三幕構成・起承転結・序破急って、結局なんなんだ!?【脚本のイロハ】
こんにちは、だんごぶっくです。
脚本の勉強を始めると、わりと早い段階で3つの言葉に出会います。
三幕構成。起承転結。序破急。
どれも「物語の組み立て方」の話です。
本にも講座にも出てきますし、意味を説明できる人も多いと思います。
ただ、正直に書きます。
私はこの3つの言葉を覚えたあと、一行も書けるようになりませんでした。
意味は分かるんです。
序があって、破があって、急がある。それは分かる。
でも、じゃあ自分の話をどう序と破と急に分けるのか、そこが一向に分からない。
本を読んでも「ここで大きな転換点を置きましょう」と書いてあるだけで、置き方が書いていない。
今日は、その「どう書くのか」の話をします。
今日の流れです。
・3つの言葉は、結局なにが違うのか(先に整理します)
・いちばん実用的だった、たった一つの考え方(この記事の本題です)
・世の中にある他の手引きも、いくつか紹介します
・そして「箱書き」という作業について
まず、3つの言葉を整理します
三幕構成、起承転結、序破急。
この3つは、そもそも生まれた場所がまったく違います。
そこを知っておくと、混乱が減ります。
起承転結は、もともと詩の作り方
起承転結は、漢詩の「絶句」という4行の詩の組み立て方から来ています。
1行目で言い起こし(起)、2行目でそれを受け(承)、3行目で話題を転じ(転)、4行目で全体を結ぶ(結)。
これが日本に伝わって、文章全般の組み立てとして使われるようになりました。
つまり、もとは映画の話ではありません。
4行の詩の作り方です。
序破急は、もともと音楽の速度
序破急は、雅楽の用語です。
序はゆっくり、急は速く、破はその中間。もとは速さの話でした。
それが能に取り入れられ、世阿弥の芸道論の中で使われるうちに、一日の演目の並べ方や、一曲の中の組み立てを指す言葉になっていきました。
ここも、もとは物語の話ではありません。
音楽の緩急です。
三幕構成は、ハリウッドの実務
三幕構成は、この3つの中でいちばん新しく、いちばん実務的です。
これまでの記事でも少し触れましたが、脚本を3つのかたまりに分けて考えるやり方です。
第1幕(およそ最初の25%)=主人公と、その人の困りごとを見せる
第2幕(真ん中のおよそ50%)=動いて、うまくいかず、追い詰められる
第3幕(およそ最後の25%)=決着をつける
そして、およそ25%と75%の地点に「転換点」を置くとされています。
話の向きが変わる大きな出来事のことです。
この考え方を広く知らしめたのが、脚本家のシド・フィールドさんです。110ページの脚本なら、第1幕は1〜30ページ、第2幕は30〜90ページ、第3幕は90〜110ページ、というふうにページ数まで具体的に示しました。
で、結局どう違うのか
違いません。
出どころは詩、音楽、映画とバラバラですが、言っていることはほぼ同じです。
「始まりがあって、真ん中で大きく動いて、終わる」。
呼び方と分け方が違うだけです。
だからどれを使ってもいいし、どれを覚えても書けるようにはならないのも同じです。
問題はそこではないからです。
本当の悩みは「で、どうやって作るのか」
三幕構成を説明した本を読むと、たいていこう書いてあります。
「第1幕の終わりに、物語の方向を変える大きな出来事(プロットポイント)を置きましょう」
正しいと思います。
でも、これを読んで書けるようになる人は、たぶんもう書ける人です。
「その大きな出来事を、どうやって思いつくんですか」というのが、こちらの聞きたいことだからです。
そのうえ最近は、もう一つややこしい話があります。
今は「序破急」ではなく「破序急」で書け、と言われます。
つまり、ゆっくり始めるな。
冒頭からいきなり事件を起こせということです。
ショートドラマ、動画、倍速視聴、ネタバレサイト。
観る人の生活習慣が変わったので、ゆっくり始まる話は、始まる前に閉じられます。
順番まで変えろと言われると、覚えた形がまた崩れます。ここで多くの人が、構成の勉強そのものを諦めます。
