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「来月なら大丈夫」となぜ信じてしまうのか | カードローンと行動経済学 Vol.02

「来月なら大丈夫」となぜ信じてしまうのか
―カードローンと“今を優先する脳”の話―

こんにちは、GeNiE株式会社代表の齊藤です。

突然ですが、みなさんは、
「来月は余裕があるはず」
「ボーナスで何とかなるだろう」
そう思って決めた選択が、あとから少し重く感じたことはありませんか。

前回のカードローンと行動経済学Vol.01では、人間はカードローンを「理屈」ではなく「感情」で使っているというお話をしました。

今回は、その「感情」の中でも、特に強く私たちの行動を左右する、「今この瞬間」に引き寄せられてしまう脳の性質について行動経済学の断面からお話ししたいと思います。
ぜひ最後までお付き合いください。


なぜ私たちは「今」を選んでしまうのか

「今だけ特別!」
「今すぐ手に入る!」
こうした言葉に、つい心が動いてしまうのは、私たちの意志が弱いからではありません。
行動経済学では、将来の利益よりも、今すぐ得られる価値を過大評価してしまう傾向を「現在バイアス」と呼びます。

行動経済学には、遠い将来の利益よりも現在すぐ得られる利益を過大評価してしまう「現在バイアス」という考え方があります。
合理的に判断しようとしても、将来的な損得より、目先の小さな幸福や便利さを選んでしまうことが少なくありません。

出典:カードローンと行動経済学 Vol.01

たとえば、今すぐ1万円もらえるのと、1ヶ月後に1万1,000円もらえるとします。
頭では「待ったほうが得」だと分かっていても、多くの人は「今すぐ」もらえる1万円を選んでしまう。

これは、未来に受け取れる価値を無意識に割り引いてしまう時間割引という心理が働いているからです。
そしてこの現在バイアスは、カードローンの利用行動とも深く結びついています。

借りる瞬間、ユーザーは「未来」ではなく「今」を見ている

カードローンを利用する際、すべてのユーザーが冷静に返済計画を立てているわけではありません。
急な出費、欲しかったもの、断りづらい誘い。
「今」の焦りや高揚感が、数ヶ月後の返済よりも強く意識されてしまうのです。

さらに、人間の脳は、未来の自分に対して驚くほど楽観的です。

「来月は余裕があるはず。」 「ボーナスで何とかなる。」
そう考えることで、借りることへの不安は一時的に和らぎます。

しかし、実際に返済の時期が来ると、また別の予定外の支出が生まれている。
こうして返済が先送りされてしまう。
これもまた、人間にとってごく自然な行動なのです。

未来を軽視してしまうのなら、未来を近づければいい。

では、金融サービスはこの“人間の性質”とどう向き合うべきなのでしょうか。 

向き合った設計ができなければ人々を幸せにする金融サービスには、なれません。

行動経済学における答えは比較的シンプルです。
「人間は未来を軽視する」ことを前提に、未来を「今」の延長として感じられる設計をすること。
たとえば、

  • 借入時に数ヶ月後の返済総額をすぐに可視化する。

  • 返済日までの残り日数を表示する。

  • 返済できたときに、小さな達成感をきちんと持たせる。

こうした工夫は、カードローンユーザーを縛るためのものではありません。
“先延ばししてしまう脳”を、そっと「今」に引き戻すためのデザインなのです。

ユーザーに寄り添う金融サービスを

カードローンを利用することに対して、「自己管理ができていない」と片付けるのは簡単です。
ですが、前回もお話ししたとおり、行動経済学は、人間の弱さを責める学問ではありません。
 
人間は誰でも、遠い未来よりも「今」を優先してしまうのです。
それを前提に、どう支えるかを考える。
それが、金融サービスの役割だと考えています。
 
金融はユーザーの「今したい」「今欲しい」を叶えるだけでなく、デザイン次第で、未来にまで寄り添うことができるのです。

借りる行動の裏側には、いつも「今を生きる脳」があります。
その「今」を理解したとき、金融サービスは、もっとユーザーに寄り添うことができるのです。

次回は「支払いの痛みとキャッシュレスの罠」についてお話ししたいと思います。お楽しみに。


つづく


執筆者:齊藤雄一郎 (さいとう ゆういちろう)
2005年、アコム株式会社に新卒入社。支店勤務を経て経営企画部に異動。
企画部門を中心に全体戦略の立案およびマーケティング業務に従事。
2016年、イノベーション部門を立ち上げ、デジタル領域におけるサービス企画・立案、新規事業開発に取り組む。
2022年4月 アコム株式会社の社内起業家としてGeNiE株式会社を設立。