ベートーヴェン「ピアノソナタ第18番」リズムを揺らすことで生まれるグルーヴ:マリヤ・グリンベルグ
ベートーヴェン ピアノソナタ第18番 変ホ長調 Op. 31-3
この曲は聴く機会はあまり多くないかもしれないけども、
マリヤ・グリンベルグの良い音源があったので紹介してみたいと思う。
Piano Sonata No. 18 in E-Flat Major, Op. 31 No. 3 "The Hunt": IV.
この楽章は特にリズムが大事だ。だけど正確なリズムだけでは楽しくない。
グリンベルグのピアノは、音よりもそのリズムの良さに特徴がある。
正確なリズムでありながらもリズムをちゃんと揺らす。だからこのグルーヴが生まれるんだと思う。グリンベルグの演奏はリズムで曲が泣いたり笑ったり、時にはユーモラスにさえ感じられる。グリンベルグはとてもユーモア溢れる人だったという。それが演奏に出ているのではないかと思う。
もっとリズムを正確に弾ける人はいるだろう。しかしテンポを崩さずに拍をしっかりキープしたまま、その内部でリズムを揺らす演奏はかなり高度な技術だと思う。これこそが超一流のピアニストの条件ではないかと思う。
これによってグルーヴと表現力が生まれ、聴いているものの満足感が大きく違ってくる。グルーヴなんて言葉はクラシックじゃ余り使わないかもしれないが、グルーヴのない音楽というものも存在しない。音楽を説明するうえで便利な表現ではないだろうか。
グリンベルグの評価が見直されて高くなるのもこの良質なグルーヴがあってこそだと思う。メトロノームは決して笑わないが、グリンベルグの打鍵は笑っている。
私は演奏を聴くとき、何よりもまずこの演奏者のグルーヴを聴いて、その演奏の善し悪しを判断している。
リズムは正確でもグルーヴが弱い演奏には、どうしても満足感が足りなく感じてしまう。最近のピアニストの演奏にそう感じることが多く、私が古いピアニストの演奏をよく聴く理由の一つになっている。
この演奏をリズムを揺らすとはなんだろうと思ってもらいながら聴いてもらえたらもっと楽しいんじゃないかなと思う。