ただ、私の中には一つ、この問いへの答えがあります。
エンディングを流せる場所を、3つ作る
デビューして1年半から2年ほど経った頃、私はある作家さんとチームで作品を作らせていただく機会がありました。
デビュー前からずっと好きで、勝手に勉強させてもらっていた方です。
1年近くご一緒したなかで、三幕構成についてどう考えているかを聞いたことがあります。
返ってきた答えが、これでした。
「エンディングを流せる場所を、3個作ればいいと思っているよ」
エンディングというのは、エンドロールや主題歌が流れても成立してしまうような、強く印象に残る場所のことです。
それが3つあればいい。
1つめ=「序」のエンドポイント
2つめ=「破」のエンドポイント
3つめ=「急」のエンドポイント
この3つを作れていれば、結果として観客の感情が大きく動く構成になっている。
私は、これを聞いてようやく腑に落ちました。
いまでもよく覚えています。
なぜ、この言い換えが効くのか
この考え方の優れているところは、作業が具体的になることです。
「転換点を置きましょう」と言われても、置くべきものが抽象的すぎて手が動きません。
でも「ここで曲が流れても成立するか?」なら、判断できます。
やってみると分かりますが、この問いにはごまかしが効きません。
曲が流れても成立する場所には、感情の到達点があります
曲が流れても成立する場所には、ひと区切りがあります
そして何より、そこまでに何かが変わっていなければ、曲は流せません
つまり「ここで曲を流せるか」と問うことは、「ここまでで何かが変わったか」と問うことと同じなのです。
三幕構成の教科書が「転換点を置け」と言っているのは、要するにこれです。
言い方が違うだけで、やることは同じ。
ただ、こちらの言い方のほうが、圧倒的に手が動きます。
そしてこの考え方は、「破序急」とも喧嘩しません。
エンドポイントを3つ作る、という条件は、どこから始めるかを縛っていないからです。
冒頭で事件を起こしてから1つめのエンドポイントへ向かってもいい。
順番の流行が変わっても、この基準は生き残ります。
ほかの手引きも、いくつか紹介します
世の中には、三幕構成をもっと細かく分解した手引きがいくつもあります。
代表的なものを3つだけ。
どれか一つを覚える必要はありません。「こういうものがある」と知っておくだけで十分です。
① シド・フィールドさんの「パラダイム」
いちばん基本の形です。25%と75%の地点に転換点を置く。これだけ。
シンプルですが、「位置を決めてしまう」というのが発明でした。中身を思いつく前に、置く場所だけ先に決めてしまうわけです。
② ブレイク・スナイダーさんの「ビート・シート」
三幕構成を、さらに15の場面(ビート)に分解したものです。しかも、それぞれをどのあたりに置くかまで決まっています。

細かすぎると感じるかもしれません。
ただ、色をつけた3か所を見てください。25%、75%、100%。
ここが、さっきの「エンディングを流せる場所」とほぼ重なります。
③ ダン・ハーモンさんの「ストーリー・サークル」
物語を円環(サークル)で考えるやり方です。8つの段階に分かれています。
いつもの場所にいる
何かが欲しくなる
慣れない場所へ出ていく
そこに適応する
欲しかったものを手に入れる
そのために大きな代償を払う
もとの場所へ戻ってくる
けれど、本人は変わっている
これも中身は同じです。「出ていって、痛い目に遭って、変わって帰ってくる」という一本の線を、8つに刻んだだけです。
3つを並べて分かることがあります。
言い方も刻み方も違いますが、全部「大きく動く場所を、書く前にあらかじめ決めておけ」と言っています。
思いついてから並べるのではなく、並べる場所を先に用意して、そこに何を入れるかを考える。順番が逆なんです。ここが、書けない時期といちばん違うところだと思います。
そして、こうした型は過去のヒット作が何十年もかけて作ってきた蓄積です。基本として参考にしたほうがいいですし、真似をするのがいちばんの近道だと思います。
そこで「箱書き」です
構成を考えるとき、私がいちばんおすすめしたい作業が「箱書き(はこがき)」です。
