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バッハの「平均律クラヴィーア曲集」:ヴィルヘルム・ケンプのピアノは誤解されやすい

バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻

ヴィルヘルム・ケンプのピアノは打鍵が軽く鋭くない。余程のことがないと強く弾かない。そのせいで誤解されやすいが、技量はかなり高い。

J.S. Bach: The Well-Tempered Clavier I, Prelude & Fugue

ケンプは私の中では打鍵や音色は対照的だが、曲の構造把握やテンポ設計の厳格さ、そしてグルーヴの作りがリヒテルと近いタイプだったのではないかと思っている。なぜならケンプの演奏を聴くと、揺らしても崩れないリヒテルの演奏を思い出すからだ。

ケンプは年齢が割と高かったせいでステレオ音源が普及した1970年代には既に70過ぎていて、良い音源が沢山残っていないのも評価が分かれる原因だろう。だけども残された音源を良く聴くと、演奏に派手さはそれほど無いものの、安定したリズムからくる技量の確かさが浮き上がってくる。

この音源はケンプが82歳の時に録音されたものだが今となっては良質な音源としてケンプの技量がはっきりわかる貴重なものだろう。

私はベートーヴェンのピアノ曲には力強さを求めるが、シューベルトやブラームス、バッハなどはケンプの演奏がとても心地よく聴ける。

ケンプの演奏は、はっきりしたものではない。音がぼやけていると感じる時もある。だけども良く聴いていれば、揺らしながらも絶大な安定感があることに気づくだろう。それは鋭い打鍵で弾くことの対極にある演奏法だったのではないだろうか。


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