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#38 辞めたのは会社。でも、私を壊したのは元夫だった——

結婚3年目の終わり。
13年勤務した会社を辞めた。

原因は、自律神経の不調。
仕事を休むことが増えた。
有給休暇を使い切った結果、傷病休暇に入らざるを得なくなった。

会社は異動を提案した。
——ただし、異動先は「処分場」だった。

パワハラ所長にセクハラ男、不倫など素行の悪い社員が跋扈する、いわくつきの営業所。
歓迎会の2次会はパチンコと決まっている。

「ここに送られたら最後」
社内でも有名な修羅の国。


そこに新たに異動した社員は、だいたい3ヶ月もてばいい方で、ほぼ全員が辞めていった。

——辞めようと思った。

元夫に相談した。
退職し、少し休んで転職したいと。

元夫は露骨に難色を示した。

「えええ…?辞めたら世帯収入が減るやん。
僕がずっと高収入なわけちゃうで?
これやから、専業主婦の娘は…」

え?今、なんて?
母のこと、馬鹿にした?


結婚前、あなたが言ってたよね?
「アズちゃんには苦労させへんから」
「何があっても守る」

——あれは、なんだったのか。

「……辞めなくても異動になると思う。
帰り遅くなるし、その時は家事は半分やって欲しいんやけど」
と伝えた。

元はしばらく黙ってから、こう言った。
「僕の収入があるから
このマンション買えたんやで」

その瞬間、目が泳いだ。
——しまった、って顔。
「ごめん」と言い直したけど、もう遅かった。


私は冷静に返した。
「あなたの方が帰り早いし、無駄に体力もあるやん。私、家事と仕事と、あなたの世話でクタクタなんだけど。ていうか、“あなたの世話”は家事じゃないからね?」

私は「管理人」でも「メイド」でもない。

元夫は、私が寝込んでも家事を代わってくれることはない。

「大丈夫?」と声をかけたと思ったら
そのまま鉄道旅行へ出かける。
帰ってくると、山盛りの洗濯物を差し出す。

毎朝「朝風呂」に入る。
洗面所の床は、水をぶちまけたみたいにビシャビシャ。何度注意しても、拭くことはしない。
私の朝は、洗面所の床を拭くことから始まっていた。
毎日疲れていた。 

そんなある日。
「アズちゃん、もう辞めたらええやん。
扶養に入れたるわ。しばらくのんびりしたら?
僕も家族手当2万円つくからさ」


??
退職に反対したくせに、2万円の手当のために
「やめたらええやん」とは?

「扶養に入れたる」と言われて、正直ムカついた。

上から目線だし、恩着せがましい。
“生活費を出してやる代わりに言うこと聞けよ”
という取引みたいに聞こえた。


結婚したら、夫が妻を扶養に入れるのって、
ごく普通のことだと思ってた。

仕事を辞めて遊び暮らすつもりなんてない。
転職までの繋ぎの間、助けて欲しかっただけ。

それを“恩”みたいに言われたことで、
一気に気持ちが冷めた。

元夫は上機嫌で続けた。

「アズちゃんが働いてなかったら、いつでも2人で旅行行けるしな。
アズちゃん1人くらい、養えるわ」

そう言って、笑った。

つまり、彼が“価値”を感じたのは
私を扶養に入れることで発生する2万円の手当
私に時間ができることで得られる自由

私は体調もメンタルも底を打っていた。
何でも悪く捉えてしまう傾向もあったと思う。

だけど、後になって気づく。

「苦労はさせない」というセリフは、
“経済的に依存させて自由を奪う”
ための枕詞にすぎなかった。



会社を辞めたのは、私の判断だった。
でも、本当に辞めるべきだったのは——

会社ではなかったのかもしれない。

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