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8月9日(日)砂鉄日和。

AM 8:00。radikoのチャンネルをTBSに合わせる。本仮屋ユイカさんのONE-J(ワンジェイ)を聴きながら、ストレッチを終え、朝食の準備をし、朝食を摂る。

砂鉄日和と言ったって、紐をくくりつけた磁石を持って、空き地に行って、無闇矢鱈に歩き回り、砂鉄を集めるわけではない。ここで言う砂鉄とは、武田砂鉄さんのことである。
朝から本仮屋さんのハイタッチを拒むいつもの感じの砂鉄さんに、フフッとなる。

この番組は生放送だから、砂鉄さんは10:00に番組が終わってから来阪するんだな、なんて考えなら、家の片付けをしたり、シーツを洗ったり、読書をしたり、のんびりと過ごす。

夕方 普段はしない化粧を終え、着替えを済ますと、外を眺め、雨が小降りになることを祈りながら、もしかして、という淡い期待を抱いて、金色の箔押しされたウサギが表紙の「そんな気がする」をジップ付きの保存袋にネームペンと共に入れトートバックの中に忍ばせた。

マンションの自動ドアを出るとバケツをひっくり返したような豪雨で人っこ1人歩いていない。ひさしの下で2〜3分待ってみたけれど、弱まる気配はない。地下鉄に乗り遅れてしてしまう。
トートバッグを左手で胸に抱え、右手に傘を持ち、意を決してアスファルトに足を踏み出すと、数秒でズボンの下半分はずぶ濡れになった。

駅までは12〜13分。お店の軒下で雨宿りをする夫婦からの「こんな土砂降りの中歩く?」と言う奇異なものでも見るような視線を浴びながら、私は負けず突き進む。と、突然 雨の勢いがなくなった。止んだのと等しいくらいの小振りになる。
駅からこちらに来る人は誰も濡れていない。私は異次元の世界からやってきたように、1人ずぶ濡れで歩いた。途中で立ち止まり、ズボンの裾を絞ると雨水がポタポタと雫を垂らす。

会場があるはずの建物の前に着いたが、会場らしき名前が見当たらない。建物の前でウロウロしていると1人の女性がやって来て、建物の前で不安そうにキョロキョロとしている。軽く会釈をして、どちらからともなく声をかけた。
「もしかして、イベントに参加される方ですか?」
「中学生新聞の…」
「そうです」
「ここであってますよね」
2人して建物の案内表示を確認し、ようやく会場の名前を見つけた。

会場に到着すると、席は大方うまっていた。地下鉄の冷房と外の生ぬるい風のお陰で、ペラペラの生地のズボンは大方乾いた。
空席に腰を下ろすと、間もなく公演が始まった。

人生初めての生砂鉄。静かに興奮する。が、後ろのほうの席なので、臨場感がない。

今日の主役は青木美紀さんと川中だいじさんで、砂鉄さんはゲストというポジション。青木さんと川中さんの書籍販売とサイン会があるけれど、砂鉄さんのそれはない。

3人が軽く挨拶を済ませると、青木さんの話がはじまった。青木さんの話に引き込まれ約40分はアッという間だった。そして、後半20分は川中さん。高校1年生とは思えない、堂々とした話しぶり。お2人の話の間に、砂鉄さんのいつものブラックペッパーのような突っ込みや意見が挟まれる。
そして前半1時間が経過し、10分の休憩時間。

青木さんから、青木さんと川中さんの書籍販売の案内があり、その後
「砂鉄さんは新幹線の時間があるので、終わられたらすぐに帰られます。本をお持ちの方がありましたら、今の間にどうぞ」
とアナウンスがあった。
「サインでもなんでもしますよ」
と砂鉄さん。

!!!
私は一目散にジップ付きバックに入った「そんな気がする」の入ったトートバッグを抱え、砂鉄さんの前に並ぶ。あと3人、あと2人、あと1人。
とうとう目の前に砂鉄さんが現れた。
表紙を開いた「そんな気がする」を差し出し
「長谷川書店のメールを送った ふともも むくみです」と伝える。
「ああ、どうもどうも。今日、行こうかなと思って調べたんだけど、
ちょっと遠いね。ここから1時間くらいかかるんだね。本当にもう京都に近いね」
「今日、ワンジェィ※1 に出られてたから、無理かなって思いました。あと、日曜日はみのるさん※2  がお休みなんですよ」
(※1 この日砂鉄さんは朝8:00~10:00まで東京でTBSラジオの生放送にゲスト出演していた)
(※2 長谷川書店の名物店員さん)
「じゃあ、行かなくてちょうど良かったね」
砂鉄さんのサインが書き終わってしまったので、私はお礼を言ってその場を後にした。

砂鉄さんとしゃべった。
私、砂鉄さんとしゃべったよ!しかも生の砂鉄さん。
目の前にいたよ。生砂鉄。

興奮状態で、今度はトイレの列に並ぶ。
サインにむくみさんへ、と書いてもらえばよかった。
握手をしてもらえばよかった。
ラジオ全部聴いていますと伝えれば良かった。
ああ、これからも応援していますとか、好きですとか言えば良かった。
砂鉄さんと話せただけで十分なのに、色んな後悔がぐるぐる巡る。
人間の欲とは恐ろしいものだ。

休憩後は質問タイム。20時までの予定が20時15分まで押し、最終の新幹線で帰らなければならない砂鉄さんは舞台からそそくさと立ち去った。
(翌日は8:00から文化放送でラジオマガジンの生放送が控えている)
なんばから新大阪までは徒歩も含めると30分くらい。無事にお弁当を買って新幹線に間に合うのだろうか。
何か大阪名物を差し入れで渡せばよかった。
今度こういう機会があれば、何か持ってこよう。

帰りの地下鉄でも砂鉄さんに思いをはせていた。

最寄り駅から自宅までの道を歩きながら、靴の中がグチャグチャで、靴下が濡れていることに気が付いた。
生砂鉄の興奮で、靴の中が濡れている感覚さえなくなっていた。

郵便受けを開けると、文化放送から封筒が届いていた。
中身は、ラジオマガジンの特性しおりと、文化放送のフリーペーパー「フクミミ」が入っていた。
そう言えば少し前に、当選していたことを思い出す。
何だか、一緒に入っているお手紙の切り方が雑な感じなのがいい。

今日は朝から晩まで、いい砂鉄日和だった。



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