『冷ぞう庫の奥が別の世界とつながっていた話し』
きのうの夜、プリンがなくなっていた。
ぼくは、ちゃんとプリンを買ってもらって、
冷ぞう庫のいちばん下のだんにしまったはずだ。
ひとつだけの、とっておきだったのに。
ママもパパも「食べてないよ」って言うし、
おにいちゃんはそもそもプリンがきらいだ。
じゃあ、だれが食べたの?
ぼくは、冷ぞう庫の中をもう一回のぞきこんだ。
冷たい空気がもわっと顔にかかって、
ちょっとだけ、目がしょぼしょぼする。
手をぐいっと奥までのばしてみた。
すると、なにかにさわった。
かたくて、ひんやりしてて、ちょっとぬるっとしてる。
……ん? これ、なんだ?
出してみたら、それはふしぎなビンだった。
なんて書いてあるかは分からないけど、
ラベルには、カラフルな文字が書いてある。
ママが買ってくるジャムとにてるけど、色は黒くて、
においはちょっとだけ、海みたいなかおりがした。
ぼくは、思った。
──もしかして、冷ぞう庫のいちばん奥って、
べつの世界とつながってるんじゃない?
だって、おぼえてないヨーグルトがあることもあるし、
チーズがいつの間にか緑色に変わってたり、
冷とう室の氷が、いつの間にかちょっとだけ溶けて、
つるつるのカチカチになってたりする。
あれもこれも、むこうの世界のだれかが、
すこしだけこっちにさわってるから──とか?
そういえば前に、カレーののこりがちょっと減ってたことがあった。
パパは「食べてないよ」
ママは「そんなはずないけどねぇ?」って言ってたけど、
あれもきっと、むこうの人が「ちょっとだけ」ってもっていったんだ。
たぶん、今回のプリンも、そうやってなくなった。
じゃあ、むこうの人も、プリンがすきなんだな。
ぼくは、この大発見を
ママと一緒にノートに書くことにした。
*************
けんきゅう1:
れいぞうこのおくは、
ほかのせかいとつながってる。
けんきゅう2:
むこうのひとは、ぷりんがすき。
けんきゅう3:
ぼくも、むこうのぷりんをたべてみたい。
*************
ママは「すごいね!大発見だね!」ってほめてくれたけど、
パパはこのノートをみて、なんだか困ったみたいに笑ってた。
ぼくのひらがなが間違ってたのかな?
そしてきょう。
冷ぞう庫をあけたら、みたことのないプリンが、
ひとつだけならんでた。
いつもよりきらきらのカップに入ってて、
プリンの上に、白いクリームが乗ってて、
ちょっとだけ、ふしぎなにおいがした。
家族にきいたけど、だれも「知らない」って。
ぼくはそーっとふたをあけて、スプーンでひとくちたべた。
すっごくあまいのに、白いクリームはやさしくて、
いつもより特別な味がした。
やっぱり、あっちの世界にも、
ぼくとおなじくらいの子がいて──
「ちょっとだけ、あげるよ」って、
プレゼントしてくれたのかもしれない。
ママやパパにも分けてあげようとしたけど、
パパからは「気にせず、ぜんぶ食べたらいいんだよ」
って言われちゃった。
スプーンを口に入れるたび、
なんだかむこうの世界のことが、
少しだけわかる気がした。
もしかしたら、むこうの子も、
今ごろぼくと同じように、プリンを食べているかもしれない。
それなら、なんだかすてきだ。
ぼくはさいごのひとくちを、そっと口に入れて、にっこりした。
また、いつか──
冷ぞう庫のおくから、ひみつのプレゼントがくるといいな。
おしまい
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