ演奏するだけの発表会ではなく、
生徒さん一人ひとりが主役になれる発表会をモットーにしてきました。
たとえば、長くピアノやエレクトーンを続けてもらうための工夫として、継続5回出演ごとに表彰式を行っています。
子どもの生徒さんたちは5回目の表彰を目標に続けてくれる子がほとんどですし、大人の生徒さんの中には15回以上出演してくれている方もいます。
また、クラシックだけではなく、ポップス、アニメ曲、映画音楽、ゲーム音楽など、「弾きたい」と思える曲に挑戦できることを大切にしています。
演奏形態も、アンサンブルなどさまざまです。
何より、生徒さん自身が
「今年も出てよかった」
「また来年も出たい」
と思えるような発表会を心がけてきました。
今年の発表会の保護者様からのコメントに、こんな言葉がありました。
「先生方からの愛情が伝わって、とてもあたたかい発表会になっていると思います。
子ども達が自由に選曲しているところもとても良いと思います。」
まさしく私が理想としている発表会を開催できているのだと感じ、とても嬉しく思っています。
♪5. 発表会は“発表する場”から“成長を感じる場”へ
これからの発表会は、単に演奏を発表する場だけではなく、生徒さんの成長を感じられる場であることが大切だと思います。
完璧に弾けることだけを目標とするのではありません。
緊張しながらもステージに立てたこと
去年より少し難しい曲に挑戦できたこと
自分で選んだ曲を最後まで弾き切れたこと
家族や先生、仲間に演奏を聴いてもらえたこと
そのすべてが、生徒さんにとって大切な経験になります。
特に今の時代は、子どもたちの生活も忙しく、習い事を継続すること自体が簡単ではありません。
だからこそ、発表会は「評価される場所」ではなく、「ここまで続けてきてよかった」と感じられる場所にしたいと考えています。
♪6. 動画・SNS・YouTubeを活用した教室づくり
今の時代、動画の活用もとても大切になってきました。
昔は、先生の演奏をその場で聴くしかありませんでした。
でも今は、参考演奏を動画で見たり、自宅練習の参考にしたりすることができます。
生徒さんにとっても、保護者の方にとっても、動画はとても分かりやすい学習材料になります。
また、教室運営という面でも、SNSやYouTubeの活用は避けて通れない時代になってきました。
どんな教室なのか。
どんな先生なのか。
どんな発表会をしているのか。
どんな生徒さんが通っているのか。
そういった教室の雰囲気は、文章だけではなかなか伝わりません。
動画や写真、SNSでの発信を通じて、教室の空気感を伝えていくことも、これからの音楽教室には必要なことだと思います。
♪7. 講師自身が楽譜を作る、または良い楽譜を選ぶ時代へ
ポップスを導入するうえで、もう一つ大切なのが楽譜です。
子どもが弾きたい曲があっても、その子のレベルに合った楽譜がなければ、レッスンに取り入れることは難しくなります。
市販の楽譜では難しすぎることも大いにありますし、
反対に、簡単すぎて音楽的な魅力がなくなってしまうこともあります。
だからこそ、これからの講師には、良い楽譜を選ぶ力が必要だと思います。
さらに、可能であれば、生徒さんのレベルに合わせてアレンジする力や、必要に応じて楽譜を作る力も求められる時代になってきているのではないでしょうか。
その子が弾きたい曲を、その子が弾ける形にしてあげること―
これは、これからのピアノ教室にとって、とても大切なサポートだと思います。
♪8. 未来の教室は“続けさせる”場所ではなく“続けられる”場所へ
昔のピアノ教室は、どちらかというと
「頑張って続けなさい」
「練習しなさい」
「決められた教材を進みなさい」
という空気が強かったように思います。
もちろん、努力や練習は必要です。
音楽は、楽しいだけで上達するものではありません。
でも、今の時代に必要なのは、厳しく続けさせることではなく、
生徒さんが自分から続けたくなる工夫をすることだと思います。
好きな曲に出会えること。
発表会が楽しみになること。
動画で練習しやすくなること。
先生が自分の気持ちを聞いてくれること。
少しずつできることが増えていくこと。
そういった小さな積み重ねが、
「もう少し続けてみよう」
という気持ちにつながっていくのだと思います。
♪9. ピアノ教室の未来に必要なこと
オリジナルな、今の時代に合った音楽教室とは、特別に派手なことをする教室ではないと思います。
大切なのは、
時代に合わせて変化すること。
生徒さんの気持ちに耳を傾けること。
昔のやり方だけにこだわりすぎないこと。
そして、音楽を続けられる環境を作ること。
ピアノ教室の未来は、
「厳しく続けさせる教室」ではなく、
「楽しく続けられる仕組みを作れる教室」
にあるのではないかと思います。
これからのピアノ教室は、クラシックを大切にしながらも、ポップスの導入や動画・SNSの活用、楽譜制作など、今の時代に合った方法を柔軟に取り入れていく必要があります。
そして何より、
生徒さん一人ひとりが
「音楽を続けていてよかった」
と思える場所であること。
それが、私の考える未来のピアノ教室の形です。
それでは、この続きはまた次回に。
今日も読んでくださりありがとうございました♪

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