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ドビュッシー「版画:塔」中期以降のドビュッシーって難易度は高くなる。スヴャトスラフ・リヒテル

作曲者:ドビュッシー
曲名 :版画「塔」
演奏者:スヴャトスラフ・リヒテル

私は長い間、リヒテルの演奏するドビュッシーを聴いて満足していた。
特にベルガマスク組曲や版画はお気に入りの演奏だった。
だけども他の人のドビュッシーの表現を知りたくて色々聴いてみた。

Debussy: Estampes, L. 100: 1. Pagodes

ドビュッシーの演奏が上手い人はモニク・アースのように立体的な縦軸の使い方が上手い。これはとても強く感じたことだ。
そしてリヒテルの演奏は縦軸よりも横軸の旋律の上手さ、音の響きの良さを優先したものだから表現として足りてないなんて思うようになった。

だけども、そんな立体感のあるドビュッシーの演奏を聴いていていたら変だなと気づき始めた。

ベルガマスク組曲に代表されるドビュッシーの初期の作品は平面的ではあるものの、聴いていても音楽的な完成度の高さはかなりのものがある。
それに比べてドビュッシーの中期以降の作品は立体的な表現は確かに凄いが初期作品ほど聴いていて音楽的な満足度が足りてないんじゃないかと気づいたのだ。それはつまりドビュッシーの曲をトータルで見ると平面的な旋律の良さを取るか立体化を取るかという選択が必要になる構造になっているのではないかと思ったのだ。この立体化と旋律という構造は、通常の音楽におけるリズムと旋律の関係と同じだ。リズムを優先させるか旋律を優先するかという話と一緒なのだ。

旋律も立体化も両方同時に高い次元で成立させられると思う人も居るのかもしれない。だけど少なくとも私が聴いてきたドビュッシーの中期作以降の演奏は立体化つまり縦軸を意識した演奏が多くて、横軸と共に高い次元で両立させていると思えるものはなかった。

そして私がずっと聴いてきたリヒテルの演奏を改めて聴いてみると、正に私がたどったドビュッシーの演奏に対する疑問の一つの答えだったのではないかと気づいたのだ。リヒテルは縦軸を立体化することよりも横軸での旋律つまり平面的な演奏の満足度を優先させたのではないだろうか。
そう考えると一周回ってきた感じはするけども、
私が聴いてきたリヒテルの演奏は良いものだったのではないかと思う。

ドビュッシーにはどう聴けば良いのかのわかりにくさがある。
でも私にはリヒテルという道しるべがあったのは幸運なことだったと思う。


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