見出し画像

音楽教育のリアルと理想 ― 第9話:発表会は、ピアノ教室の「答え合わせ」~「続けやすい教室」が育てるもの~

前回の記事の続きです。

これからのピアノ教室やレッスンのあるべき姿について、私の意見を綴ってきましたが、今日は発表会という視点から書いてみたいと思います。


♪1. 発表会を開催する意味ー私の経験から

音楽教室の発表会は、一年に一回開催される場合が多いと思います。

年に一度とはいえ、実際には、選曲、練習、伴奏・アンサンブルの準備、プログラム作成、会場との打ち合わせなどなど、かなり長い期間をかけて準備を進めていくものです。
あっという間に一年が過ぎていく中で、発表会を開催するということは、講師にとっても、生徒さんにとっても、なかなかハードなスケジュールです。

私自身、かつて某大手音楽教室に在籍していた頃のことを振り返ると、発表会とは一体何のためにあるのか、考えさせられることがあります。
私が独立するまで在籍していたその音楽教室では、年に2回、発表会が開催されていました。
今思えば、とにかく発表会の準備に追われ、通常のレッスンがほとんどできないような状況になることもありました。

もちろん、発表会そのものには意味があります。
人前で演奏する経験は、生徒さんにとって大きな成長につながります。
けれど、当時の発表会の在り方を振り返ると、本当に生徒さんのためだったのだろうか、という疑問も残ります。
生徒さん側の成長や楽しさというより、楽器店側のイベント運営や収益のために行われていた部分もあったのではないか。
そんなふうに感じることもありました。

昔の音楽教室の発表会は、ある程度、決まった形の中で行われることが多かったように思います。
生徒さん本人の希望やその子らしさ、
そして発表会で経験することの意味よりも、
講師側が発表会を無事にこなすことが優先されていた面もあったように思います。

でも、これからの発表会は、もっとそれぞれの音楽教室らしさが表れる催しになっていくべきではないでしょうか。

もちろん、これが正解だという答えはありませんが、私自身は、発表会を単なる年中行事としてではなく、教室の考え方や生徒さんとの向き合い方が表れる場所だと考えています。

♪2. 発表会は「上手に弾くための場」ではない

発表会というと、どうしても「上手に弾くこと」「間違えずに弾くこと」が大切だと思われがちです。
もちろん、演奏する以上、練習を重ねて本番に向かうことは大切です。

でも、発表会の意味はそれだけではありません。
本人がその曲を弾きたいと思っているか。
その子らしさが演奏に出ているか。
人前で音楽を表現する経験になっているか。
これからの発表会では、そういった部分がとても大切だと思います。

特に、子どもたちにとって、発表会は「評価される場」ではなく「自分の音楽を届ける場」であってほしいと思います。
ミスしないことだけが目標になると、どうしても演奏や練習が苦しくつらいものになります。
でも、自分が好きな曲や弾きたい曲に向き合って舞台に立つと、その子の中にある音楽への気持ちが自然と表れてきます。

♪3. 好きな曲を弾いているときの子どもたちは、目の輝きが違う

子どもの生徒さんを大勢見てきて思うことですが、自分で選んだ曲、好きな曲、憧れている曲を弾くと、練習への向き合い方が変わります。

もちろん、簡単なことばかりではありません。
子どもが弾きたい曲が、今のレベルに合っていないこともあります。
楽譜がそのまま使えないこともあります。
講師側がアレンジしたり、難易度を調整したり、曲を研究したりする必要もあります。
講師にとっては、手間も時間もかかります。
でも、その手間をかける価値は十分にあると思っています。
なぜなら、好きな曲に向かっているときの子どもたちは、目の輝きが違うからです。
「この曲を弾きたい」
「この部分がかっこいい」
「ここを上手に弾けるようになりたい」
そういう気持ちは、練習の原動力になります。
ピアノを続けるためには、努力だけではなく、心が動く瞬間が必要です。
その心が動く瞬間を、発表会の中で作ってあげることも、これからの音楽教室に求められていることではないでしょうか。

