【「子どもの熱も想定しておけ」と言う言葉より必要なもの】
母親を突き刺す言葉
ある日、薬剤師2人、事務スタッフ1人でシフトをくんでいた日があった。
その日に事務スタッフのお子さんが熱を出した。
スタッフに相談したら、シフトを代わってくれるスタッフがいた。雇用主に相談すると想像もしていなかった言葉が返ってきた。
「シフトに入ってるんだから、子どもの熱も想定しておきなさい」
この話を聞いた時衝撃を受けた。
この言葉を言える雇用主は、母親の気持ちを考えていない。
子どもの発熱は予測できない。
昨夜まで元気に笑っていたのに、朝には熱でぐったりしている。
その姿を見た瞬間、母親の胸は締めつけられる。
それでも職場に頭を下げて
「休ませてください」
と言わなければならない。
調剤薬局という現場は、ただでさえ「休みにくい空気」が漂っているのだから。
「調剤薬局あるある」休みにくさの実態
調剤薬局は少人数で回しているため、こんな特徴がある。
• 薬剤師や事務が一人欠けると負担が一気に増える
• シフトを変わってくれる人がいても、雇用主が拒否する場合がある(ほんとにある?)
• 結果として「急には休みにくい」という空気が根づく
この「あるある」の中で母親は、仕事と育児の間で引き裂かれる。
法律の観点から見ると
雇用主が言う「想定しておけ」という言葉。
これは法律的にも正しくない。
有給休暇は労働者の権利であり、理由を制限されるものではない
「労働基準法39条では、会社は従業員が有給休暇を申請した場合、原則として拒否できません。ただし、その人が休むことで、会社の業務がストップしてしまうような特別な場合に限り、休暇の時期を変更することができます。」
今回のケースでは薬剤師が2人揃っていた。
休まなくてはならない事務スタッフの代わりもいた。
つまり「事業の正常な運営を妨げる」とは言えない状況だった。
法律的にも「休めない」とする根拠は薄いのだ。
雇用主側にも人員不足や経営上の苦労があるかもしれない。子供のいる人いない人、平等に扱わなければならないという思いがあったのかもしれない。にしても、この状況でこの言い方は、傷つける以上の何物も生まない。
母親の心情
母親は、決して「仕事より子ども」と軽んじているわけではない。
仕事も責任も大事にしたい。
たしかに不測の事態を想定しておくことは合理的には正しいかもしれない。しかし、気持ちの上で、具合の悪い子供を置いて仕事に行くと言うことは、想像以上に苦しいことだ。自分は何のために仕事をしているのだろうか。
• 子どもの側にいてあげたい罪悪感
• 職場で「迷惑をかける人」と思われる不安
• 代わりがいるのに拒否された虚しさ
冷たい一言で、母親の心は深く傷つく。
逆に「気にせず看病してあげてね」のひとことは、涙が出るほどの救いになる。
本当に必要なのは「お互い様」の職場
調剤薬局という現場、それ以外の職場でも必要なのは、母親の我慢ではなく「お互い様」の文化だと思う。
• 「今日は私がフォローするよ」
• 「次は自分が休むかもしれないし」
• 「子どもを大事にしてあげて」
そんな小さな思いやりが、母親を支える大きな力になる。子供のいない人ばかりに負担が行くことは避けねばならないが、それ以外でも皆が休みやすい空気を作るべきだ。
そしてその空気が、患者にとっても安心できる薬局につながっていく。
私も、「助けてもらうことがあるんだから、困った時はお互い様だよ」と同僚に言われてどれだけ救われたことか。わたしはこの同僚に心から感謝しているし、困った時は助けたいと思う。
母親を救うひとこと
雇用主の「想定しておけ」という言葉は、母親の気持ちを踏みにじる。
法律的にも間違っているし、人としても冷たすぎる。
でも、ほんのひとこと――
「こちらは気にせず、看病してあげてね」
この言葉さえあれば、母親は安心して子どもに寄り添える。
制度も法律も大事。
けれど、母親を本当に救うのは、人の温かさと「お互い様」の心なのだと思う。
子供がいる人もいない人も休むことはある。
そんな事態は突然だ。
あなたが雇用主だったら、あなたが同僚だったら、このような場面でどのような言葉をかけますか?
