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『ウマフリ』執筆裏話 ―キタノオーザ編


はじめに

 今回は『ウマフリ』に寄稿した「キタノオーザ - 戦後初の三冠を阻んだ悲運の良血馬と、寺山修司が描いたファンの物語」の執筆裏話をお届けします。

1.執筆まで

 前回のnoteでお知らせした通り、セントライト記念にあわせた名馬コラムとなりました。と言ってもキタノオーザを取り上げることを予想できた方は多分いらっしゃらないでしょうね(笑)…。

 寺山修司の名篇「キタノオーザのたてがみ」をいつか取り上げたい気持ちはあったのですが、菊花賞馬はステイヤー好きとしては書きたい競走馬が他にも沢山いますので、中々タイミング無いな、と思っていました。(今年も別の馬で菊花賞の名馬コラムを寄稿する予定です。)そんな中で今回「セントライト記念勝ち馬」という建付けでキタノオーザのコラムを『ウマフリ』の緒方きしん代表にご提案したところ、「楽しみです」とのお返事をいただけました。いつもながら本当に有難いです。

2.プロット作成

 「キタノオーザのたてがみ」を軸にすること自体は既定路線だったものの、「そこまでをどうするか」が今回の難題でした。つまり、エッセイの紹介に持っていくまでの流れを上手く作れるようなプロットにする必要がある、ということです。

 系統的にはウメノチカラのコラムと同じになると思うのですが、あちらとの違いも大きいと感じていました。

 第一にウメノチカラを取り上げた寺山のエッセイ「黒鹿毛の詩」は現役時代のお話が中心になっているため、ウメノチカラの競走生活の紹介とエッセイの引用をセットに出来た一方で、「キタノオーザのたてがみ」はキタノオーザ引退後の行方が主題なので同じ構成が取れないこと。第二にウメノチカラの比較対象であるシンザンは「シンザン記念」に名前が残っている通り今の競馬ファンにも馴染み深い存在である一方で、コダマはシンザンと比べると知名度に劣ること。

 つまり、「キタノオーザのたてがみ」の紹介に入る前にまずキタノオーザの競走生活やコダマの活躍を含めた当時の時代背景について説明が必要だということになります。緒方代表からも「背景説明は丁寧めにお願いします」とオーダーいただいていたので、そこは蔑ろに出来ません。元々私のコラムは前置きが長くなりがちですが、今回は輪をかけて長い前置きになることが予想されました。

 そこで発想の転換を図ることに。「前置き」として読まれると退屈に感じると思われるので、そこだけでミニエッセイみたいな形にしてはどうか、という試みです。「三冠馬」の権威のお話から説き起こし、「三冠王」と絡めながらシンザンとコダマを紹介。そのうえでキタノオーザに話題を持っていくというプロットを作成しました。

 ということで、本筋である「キタノオーザのたてがみ」が第4節まで登場しない、これまで書いてきたコラムと比べても異色のプロットとなったわけですが、個人的には「これしか無い」という気持ちでした。私にもっと筆力があればより退屈させない前置きが書けるのかも知れませんが、中々難しいですね…。私の試みが成功したかは読者の皆様のご判断に委ねたいと思います。

3.コラム執筆

 基本的にはプロット通りに筆を進めていくことが出来たのですが、どこまで補足を入れるのかは迷いました。「三冠王」のお話をするために野村克也さんや長嶋茂雄さんの例も出したのですが、そこに説明を入れてしまうとあまりにも本筋から逸れてしまうので省略することに。逆に久保田金造先生に関するお話は予定より厚めにしました。境勝太郎先生や鹿戸雄一先生のお話は本筋には関係ないのですが、やはり馴染みある名前がある方が身近なお話として感じていただけるかなぁ、と。久保田先生と鹿戸先生の師弟関係についてはウインカーネリアンのコラムでも言及していたので、そことの繋がりを持たせたいという意図がありました。

 一方で入れたかったのにカットしたエピソードもあります。それはコダマの最期について。キタノオーザが「行方不明」になったことは本編で触れた通りなのですが、実はコダマも種牡馬引退後の状況を日本中央競馬会が把握しておらず、その死を把握したのは実に1年後のことでした(寺山修司「あの馬はいずこに 旅路の果て」『旅路の果て』新書館、1979年/河出書房新社より2023年復刊 参照)。インターネットの発達など遠い未来という時代。色々と考えさせられるエピソードなのですが、ちょっと入れ込むのが難しく紹介しない判断を下しました。

 「旅路の果て」においてコダマの最期を紹介する項で語られる寺山の死生観は非常に重要だと思っているので、いつかコラムでも取り上げられたら、と思っています。

4.おわりに

 まぁ数字は伸びないだろうな…と思っていたのですが、本記事投稿時点で15「いいね」をいただいており、予想以上に読んでいただけている印象です。今年はちょうどロブチェンが三冠を目指していますし、タイミング的に良かったのかも知れませんね。セントライト記念を勝利したジャスティンシカゴの健闘も願っています。

 次回ですが、先述した通り菊花賞にあわせたコラムが掲載となる予定です。色々調整中ですが、過去に執筆したコラムの続編的内容になります。是非またお付き合いいただけますと幸いです。


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