♪4. 発表会には「続けてきた意味」が見える

発表会では、1年では分からなかった成長が見えることがあります。
特に、数年続けて参加している生徒さんを見ると、その成長はとてもよく分かります。
最初は舞台に立つだけで精一杯だった子が、少しずつ堂々と演奏できるようになる。
緊張で固まっていた子が、自分の音を最後まで届けられるようになる。
小さかった子が、身体も成長しいつの間にか難しい曲に挑戦している。
その姿を見るたびに、継続することの大切さを感じます。

私の教室では、発表会に5回継続して参加してくれた生徒さんへの表彰式も企画しています。
これは、単に回数を重ねたことを表彰するだけではありません。
舞台に立つ度胸。
緊張を乗り越える力。
自分の音楽を人に届ける経験。
そして、習い事を継続してきた努力。
そういったものが積み重なっていることを、しっかり形にして伝えたいと思っているからです。

音楽を習うということは、すぐに結果が出るものではありません。
1回のレッスン、1曲の練習、1回の発表会
その積み重ねの中で、少しずつ生徒さんは成長していきます。
だからこそ、発表会には「続けてきた意味」が見えるのだと思います。

♪5. これからの発表会は、教室の個性が表れる時代へ

これからの音楽教室は、発表会の形も変わっていかなければならないと思います。
クラシックだけの発表会
決められた形をこなすだけの発表会
講師側の都合で進める発表会
そういった形だけでは、今の時代の子どもたちや保護者の方々の心には届きにくくなっているのではないでしょうか。

もちろん、クラシックを大切にすることは素晴らしいことです。
でも、それだけが音楽ではありません。
ポップス、アンサンブル、バンド演奏、エレクトーン、講師演奏など、教室のカラーを活かした発表会があってもいいと思います。
大切なのは、その教室が何を大切にしているのかが伝わることです。

私の教室では、こういうことを大切にしています。
生徒さんが楽しめること。
見に来てくださるご家族やお客様にも楽しんでいただけること。
そして、生徒さん一人ひとりが
「音楽を続けたい」
「来年も発表会に出たい」と思えること。
私は、発表会をそのような場にしていきたいと思っています。

少し裏話になりますが、音楽教室経営という視点で考えると、昔ながらの形式の発表会の方が、経費的には利益が出やすい場合もあります。
反対に、いろいろな企画を入れたり、演奏内容を工夫したり、サポートスタッフ体制を整えたりすると、経費はどんどん膨らんでいきます。
正直に言えば、赤字になることもあります。

でも、私は自分が儲けるために発表会を開催しているわけではありません。
教室に通ってくれている生徒さんたちが楽しんでくれること。
見に来てくださるお客様が「見に来てよかった」と思ってくださること。
保護者の方々が、お子さんの成長を感じてくださること。
そこを一番大切にしたいと思っています。

だからこそ、発表会はピアノ教室の「答え合わせ」ではないかと思います。
普段のレッスンで何を大切にしてきたのか。
生徒さんとどう向き合ってきたのか。
音楽を通して、どんな経験を届けてきたのか。
それが、発表会という舞台に表れます。

発表会は、ただ演奏を披露する場所ではありません。
生徒さんの成長が見える場所であり、
教室の方針が見える場所であり、
これからも音楽を続けていく力を育てる場所
です。
これからのピアノ教室にとって、発表会はますます大切な意味を持つものになっていくのではないでしょうか。

それでは、この続きはまた次回に。
今日も読んでくださりありがとうございました♪

⭐️オリジナルアレンジの楽譜を各サイトで販売しています♪
私が主宰するDolce Of Music音楽教室では、
「弾きたい曲に楽しく取り組める」「だから楽しく続けられる」
ことを大切にし、譜面が発売されていない曲も一人ひとりのレベルに合わせてアレンジしています。 
生徒さんの選曲や譜面作りに悩む講師の方に役立てていただきたくて、デジタル楽譜の販売を始めました。
クラシック曲からJ-POP、アニメ主題歌やゲーム音楽まで幅広いラインナップでお届けしています。
プロフィールからご覧いただけますのでぜひチェックしてみてくださいね☆
🔽譜面に対応するピアノロール動画もYouTubeからご覧いただけます

https://www.youtube.com/channel/UCZgJ04AsN5m_2az92mXfyVQ

いいなと思ったら応援しよう!