#19【離婚争議編】“どっちもどっち”にされる瞬間と、その崩し方
◼️とりあえず反論してみたかった
後日、代理人同士の電話協議の中で
元夫の反論が伝えられた。
あの事情説明書は修正箇所なしで
そのまま採用をお願いした。
メールには「素晴らしいです」
と書いておいた。
感情を盛らず、事実だけを並べ
最後に法的な評価を置く。
元夫側の退路を断つ書面。
なのに、反論してきた。
言われっぱなしでは気が済まなかったらしい。
◼️「お互い様」
元夫側がやろうとしていたことは
ざっくり言えばこうだった。
・相手方(元夫)だけが悪いわけではない
・申立人(私)にも問題があった
・婚姻関係の破綻は一方的なものではなく
「お互い様」である
・慰謝料や条件は重すぎる
離婚事件の反論としては
ごくごく一般的な、普通の方向性である。
まず、責任を薄める。
相手にも非があったことにする。
そして、協議時より高くなった
慰謝料を値切りにくる。
そこまでは、分からなくもない。
でも、話の内容を聞いて私は唖然とした。
⸻
出てきたのは、
「アズさんは家事をしなかった」
「浪費家だった」
そして
「マンションの荷物を動かしてください」
――またそれかい。
「家事は私が全部やってました。
浪費なんてしていません!」
私は思わず叫んだ。
叫ばずにいられようか。
浪費?
どの口が言う?
シラカワ先生は、まあまあと私を宥めた。
「他に言うことがないんですよ。
反応しちゃだめです。
相手のリングに上がりにいかないように。
でないと、話が逸れてしまいます」
いやいや。
分かってる。
分かってるけど。
あまりに変なことを言われたら
ムカつくし、言い返したくもなる。
先生はさらに、
「妻が家事をするという法律はないので
気にしなくていいです」
と言った。
そうなん?
◼️朝のバナナは贅沢品?
私はロミオレターの中に
「支えてくれてありがとう」
と書かれていたことを覚えている。
家事をしていなかった妻に対して
わざわざそんな礼を書く人がいるだろうか。
しかも「浪費」の根拠として挙げられたのは、
📌ブランド物のバッグや時計を持っていた
📌国産の食材を買いたがる
📌食洗機を使っていた
📌フルーツを買っていた
だった。
バッグも時計も独身時代に買った物。
一つは元夫が
「ボーナスが出たから買ってあげる」
と言って買ってくれた物だった。
食洗機はマンションのシステムキッチンに
標準装備されていた物だし、
肉、魚、野菜は、できるだけ
国産の物を買っていただけだ。
フルーツは、朝のバナナ一択。
スーパーの普通のバナナ🍌である。
それが「浪費」扱い。
食洗機の何が悪い。
バナナが浪費?
バナナも食べたらあかんのか?
いや、何も食べるなってこと?
初めて聞いたわ。
どんな生活レベル想定してんねん。
◼️モラの呼吸 壱ノ型 論点ずらし
この時、私は思った。
これって、論点をずらして
有責度をボカシにきたのでは…。
本筋で勝てないから
私の落ち度を探し始めた。
・家事がどうだった
・バッグを持っていた
・時計を持っていた
・歩み寄りが足りなかった
そういうネタを持ち出して
「どっちもどっち」に寄せていく。
でも、この手の反論には無理がある。
スケール感、違いすぎるやろ。
仮に、千歩譲って。
家事をしなかったとして。
ブランド物を買っていたとして。
それで、風俗店通いが正当化されるのか。
借金が消えるのか。
モラハラが帳消しになるのか。
ならんやろ。
⸻
シラカワ先生はバッサリ斬った。
「仮にそうだったとして
国内外の風俗店に通い詰め
妻の就労を妨げて自立を邪魔し
生活費を抑圧し、
実家や友人などの人間関係を制限し
サンドバッグのように扱って
好き勝手に遊興に明け暮れ
借金まで作っていい理由にはなりません!」
国内外の風俗店に通い詰め。
国内外の。
国内外の。
そこ、サラッと言うたな。
完璧な論破だった。
もし、反論が全部事実だったとしても
元夫の有責事項は消えない。
ここを斬れない以上、弱い。
◼️反論の余地はなかった
後から思う。
この反論は、内容そのものよりも、
「何も主戦場にできなかったこと」
をよく表していた。
正面から争えない。
「風俗店通いなどしていない」
「借金などない」
とは、嘘すぎて言えない。
だから周辺を攻撃する。
家事。
浪費。
態度。
印象。
落ちている関係ない小枝を拾ってくる。
「ほら、アズだって!」
まるで子供みたいに。
それが答えだった。
⸻
さらに象徴的だったのは、
こちらが
「では、その主張を書面で出してください」
と求めると、元夫側は黙ったことだ。
口ではいくらでも言う。
でも、書面にはしない。
書面にしたら、説明責任が生じる。
後で矛盾も突かれる。
ロミオレターとの整合性も問われる。
アオキ弁護士は分かっていたはずだ。
余計に不利になると。
そしてまた
「マンションの荷物を」
と言い始める。
話を逸らすしかないのだ。
⸻
確かに形式としては反論だった。
でも実際には、
事情説明書の本筋を崩せていなかった。
だから残ったのは、
「有責性を必死に薄めようとしてみたけど
何も動かせていない」
という事実だった。
⸻
あれは本気の反論ではなく
本筋から目を逸らすための反論だった。
けれど、反論したところで、
調停申立書も事情説明書も
既に家庭裁判所に提出されている。
順番待ちの列に並んでいる状態だった。
そして。
「直接の連絡禁止」を破って
元夫からLINEが届き始めるのは
GWに入ってからになる。
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