「男って言ってるけど、女だよね」──アルバイト先で言われた忘れられない一言
性別移行の途中だった頃、僕は登録制のアルバイトをしていた。
日雇いの派遣バイト。必要なときに連絡が来て、現場に入るスタイル。
履歴書も面接もなく、誰にも過去を説明しなくて済む気軽さがあった。
でも、ある日、そんな気軽さが一瞬で砕け散る出来事があった。
性別は「男」として登録していた
そのときの僕は、戸籍の性別はまだ「女性」。
でも、日常生活では完全に「男性」として生活していた。
アルバイトにも、男性として登録していた。
名前も改名前だったけれど、呼ばれ方ややりとりはすべて“男性”扱い。
髪型も服装も、声も、どう見ても“男”として通ると思っていた。
だから、その日も何の不安もなく、集合場所に向かった。
「ちょっと、こちらへ来てください」
現場に着いて、他のバイトと一緒に業務の説明を受けていたときのこと。
突然、派遣会社の社員が近づいてきた。
> 「……ちょっと、こちらへ来てください」
人気のない場所まで連れて行かれた僕は、何が起きたのか分からず固まった。
すると、社員は気まずそうな顔でこう言った。
> 「今日、一緒にバイトに入った人からクレームが出てまして……」
「“あの人、男って言ってるけど女だよね”って」
その瞬間、頭が真っ白になった。
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怒りと屈辱で、その場を辞退した
「なんで、そんなこと言われなきゃいけないんだ」
「なんで、現場に来てるだけで“クレーム”になるんだ」
怒りと悔しさが一気にこみ上げてきた。
社員は「今回は外れてもらったほうがいいかと…」と遠回しに言ったけれど、
僕はもう、黙って制服を脱いで返した。
> 「分かりました。じゃあ辞退します」
そう言って、その場を逃げるように立ち去った。
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帰り道、涙が止まらなかった
電車に乗って、家に帰る道すがら、
涙が勝手にこぼれてきた。
「見た目だって声だって、どこに出しても男として通るって思ってたのに」
「たった一言の“女だよね”で、こんなに傷つくなんて」
誰かと話す気にもなれず、ただ静かに、涙を拭きながら帰った。
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でも僕は、これを「ネタ」にした
この出来事は、あとから僕の人生の一部になった。
名前の改名を申し立てたとき、
そして性別の戸籍変更を裁判所に申請したとき、
書類に添える「申述書」の中に、このエピソードを書いた。
> 「現場で、“あの人は女だ”というクレームを受け、強制的に職を外されました。
これがどれだけ人格を否定される出来事だったか、伝わることを願っています。」
書きながら涙が出たけど、どこかでこう思っていた。
「もう、ただ傷つくだけじゃ終わらせない」
あの出来事を“意味のあるもの”に変えることが、
僕にとってのささやかな“復讐”だった。
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最後に
性別移行の途中というのは、とても不安定な時期だ。
見た目は変わってきているけど、戸籍は変わっていない。
本人の中では「自分は男」と思っていても、
**他人にとっては“なんか変な人”**になってしまうことがある。
でも、それでも僕は、自分を曲げずにここまで来た。
クレームをつけた人の名前も顔も、もう覚えていない。
でも、あの日の自分の悔しさと涙だけは、ずっと忘れない。
こういう出来事のあと、
僕は自分の「身体」と向き合うことになります。
正直、この先はあまり人に話せる内容ではありません。
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https://note.com/ftm_onabe/n/n9c8d0eff0dbe
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