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【長編小説】『また500年後に、白いヒガンバナ咲く丘で』3/30話

⇒【第2話:未来から来た少女】からの続き

【第1章:過去 -500年前の邂逅編-】

【第3話:白い丘の展望台】


<1640年の初夏、フーヴル村>

リディアナ
「私も村の守り人になります!魔法も使えるし、戦闘経験もあるから適任だと思います!」

フーヴル村で拾われたリディアナは、ヴィンラックと同じ守り人の一員になりました。

当初は母と離別した悲しみで気持ちがぐちゃぐちゃでしたが、最近ようやく前を向けるようになりました。

この時代で生きる覚悟が決まってくると、彼女の心の中でヴィンラックの存在がどんどん大きくなっていきました。

リディアナ
(彼がいなければ、きっと私は助からなかった…だとしても、この気持ちは何?恩人への感謝?それとも恋心…?どうして?助けてもらったから?私って惚れっぽいのかな…?)

いつしかヴィンラックを”ただの恩人”とは見られなくなっていました。

リディアナ
(待って私!暴走はダメ!彼は20も年上よ?落ち着いてるし…奥さまとお子さまがいてもおかしくないよ。家族と離れて暮らしてるかもしれないでしょ?私が変にアプローチして彼の家庭にヒビが入ったら…。)

彼女の頭の中は騒がしくなるばかり…。

リディアナ
(私がお弁当を作ってるのは同僚だから。これ以上、距離を詰めたらダメ。一緒に村の見回りや訓練ができるだけで幸せ。いつか深い話をする機会があるはず。そのときに備えて、フラれる覚悟を決めておくの…。)


リディアナの覚悟など知らないヴィンラックが、彼女の心を無自覚に揺らす出来事が待っていました。

ある日のお昼頃、ヴィンラックが日課の見回りをしていると、

リディアナ
「ヴィンラック、お疲れさま!お弁当作ったよ!」

ヴィンラック
『いつもありがとう、お昼休憩にしようか。今日は僕のとっておきの絶景スポットで。』

リディアナ
「絶景?」

ヴィンラック
『案内するよ。』

2人が林を抜けて草原に出ると、少し先に小高い丘が見えました。

リディアナ
「あの丘?」

ヴィンラック
『うん、少し登るよ。』

丘の頂上から遠くの森や空を一望できました。

2人は展望席のような形の岩に腰掛けました。

リディアナ
「きれい…緑、緑、空色、雲の白…。」

ヴィンラック
『気に入ってもらえた?』

リディアナ
「もちろん!」

ヴィンラック
『よかった。ここ、見回りする時の楽しみなんだ。夏の景色もいいけど、秋は格別だよ。』

リディアナ
「紅葉?」

ヴィンラック
『紅葉と、この丘いっぱいに咲くヒガンバナ。』

リディアナ
「ヒガンバナ…?!」

ヴィンラック
『ヒガンバナ、好きじゃなかった?』

リディアナ
「ううん、好きだよ!秋が楽しみだね!」

(いけない…私…勘違いしちゃうよ…?とっておきの場所で2人きりだなんて…。)


◇◇

夏が過ぎ、だんだん涼しくなってきました。

丘の頂上から秋空と森の紅葉が一望できました。

展望席には、リディアナが想像していた赤ではなく、白いヒガンバナが一面に咲き誇っていました。

リディアナ
「あれ?花の形はヒガンバナだけど、白?」

ヴィンラック
『うん、珍しいでしょ?この辺には白いヒガンバナが咲くんだよ。』

リディアナ
「きれい…まるで白いカーペット。私、白いヒガンバナは初めて見た。」

ヴィンラック
『気に入ってもらえて嬉しいよ。僕も好きなんだ、ヒガンバナ。』

リディアナ
「どうしてヒガンバナが好きなの?」

ヴィンラック
『娘を…思い出すから。』

リディアナ
「む、娘さん?!」

(あぁ…やっぱりお子さんいたんだ…。)

いつでもフラれる覚悟ができていたとはいえ、ショックを隠し切れませんでした。

ヴィンラックは、身につけていたロケットペンダントを外し、中の写真を見せてくれました。

リディアナ
「奥さまと、お子さま?」

ヴィンラック
『うん…妻のヘデラと、娘のリコリス。』

リディアナ
「リコリスちゃん、かわいい名前ね。」

ヴィンラック
『ありがとう。ヒガンバナ=”リコリス・ラディアータ”から取ったんだ。』

リディアナ
「それでヒガンバナが好きなの?」

ヴィンラック
『花も素敵だけど、花言葉はもっと好き。白いヒガンバナの花言葉は”また逢う日を楽しみに”。』

リディアナ
「それは現世と冥界っていう意味?」

ヴィンラック
『かもしれないけど、だから好きなんだ。たとえ僕らが先立っても、幸せに生きてほしくて。”心配しないで、また逢えるから、その日を楽しみに”ってね。』

リディアナ
「素敵な願いね…。」

リディアナは失恋のショックと同時に、リコリスへの親近感を覚えました。

自分と同じくヒガンバナが名前の由来のリコリスに、不思議な運命を感じたからです。


⇒【第4話:娘に贈るペンダント】に続く
※執筆中


【本作のオープニングアニメ】



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