箱書きとは何か
ひとことで言うと、物語の要素を、ひとつずつ箱に入れて並べていく作業です。
紙に四角い枠を並べて、その中に「どこで、誰が、何をするか」を一行ずつ書いていく。ひとつの枠がひとつのかたまりになるので、箱書きと呼ばれます。
箱1/病院・待合室 主人公が、父の余命を知らされる
箱2/実家・台所 弟に電話するが、出ない
箱3/会社・会議室 大事な仕事を任され、断れない
だいたい、こういうものです。台詞は書きません。「そこで何が起きるか」だけを書きます。
なぜ、文章ではなく箱なのか
理由は2つあります。
ひとつめは、入れ替えられるから。文章で書いてしまうと、順番を変えるのが大仕事になります。箱なら、動かすだけで済みます。これはかなり大きな違いです。
ふたつめは、場所を先に決めると、中身が具体的になるから。
脚本の学校でも言われることですが、「ここで二人が別れる」と頭で考えているうちは、まだぼんやりしています。それが「駅のホームで別れる」と場所まで決まった瞬間に、電車の音や、傘や、人混みが浮かんできます。箱に場所を書く、という形式そのものが、考えを具体的にしてくれるわけです。
順番について(ここは人によって違います)
正直に書いておきます。箱書きをどのタイミングでやるかは、人によって違います。
よく紹介される順番:あらすじ(プロット)→ 箱書き → 脚本
すでに話の流れが決まっていて、それをシーンに割っていく進め方です。
私のやり方:箱書き → プロット → 脚本
まだ話が固まっていない段階で、思いついた要素をとりあえず箱に入れて並べてしまう。並べてから、順番を組み替えて、それを文章にします。
どちらが正しいということはありません。ただ、これから構成を身につけたい人には、私は後者をすすめます。理由は次の項です。
箱書きは、構成の健康診断になる
並べ終わった箱を、少し離れて眺めてみてください。2つのことが、目で分かります。
① 箱が、どこかに偏っていないか
序盤に箱が10個あって、終盤に3個しかない。これは構成が崩れている合図です。前半に説明を詰め込みすぎているか、後半を考え切れていないか、どちらかです。
② エンドポイントが、3つ作れているか
箱を眺めて、「ここで曲を流せるな」という場所に線を引いてみます。3本引ければ大丈夫です。
引けなかったら、そこが足りていないということ。「じゃあ、ここで何か事件を起こさないといけないな」と考える基準になります。
これが箱書きの、いちばんありがたいところだと思います。「なんとなくうまくいっていない気がする」を、目で見える形に変えてくれる。
頭の中だけで構成を考えていると、崩れているのに気づけません。箱にして机に並べた瞬間に、偏りは一目で分かります。
やってみるときの、小さなコツ
最初から順番に並べようとしない。思いついた箱から書いて、あとで並べ替えれば大丈夫です
1枚の紙に収める。スクロールしないと全体が見えないと、偏りに気づけません
付箋やカードでもいい。動かせることがいちばん大事なので、むしろそのほうが向いています
台詞は書かない。ここで書き始めると、その箱を捨てられなくなります
まとめ
今日の話をひとつに絞ります。
三幕構成も起承転結も序破急も、覚えるだけでは書けるようになりません。私はそれで、けっこうな時間を無駄にしました。
そのかわり、「エンディングを流せる場所を、3つ作る」という一言で、私はようやく手が動くようになりました。
判断できる問いに変わったからだと思います。
そして、それを目で確かめるための道具が箱書きです。
白状すると、私はいまでも箱書きを飛ばしたくなります。
早く台詞を書きたいからです。
そして飛ばした原稿は、だいたい後半で崩れます。
毎回同じところで転ぶので、そろそろ学んでもいい頃だと思っています……。
もし今、構成でつまずいているなら、紙を一枚出して、箱を並べるところからやってみてください。順番も、事件も、そのあとで大丈夫です。
◆
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