5. ピアノ教室でバンド演奏を取り入れるまで
前回の記事の続きです。
今回は、私の主宰する音楽教室の特徴の一つ、バンドアンサンブルについて書いてみたいと思います。
♪1. 「ピアノ教室の発表会で、バンド演奏をするのですか?」
この企画は、大人の生徒さんを対象にしています。
ピアノ教室の発表会といえば、一人でステージに立ち、中央に置かれたピアノを演奏するもの。
それが一般的な発表会の形です。
もちろん、ソロ演奏には大切な学びがあります。
一人で曲と向き合い、自分の力で最後まで演奏する。
その経験は、生徒を大きく成長させてくれます。
けれど私は、音楽教室として独立した当初から、「一人で弾くことだけが、音楽の楽しさではない」と考え、バンドアンサンブルを発表会に取り入れたいと思っていました。
現在の発表会は、これまで私が経験してきたさまざまなアンサンブルの、集大成に近い形になっています。
♪2. これまで経験してきた、さまざまなアンサンブル
私が大手音楽教室の発表会で経験してきたのは、次のような企画でした。
1. ドラムを演奏できる講師が、生徒の演奏に加わるアンサンブル
2. ドラムを演奏できる生徒を含め、複数台のエレクトーンとピアノで演奏するアンサンブル
3. 鍵盤以外の楽器を演奏できる仲間と一緒につくるアンサンブル
また、音楽専門学校時代には、他専攻の学生と組んだバンドアンサンブルも経験しました。
ギター、ベース、ドラムに、ピアノやエレクトーンが加わる編成です。
さらに、鍵盤を学生が担当し、バック演奏をプロのミュージシャンが務めるスタイルも経験しました。
さまざまな形を経験するなかで、最もクオリティーの高い演奏ができると感じたのが、プロのミュージシャンにバック演奏をお願いするスタイルでした。
やがて、それが私の実現したい発表会の形になりました。
♪3. 実現するために越えなければならなかったこと
とはいえ、通常の音楽教室の発表会にプロのミュージシャンを招くことは、簡単ではありません。
まず、謝礼(ギャラ)の問題があります。
そして、本番までのリハーサルをどのように行うのかなど、クリアしなければならない課題がいくつもありました。
それでも、趣味で鍵盤演奏を楽しんでくださっている大人の生徒さんに、心から満足してもらえる企画はこれだと思い、実現できるかどうか、まず一歩を踏み出してみることにしました。
幸い、協力してくださるミュージシャンとの出会いに恵まれ、教室として独立後、第1回目の発表会からバンド演奏を取り入れることができました。
その後も紆余曲折はありましたが、現在まで続けて開催できています。
♪4. ジュニアの生徒は、全員アンサンブルから
ジュニアの生徒たちには、全員で演奏するアンサンブルを取り入れました。
個人レッスンに通う生徒たちは、普段、ほかの生徒と一緒に演奏する機会がほとんどありません。
そこで、小学校の音楽会のように、みんなで一つの曲を演奏する時間を発表会に設けました。
ただし、全員が集まって練習する時間を確保することは難しく、発表会当日のリハーサルだけで演奏を完成させていました。
限られた時間のなかで、お互いの音を聴きながら自分の役割を果たす。ソロ演奏とは違う緊張感がありましたが、当日のリハーサルだけでも、何とか一つの演奏として形にすることができました。
演奏が一つにまとまったとき、生徒たちの表情には、一人で弾き終えたときとはまた違う喜びがありました。
♪5. 好きな曲を、もっと生き生きと演奏するために
発表会でポップスやアニメ、映画、ゲームなどの曲を取り入れるようになると、ピアノやエレクトーンのソロだけでは表現しきれない曲も増えてきました。
メロディーだけでなく、リズムや低音、ほかのパートが重なることで、初めてその魅力が伝わる曲もあります。
個人レッスンが中心の音楽教室で、プロのミュージシャンによるバック演奏を体験してもらうことは、とても貴重な機会です。
生徒同士でアンサンブルをする経験とはまた違い、望んでもなかなかできることではありません。
選べるジャンルも幅広く、大人の生徒さんには、J-POP、映画音楽、テレビ番組のテーマ曲、フュージョン、ジャズなど、それぞれが演奏したい曲を選んでもらっています。
曲本来の楽しさを、生徒たちにも味わってもらいたい。そんな思いから、発表会にバンド演奏を取り入れてきました。
生徒の年齢や演奏レベルを考えながら、それぞれが無理なく参加できる方法を探し、少しずつ形を整えてきました。
そこには、アンサンブル用のアレンジや楽譜制作など、講師側の負担もあります。
それでも、生徒さんに喜んでもらえるのであればと、一人ひとりのレベルに合わせたアレンジと楽譜制作を続けてきました。
♪6. 「自分のパート」だけでは演奏できない
バンド演奏では、自分のパートを弾けるだけでは十分ではありません。
ほかの人の音を聴くこと。
テンポを合わせること。
そして、自分の音が全体のなかでどのような役割を持っているのかを考えること。
これは、個人レッスンだけではなかなか経験できない学びです。
一人で練習していると、どうしても自分の音だけに意識が向きます。
けれど、誰かと一緒に演奏すると、初めて「音楽は会話なのだ」と気づく瞬間があります。
自分が前に出るところもあれば、誰かを支えるところもある。
その両方を経験することで、生徒たちは演奏だけでなく、周りを見る力も身につけていきます。
♪7. 完璧に弾くことだけが目的ではない
バンド演奏では、思いどおりにいかないこともあります。
一人では弾けていたのに、みんなと合わせるとうまくいかない。
緊張して、いつもとは違うところで間違えてしまう。
それでも、演奏は止まりません。
お互いの音を聴き、助け合いながら、最後まで曲をつないでいきます。
その経験のなかに、音楽を学ぶ大切な意味があると私は思っています。
発表会は、間違えずに演奏することだけを目指す場所ではありません。
誰かと音を合わせる楽しさや、一つの音楽を一緒につくる喜びを知る場所でもあります。
♪8. ピアノ教室だからこそできるバンド演奏
ピアノ教室でバンド演奏を取り入れることは、決して簡単なことばかりではありません。
選曲やアレンジ、生徒それぞれの演奏力に合ったパートづくりなど、準備には時間がかかります。
それでも、本番のステージで生徒たちが楽しそうに音を交わしている姿を見ると、取り入れてきてよかったと思います。
ピアノを一人で弾くこと。
誰かと一緒に音楽をつくること。
どちらにも、それぞれ違った学びと喜びがあります。
一人ひとりが自分にできる役割を持ち、仲間と一緒に一つの曲を完成させる。
それが、Dolce Of Musicの発表会で大切にしているバンド演奏です。
それではこの続きは次回に。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました♪

