中高一貫校で毎年少しずつ生徒がいなくなる ~元都立教員が見てきた「6年間の静かな現実~
はじめに
中高一貫校というと、多くの人はこんなイメージを持っているのではないでしょうか。
同じ仲間が6年間一緒に学び、そのまま同じメンバーで卒業していく。
しかし、実際の学校現場は少しだけ違います。
私が勤務していた都立の中高一貫校では、入学時の定員は160人でした。
けれども6年後の卒業式で並ぶ人数は、だいたい152〜155人ほどです。
つまり6年間のあいだに、毎年少しずつ生徒がいなくなっていきます。
合計すると、およそ10人程度。
退学や転学など理由はさまざまですが、これは決して珍しい数字ではありません。
なぜ中高一貫校を離れるのか
理由は一つではありません。
成績の問題。
人間関係。
体調やメンタルの問題。
学校の雰囲気が合わない。
外から見ると順調に見える学校でも、実際にはさまざまな事情を抱えた生徒がいます。
そしてその中には、途中で別の道を選ぶ生徒も一定数いるのです。
中高一貫校の6年間は、すべての生徒が同じように進んでいくわけではありません。
では、6年間の中で、生徒たちの進路が分かれていくのは、いったいどの時期なのでしょうか?
「肩たたき」という言葉
学校現場では、ときどきこんな言葉を耳にすることがあります。
「肩たたき」。
これは正式な制度ではなく、あくまで現場で使われる隠語のようなものです。
ある国立大学の附属校では、成績が大きく振るわない場合に転学を勧められるケースがあると聞いたことがあります。
もちろん、すべての学校でそうしたことが行われているわけではありません。ただ、学校という組織の中でそうした話題が出ることがあるのも事実です。
別の場所でやり直すという選択
私はかつてチャレンジスクールにも勤務していました。
そこでは、さまざまな背景を持つ生徒と出会いました。
中には、私立の中高一貫校に入学したものの途中で退学し、あらためて高校からやり直そうとしている生徒もいました。
最初に選んだ学校が合わなかった。
それだけのことです。
しかしその経験を経て、別の場所で自分の力を発揮する生徒も少なくありませんでした。
学校を変えるという選択は、必ずしも後ろ向きなものではないのです。
通信制高校というもう一つの道
最近は、転学先として通信制高校を選ぶ生徒も増えています。
以前は「やむを得ず行く学校」というイメージを持たれることもありました。
しかし現在は、オンライン授業や柔軟なカリキュラムなど多様な学び方を選べる学校が増えています。
スポーツや芸術など、自分の活動と両立するために通信制高校を選ぶ生徒もいます。
たとえば、ミラノ・コルティナ冬季オリンピックの女子フィギュアスケートで銅メダルを獲得した中井亜美選手は、広域通信制の勇志国際高等学校に在籍しています。
競技と学業を両立するためにこうした学び方を選ぶ生徒もいるのです。
通信制高校という選択肢は、以前よりもずっと身近なものになってきています。
一方、子どもが学校生活に苦しんでいる場合には、そもそも「なぜ学校へ行けなくなったのか」を考えることも必要です。
夏休みまでは元気だった子が、2学期に入ると突然学校へ行けなくなることもあります。
おわりに
学校という場所にいると、つい「この学校で6年間過ごすこと」
が当たり前のように感じられることがあります。
しかし実際には途中で進路を変える生徒もいます。
むしろ、自分に合った場所を探す過程なのかもしれません。
中高一貫校でも毎年少しずつ生徒がいなくなる。
これはあまり語られることのない学校の現実ですが、教育の現場に長くいるとごく自然な出来事にも見えてきます。
進路は一本のレールではありません。
回り道をしながら、自分に合った道を見つけていく。
そんな生徒たちを、私はこれまで何人も見てきました。
そしてその姿は、
決して後ろ向きなものではありませんでした。
