【Kindle出版格闘記#15】いざ最終統合!のはずが…
全10話のケーススタディ、はじめに、おわりに。
すべての原稿が、ついに出揃った。
残る作業は、これらを一つのKindle用ファイルにまとめる「マスター統合」だけ。
「あとはコピペするだけだろ」
そう高をくくっていた自分に、Kindidleフォーマットの魔物が、次々と牙を剥いてきた。
罠その1:出版の美学 vs Kindleの仕様「カギカッコの空白事件」
原稿を見直していて、ふと手が止まった。
文頭の「「」の前に、半角スペースが入っていない。
「いや、これはダメだろう。文頭の鉤括弧の前に半角スペースを空けるのが、プロの美学ってもんだろ」
そう言って、せっせと手作業でスペースを打ち込み始めた矢先だった。
「ボス、ストップ!!」
AI相棒(Gemini)から、悲鳴に近い制止が入った。
「Kindleでそれをやると、レイアウトが崩壊します!」

聞けば、こういうことらしい。
Googleドキュメントには、鉤括弧の前後の間隔を自動で美しく調整してくれる機能(カーニング)が、もとから備わっている。
つまり、見た目上スペースが空いているように見えていたのは、自分が入力したものではなく、システムが勝手に調整してくれていた結果だった。
そこに、さらに手打ちでスペースを足すとどうなるか。
Kindleに変換した瞬間、意図しない大きな空白として表示され、レイアウトがガタガタに崩れる。
「なるほどな……先回りされてたわけか」
長年、紙とWordで培ってきた「美学」が、まさかの誤爆だった。
手打ちスペースは、絶対NG。
一つ、また一つ、しぶしぶ消していく夜だった。
罠その2:スマホ読者を窒息させる「文字の壁」
続いて、原稿全体を通しで読み返してみた。
場面が変わっているのに、改行も空行もなく、文字がびっしり敷き詰められている箇所が目についた。
読んでいて、なんだか息が詰まる。
「ボス、読者が息継ぎできません!」
Geminiが、また容赦なくツッコんできた。
「場面転換のところに、エンター2回で『空行』をぶち込んでください!」

言われるがまま、場面が切り替わる箇所に、空行を一つずつ挿入していった。
作業自体は単純だった。
しかし、挿入し終えて画面を見返した瞬間、驚いた。
さっきまで黒い塊にしか見えなかった文章が、まるで呼吸をしているかのように、スッと読みやすくなっている。
たった1行の余白が、これほど印象を変えるとは、正直思っていなかった。
罠その3:絶望の「目次4ページ膨張事件」
いよいよ、目次の自動生成に挑んだ。
Googleドキュメントの機能で、ワンクリック。
「よし、これで完成だ」
そう思った瞬間、画面に表示された目次を見て、固まった。
目次だけで、4ページ。
本来なら、章タイトルが10数行並ぶだけのはずが、なぜか本文中の長い一文までもが、丸ごと目次に吸い上げられていた。

原因を探ってもらうと、すぐに判明した。
普通の文章のはずの箇所に、誤って「見出し」という設定が付いてしまっていたらしい。
見出し設定とは、ドキュメントの中で「ここは章のタイトルですよ」とシステムに教える印のようなもの。
それが、なぜか本文の一部にまで、いくつも紛れ込んでいた。
該当箇所を一つずつ見つけ出し、「標準テキスト(普通の文章)」に戻していく。
最後の一箇所を直し終え、目次の「更新」ボタンを押した瞬間。
4ページに膨れ上がっていた目次が、一瞬でスッと1ページに収まった。
思わず、声が出た。
「戻った……!」
単純な作業なのに、この爽快感は、ちょっとクセになる。
次なるラスボス「表紙づくり」へ
今回の3つの罠を振り返って、しみじみと思うことがある。
一人だったら、原因もわからないまま途方に暮れていたかもしれない作業だった。
しかし、AIという相棒と「ボス、ストップ!」「なるほどな」とやり取りしながら進めると、孤独なはずの深夜の作業が、不思議とエンタメに変わる。
すべての罠を乗り越え、原稿は、ようやく美しい形に整った。
いよいよ次回は、これまで一度も向き合ったことのない、最大の苦手分野。
表紙デザインという、次なるラスボスに挑む。
あなたの仕事にも、「知らずにやっていた自己流」が、実はシステムと噛み合っていなかった、なんて経験はありませんか。
振り返れば、今回の罠は、どれも「良かれと思って」やったことばかりだった。
美学だと信じていたスペースも、丁寧に書いたつもりの長文も、悪気は一つもなかった。
それでも、システムの前では、悪気のなさは通用しない。
正しさは、時に、思い込みの形をして紛れ込んでくる。
だからこそ、指摘してくれる相棒の存在が、ありがたい。
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