【長編小説】『また500年後に、白いヒガンバナ咲く丘で』2/30話
⇒【第1話:時を超えるヒガンバナ】からの続き


【第1章:過去 -500年前の邂逅編-】
【第2話:未来から来た少女】
<?年、フーヴル村>
リディアナ
(まさか私…本当に過去へ来たの?!しかもここはリバス…旧フーヴル村…?)
彼女はボーっとしていた頭が一気に醒め、血の気が引いていくのを感じました。
リディアナ
「(歴史の授業で習った通りなら、フーヴル村は1度…)…あの…!今は何年ですか?」
ヴィンラック
『1640年だよ。』
リディアナ
(ウソ…魔法革命が起きる100年も前…?)
リディアナは母親・エレのタイムスリップ魔法で、本当に500年前に来てしまったのです。
リディアナ
「そうだ…お母さんは?倒れていたのは私だけ?」
ヴィンラック
『きみ1人だったよ。』
リディアナ
「そう…ですか…。」
ヴィンラック
『お母さんと一緒にいたのかい?』
リディアナ
「………。」
ヴィンラック
『落ち着いてからで構わない。よかったら事情を聞かせてほしい。』
リディアナは迷いました。
助けられたとはいえ、彼女はヴィンラックにとって得体の知れないよそ者でした。
その上、1640年は魔法革命より以前の時代。
魔法はまだ普及しておらず、使えるのは社会の上層部の知識人や、上位の軍人に限られていました。
一般市民に馴染みがない魔法を彼女が使えると知られたら、危険人物とみなされるかもしれません。

リディアナ
「…信じてもらえないかもしれませんが…。」
リディアナはためらいながらも、ヴィンラックに事情を説明しました。
リバス市…未来のフーヴル村が帝国から侵略を受けたこと。
母がタイムスリップ魔法を使い、自分を過去の時代へ逃がしてくれたこと。
ヴィンラック
『そうか…辛かったね…。』
リディアナ
「信じてくれるんですか?」
ヴィンラック
『もちろん。』
リディアナ
「私が未来から来たなんて”おとぎ話”でしょう?!」
ヴィンラック
『かもしれない。』
リディアナ
「だったら、なぜ…?」
ヴィンラック
『経緯はどうであれ、今きみは傷ついてる。その涙はウソをついてるようには見えない。』
リディアナ
「涙…?」
ポロ、ポロ、
いつの間にか、リディアナの瞳から大粒の涙があふれていました。
リディアナ
「うぅ…お母さん…みんな…!うわああああああああん!!」
リディアナはヴィンラックにしがみつき、ひとしきり泣きました。
ヴィンラックは何も言わず、リディアナに寄り添いました。
◇◇
<数日後、フーヴル村>
村長
『おーいヴィンラック、あの子は無事か?』
ヴィンラック
『村長、この通り無事ですよ。』
村長
『きみか、助かってよかったな。』
リディアナ
「助けてくれて本当にありがとうございます。あの…失礼かもしれませんが…。」
村長
『何だい?』
リディアナ
「村の皆さんはどうして私を疑わないんですか?私はよそ者ですから…。」
リディアナの事情は、ヴィンラックから村人たちへ伝えられていました。
村長
『きみは魔法が使えるんだってね。少し見せてもらってもいいかな?』
リディアナ
「…?わ、わかりました。」
リディアナは村長に基礎的な魔法をいくつか披露しました。
村長
『すごいね!これだけの使い手は、この村じゃヴィンラックだけだよ。』
リディアナ
「(そっか…魔法が一般化する前の時代だから…)…ヴィンラックも魔法を?」
ヴィンラック
『村を守る立場だから、戦闘技術と魔法は一通り習得してるよ。』
村長
『それにしてもタイムスリップとはおもしろい。きみの時代ではみんな過去や未来を行き来してるのかい?』
リディアナ
「い、いえ…タイムスリップは高度すぎて…未来でも幻の魔法です。」
村長
『そうか、お母さんとの別れは辛いだろうが…命が無事でよかった。』

リディアナ
「信じてくれるんですか…?」
村長
『確かに突飛な話だが、きみの眼を見ればわかる。』
リディアナ
「眼…?」
村長
『ウソをついていない眼だ。少なくとも誰も騙そうとしていない。』
リディアナ
「あ…(涙)」
村長
『しばらくは気持ちの整理が必要だろう。この村でよければゆっくりしていきなさい。』
リディアナは村長の厚意もあり、村人たちと打ち解けましたが、こんなにあっさり受け入れられた理由がわかりませんでした。
もしかして、村人たちが彼女のような未来人に逢ったのは初めてではなかったから?
リディアナ
「なんてね…そんなわけないよね…。」
歴史上でも数回しか使われた記録のない『タイムスリップ魔法』
その当事者同士が時代を超えてめぐり逢うなんて、そんな奇跡が起きるはずがありませんよね。
⇒【第3話:白い丘の展望台】に続く
【本作のオープニングアニメ】
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