現場から見えた成長の瞬間 #06|生成AI担当になった。でも、AIの知識がなかった。学んだことが現場の「判断材料」に変わるまで
2年前、ある社員が、生成AIの業務利用を進めるチームへ配属されました。
仕事ではAIが直接関係するようになりましたが、その時点で、業務を考えるためのAI知識が十分にあったわけではありません。
そこで、基礎から学ぶために利用したのが、MicrosoftのAI-900でした。AIの基礎や機械学習、AzureのAIサービスと一緒に学んだのが、Responsible AIという考え方です。
そして、その知識が試験の中だけで終わらなかったんです。
その後、現場で「生成AIをどのような基準で利用可能にしていくか」を検討する場面があり、資格勉強で知ったResponsible AIの考え方が参考になりました。
資格に合格したこと自体ではなく、勉強した内容が、目の前の仕事を考える材料になった。
今回の「成長の瞬間」は、そこにあります。
仕事を任されてから、「知らない」が見えた
新しい仕事を担当するとき、必要なことを最初からすべて知っているとは限りませんよね。今回の社員もそうでした。
生成AIの業務利用を進めるチームへ配属されたことで、AIが仕事の中で直接扱う対象になりました。そこで初めて、AIとは何か、機械学習とはどういうものなのか、AzureにはどのようなAIサービスがあるのか、AIを業務で扱うときには何を考える必要があるのか、といった自分に足りていない知識が具体的に見えてきました。
仕事に入る前なら、「AIについて勉強した方がよさそう」という大きな話で終わっていたかもしれません。でも、実際に担当することになったことで、何を学ぶ必要があるのかが少しずつ分かってきたんです。
これは、「知らなくても問題ない」という話ではありません。分からないものが見えたら、そのままにせず、必要な知識を取りにいく。この社員の場合、そのための手段の一つとして選んだのが、当時のMicrosoft認定試験AI-900でした。
資格を取るためではなく、仕事を理解するために学んだ
AI-900は、Microsoft Azure AI Fundamentalsの認定試験として提供されていた基礎資格です。
この社員の場合、最初から「資格を取りたい」という目的があったわけではありません。仕事でAIを扱うことになったものの、その仕事を考えるための基礎知識が十分ではなかったため、必要な内容を一度体系的に学ぶ手段として資格を使いました。
学習時間は約25時間です。Microsoftの公式資料に約15時間、Udemyの模擬試験に約10時間を使い、模擬試験にも複数回取り組んでいます。
ただ、問題を繰り返して正解だけを覚えていたわけではありません。模擬試験の解説を読んでも十分に理解できないところがあれば自分で調べ、他の合格体験記や無料問題にも触れながら、分からないところを補っていきました。
正解を知ることと、なぜそれが正解なのかを理解することって、やっぱり少し違いますよね。
とはいえ、今回お伝えしたいのは勉強法そのものではありません。このとき学んだことの一つが、その後、実際の仕事の中でもう一度出てきたことです。
AIの基礎と一緒に、「Responsible AI」を知った
AI-900の学習では、AIの基礎や機械学習、AzureのAIサービスなどとともに、Responsible AIについても学びました。
Microsoftが示すResponsible AIには、公平性、信頼性と安全性、プライバシーとセキュリティ、包括性、透明性、説明責任といった観点があります。AIを単に「何ができるか」だけで見るのではなく、どのように設計し、利用するのかまで考えるための視点です。
ここは少し注意しておきたいところがあります。
MicrosoftのResponsible AIが、そのまま企業のAI利用可否を決める正式なルールになるわけではありません。組織にはそれぞれの業務があり、扱う情報も違います。リスク、セキュリティ、契約、法令、社内ルールなど、確認しなければならない条件も異なります。
それでも、AIについて考えるときに、精度や便利さだけではなく、プライバシー、安全性、透明性、説明責任といった観点もある。そのことを知っているだけで、仕事を見るときの材料は増えます。
この社員にとってResponsible AIは、まずそんな知識の一つでした。
学んだことが、現場の問いとつながった
AI-900に合格したところで記事を終えれば、よくある資格取得の記事になるかもしれません。約25時間勉強して、試験に合格し、AIの基礎知識が増えた。もちろん、それも一つの結果です。
でも、今回の出来事で見ておきたいのは、そのあとなんです。
現場で、生成AIをどのような基準で利用可能にしていくかを検討する場面がありました。生成AIは使えるとしても、どこまで使うのか、何を確認する必要があるのか、どのような点を考慮しておくべきなのか。そうした検討を進める中で、AI-900で学んだResponsible AIの考え方が参考になりました。
ここも、話を大きくしすぎないようにしたいところです。
Responsible AIをそのまま社内ルールにしたわけではありませんし、本人がAIの利用可否を一人で決めたわけでもありません。資格を持っていたから正しい答えが分かった、という話でもないんです。
