山の記録|思秋期の権現山|風まかせ文芸部《金木犀》
◇空の蔵
テストで燃え尽きた子と、初秋の権現山(岐阜県川辺町)に向かう。
中ほどのお堂にある虚空蔵菩薩は「無限の智恵を持った菩薩」である。知識を越えた、何かいいことがあるかも知れない。
一段一段に玉石が配された参道の階段を登る。
お堂の虚空蔵菩薩は普段は拝めない。
しかし、心の奥に静かに蓄えられて、あとから効いてくる知識や経験も世にはある。
三重の塔を過ぎると新植地の奥に山頂が顔を出す。
遠見山や納古山に背後から見守られながら、一足で山頂に到着する。
真新しい展望台からは、霞みがちながらも麓の町並みと南に続く稜線が見えた。

◇秋の風
貸し切りのデッキで遅い昼食を取る。
いつもの缶珈琲で、違いが分かる男ごっこをして遊ぶ。
子が隣で何やらごそごそしている。気になるお相手にキラキラした写真を送りたいらしい。
どうしたらいいかって?いや、父に聞くな。そういう写真を忌避するまである。
──まぁ、これも秋であるな。

山を下る。畦には彼岸花が咲いている。誰に教えられるでもなく、ときを違えず、毎年変わらず咲く草花に、季節の移ろいを感じる。
秋を思う季節。
昨年の冬、庭の金木犀を伐採した。
その香りがもうない秋の物足りなさを、今になって噛みしめる。
当たり前の日常は、なくしてからはじめて気づく。
青春は忘れもの、過ぎてから気がつく。その一節が、秋風のように通り過ぎた。

(山行記録:2024年9月28日)
山名:権現山(岐阜県川辺町)
形態:常善寺の境内の駐車場を起点に往復、息子と二名。約80分(休憩50分)
天候:晴れ
水分:1.2L持参→1.2L消費(カップラーメンの湯含む)
行動食:カップヌードル(味噌)、生なごやん、コーヒー
植生:ヒノキ植林地
(初出2024年9月30日。改稿2026年9月7日)
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お題の「金木犀」には少し早くて、季節を馴染ませるのに苦労しました。
▼より詳しいフィールドノートはこちらから。
https://yamap.com/activities/34731776
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