少女と美女のはざまでおどる|競技ダンスの話
「少女と美女のあいだなのね」
初対面、老年の女性にそう言われてわたしはどきりとしました。
けっして、見ための話ではありません。
ここは競技ダンスの試合会場。
女性の背後では舞踏会さながらに色とりどりのドレスが舞っています。
ついさっきまで、わたしもそのフロアの中で踊っていました。
試合がおわったあと、踊りを見ていた人に言われたのです。
・ ・ ・
その人はどうやら、わたしのペアの人と知りあいのようでした。
競技ダンスは社交ダンスのうつくしさを競うスポーツです。
大会は大学生からシニアの人まで、それぞれのランクごとに出場します。
同年代の異性とペアを組むことが多いです。
声をかけてきた女性は、おそらくわたしの母よりもずっと年上。
それでもすっとのびた背筋は年齢を感じさせませんでした。
その人にしずかに見つめられて、「少女と美女のあいだね」と言われたのです。
心のおくに、ゆっくりと進んでくるような視線。
初対面にもかかわらず、いやな感じはしませんでした。むしろどきりとしたくらいです。
嫌味もおせっかい心も感じられないその言葉は、まさに今のわたしでした。
・ ・ ・
その日、会場で踊るわたしの心持ちはいつもと違っていました。
普段より、ちょっと緊張していたのです。
今までのわたしは、ただ楽しくて、きらきらとした気持ちで躍って、お客さんからの拍手がほしくて。
そんなわたしを見て「競技ダンスってやっぱりすてきだよね」とあらためてダンスを好きになってほしかった。
なんでしょうね。火をつけるというよりは、ついている火をもっと大きくしたいというか。
そう思うようになったきっかけも、試合おわりに声をかけてくれた人だったなと思いだします。
とにかく、「ただ楽しい」
わたしはそんなふうに踊っていました。
でも最近は、それじゃせまいなって思ったんです。
そばにいるお客さんだけじゃなくて、
もっととおくの、反対側にいる人とか2階席の方向とか、もっともっとひろく とおくの場所にもしめしたい。
「競技ダンスは魅せるもの」
その意識が、最近の試合結果やレッスンや先生の踊りによって、ようやく芽ばえたところです。
じゃあ、大きな踊りを意識しよう。
もっととおくの人にもとどくように、大きく、目線はとおく。
そんなふうに思ったら、今度は足元がおろそかになってしまいました。
競技ダンスはふたりで踊るものです。
かみ合わない感覚にあせって、マスクの下ではほとんど笑えませんでした。
結果として、試合中はたのしいよりも「うまくいかない」のほうが大きかったです。
そりゃあそうなんです。
新しく意識しはじめたことが、急にできるなんてことはありません。
でも、しばらくはこの方向性でやりたい。
そんな、課題をみつけた試合となりました。
だからこそ、あの女性に「少女と美女のあいだなのね」と言われたとき、
反発ではなく納得を感じたのです。
・ ・ ・
まさにいま、競技ダンスにおける「少女と美女」のはざまなんだと思います。
こどものように、ただきらきらと踊るんじゃなくて、
会場の端々にまでとどくように踊りたい。
それこそ、目が離せないほどの美女のように。
まだまだ技術もからだもおいつきませんが、目指さないことにははじまりません。
その女性が、最後にこう言ってくれました。
「あせらなくても、そのうち美女になるわよ」
少しくぐもった、低い声。
やっぱりどこか予言者めいています。
ああ、予言者じゃなくて魔女でしょうか。
少女も美女も通りこし、魔女のようなその人の、ほほえむ姿が印象的でした。
なりたい姿になるために、そのためにまた練習をかさねていきます。
・ ・ ・
競技ダンスの話でした。
大会前に書いたnoteに、応援のコメントをくださったみなさん本当にありがとうございます。
課題がたくさんでてきた試合でしたが、順位としては今までよりいい結果となりました。
多くの人が「競技ダンスってなに??」と思うなかで、
競技ダンスのnoteを読んでくれて、スキしてくれて、コメントまでいただいて…!
こんなにうれしいことはありません。
自分の好きなものに、興味をもってもらえるってやっぱりうれしいです。
ありがとうございます。
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