ただ、AIについて考えるときに見るべき観点を、一つも知らない状態ではなくなっていました。プライバシーはどう考えるのか、安全性はどう見るのか、透明性や説明責任はどう関係するのか。資格勉強のときには「覚える対象」だった考え方が、仕事では「考えるための材料」になりました。
ここで、勉強していたことと目の前の仕事がつながったんです。
資格に受かった日より、その後に変化が見えた
資格試験には、合格か不合格かという分かりやすい結果があります。今回の社員も、2024年にAI-900へ合格しています。
ただ、合格した瞬間に、AIに関する仕事がすべてできるようになったわけではありません。AI-900は基礎資格ですし、資格を取ったことと、実務で必要な能力を身につけたことを、そのまま同じものとして扱うことはできません。
一方で、基礎として学んだことが、あとから仕事の中で使われることはあります。
今回の場合は、Responsible AIでした。
資格勉強のときには「AIを考えるときには、こういう観点がある」と知った。その後の仕事では、「今検討していることは、あの考え方とも関係する」とつながった。
知らなかったものを知っただけではなく、必要な場面でその知識を思い出せるようになったんです。
資格に受かった日よりも、学んだ知識が目の前の仕事とつながった日の方が、変化は見えやすかったのかもしれません。
「正解を知る」から、「考える材料を持つ」へ
仕事では、資格試験のように必ず選択肢が用意されているわけではありません。A、B、C、Dの中から正解を一つ選べば終わるとは限らないですよね。
生成AIを業務でどこまで使うのかという問いも、技術だけで決まるものではありません。
対象となる業務や扱う情報、利用者、セキュリティ、品質、法令や契約、運用方法、組織としての責任など、いくつもの条件を見ながら考える必要があります。
そのとき、資格勉強で得た知識がそのまま「正解」になるわけではありません。むしろ、「何を見ながら考えればよいのか」を整理するための材料になります。
今回の社員にとって、Responsible AIはその一つでした。
配属された時点では、AIについて十分な知識がある状態ではなかった。それが、学習によってAIの基礎やResponsible AIを知り、実際の業務でAI利用について考える場面に出会ったとき、その知識を思い出せるようになった。
こうして見ると、変化は「知らない」から「知っている」だけではありません。
仕事について考えるための材料を持っている状態へ変わった。
そこまで進んだことで、勉強と仕事がつながりました。
現場が変われば、次に必要な学びも変わる
この社員の学習は、AI-900で終わっていません。
その後、現場でAWSの生成AI基盤を扱うようになると、AWS Certified AI Practitionerへ学習範囲を広げました。さらに仕事を続ける中で、AWSの基盤そのものを理解する必要も出てきたため、AWS Solutions Architect Associateにも進んでいます。
結果だけを並べると、資格を順番に取っているように見えます。
でも、最初から「AI-900を取って、その次はAWSのAI資格、その次はインフラ資格へ進もう」という資格ロードマップがあったわけではないんです。
実際には、仕事が変わるたびに必要な知識が見え、その領域を学ぶと、また次に足りないものが見えてきました。
資格を先に並べて、それに沿って仕事を考えたのではありません。仕事を起点にして、必要な学習範囲が少しずつ広がっていったんです。
分からないものが見えたら、取りにいく
新しい仕事を任されたとき、必要な知識をすべて持っているとは限りません。
今回の社員も、生成AIに関わる仕事を始めた時点では、AIについて十分な知識がある状態ではありませんでした。
でも、仕事に入ったことで、自分に何が足りないのかが見えました。そこで基礎から学び、分からないところは調べ、その中でResponsible AIという考え方を知った。そして、現場でAI利用について考える場面に出会ったとき、その知識が参考になりました。
資格に合格したことも、一つの結果です。
ただ、今回の「成長の瞬間」を探すなら、合格通知を受け取ったときだけではありません。
勉強していたときには試験範囲の一つだった言葉が、仕事の中で「これは、今考えていることに関係する」とつながった。そのとき、知識の役割が少し変わっています。
資格のために覚えた知識が、仕事の中で考えるための材料になる。そこからまた次に必要なことが見えて、学ぶ範囲が広がっていく。
今回見えたのは、そんな変化でした。
学んだことが仕事の中の問いとつながったとき、知識は初めて「判断材料」になりました。
参考情報
本記事は、2024年当時の社員のAI-900学習経験をもとにしています。
AI-900は2026年6月に終了しています。資格試験の名称、試験範囲、認定制度などは変更されることがあるため、現在の試験情報についてはMicrosoft公式情報をご確認ください。
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