医療の矛盾〜医者ガチャにならないために(前編)
これは、患者としていろんな病気になり、たくさんの病院を巡った経験と、地域の会議などに参加して考えたこと、医療のニュースなどに触れて見えてきたことをもとに書いています。
1.なぜ患者が診療科を選ばなければいけないのか
患者は、自分の症状の原因も病名も分からない。
あなたは風邪をひいた時、何科を受診しますか?
子どもは小児科。
大人の方は内科に行く方もいれば、耳鼻咽喉科を受診する方もいるでしょう。
熱があるから内科、喉も痛むから耳鼻咽喉科など、患者側である程度見立てをしているわけです。
でも風邪ではない場合、「何科を受診したらいいだろう?」と迷うことは多々あります。
患者自身が最初に診療科を選ばなければならないのが現状です。
でも、そもそも病名や原因や対応が分からないから医療に相談するのではないでしょうか。
問題になること
特に症状が複数の領域にまたがる人の場合、
何科に行けばいいのか分からない
最初に受診した診療科で原因が分からない
別の診療科を紹介される
また別の医療機関を探す
ということが起こります。医療費や検査費用、日数がかさみます。
結果として、患者が診療所や病院を転々とすることになります。
つまり、
患者が医療を受ける前に、自分で医療の道筋を組み立てなければならない。
という問題があります。
これは「医者ガチャ」という問題にもつながります。
どの医師に最初に当たったかによって、その後につながる医療が変わってしまうからです。
どの診療科を受診するか、どの医者に当たるか、その医者は見立てはどれくらいできるか、どのくらいつながりがあるか。患者にとっては「医者ガチャ」となります。
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2.「かかりつけ医を作りましょう」だけでは足りない
厚生労働省は「かかりつけ医」を持つことを推奨しています。
「かかりつけ医」とは、健康に関することをなんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。と、厚生労働省や日本医師会のウェブサイトに記載があります。
しかし、「まず、かかりつけ医に相談してください」と言われても、患者側には疑問が残ります。
どこまで診てもらえるのか
何を診てもらえるのか
検査はできるのか
どこまで検査できるのか
何科につないでくれるのか
専門医への紹介を判断できるのか
その判断に必要な情報を持っているのか
ということです。
だから、「かかりつけ医を作りましょう」だけではなく、「かかりつけ医が何を担うのか」を明確にする必要があると思うのです。
病院によっては規模や診療範囲は異なります。現状、患者はウェブサイトなどで確認するくらいしかできません。
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3.「かかりつけ医」は何を勉強するのか
さらに大きな疑問があります。
「総合的に診ます」と言っても、どこまで気づいてもらえるかということ。
すべての診療科について専門医と同じ深さの知識を持つ必要はありません。
しかし、
幅広い領域を見渡す力
複数の症状を一人の患者として捉える力
必要な検査を判断する力
可能性を見立てる力
専門医につなぐべき状態を判断する力
自分の専門外であることを判断する力
適切な専門家へつなぐ力
は必要なのではないかと思うのです。
つまり、専門医ほど深くなくてもいい。けれど、専門医につなぐための「広さ」は必要なのではないか。
ということです。
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4.「検査」につながる仕組み
診察だけでは分からないこともあります。
だから、必要な検査を受けられるところへ、きちんとつながる仕組みが必要になります。
「検査できません」で終わるのではなく、
どんな検査が必要なのか
どこで受けられるのか
どの専門医につなげるべきなのか
まで考えることが、かかりつけ医の役割の一部なのではないでしょうか。
ここでも、どの医師に当たったかで検査や専門医への道が変わるという「医者ガチャ」の問題につながります。
現状、いろんな病院やドクターを巡り巡って、何軒目かで病気が発見されることはよくあります。早く発見されていれば、こんなに悪化することはなかったかもしれない……と思うのは患者側です。
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5.医師のコミュニケーション能力
医師に必要なのは、医学知識だけなのでしょうか。
患者の話を聞き、
症状を整理する
患者の疑問を理解する
必要な情報を引き出す
分かる言葉で説明する
患者と一緒に次の選択肢を考える
という力も必要ではないでしょうか。
そこで、
医師はコミュニケーション能力を磨いているのか?
という問いが出てきます。
患者は弱っています。不安な状態です。
そんな時に、患者に自分自身のことを話してもらうには、相当のコミュニケーション能力が必要ですが、あまりそこが問われていない気がします。威厳ばかりが強い医者はただ怖いだけです。
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6.医者と患者は対等になれないと、今の問題は解決しない
これは「患者も医師と同じ医学知識を持つべき」という意味ではありません。
医療者は、医学の専門家。
患者は、自分自身の専門家。
患者には、
自分の身体の変化
症状の経過
日常生活への影響
自分が感じているつらさ
これまでの経験
を知っているという、医師には持てない情報があります。
また患者の訴えで、病気の新たな側面が見えてくることもあります。
だから、医学の専門家である医師と、自分自身の専門家である患者が、対話しながら医療を作るという関係が必要になります。
「医者が正解を知っていて、患者はそれを受け取るだけ」という関係ではなく、医師と患者がそれぞれの専門性を持っているという考え方です。
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7.「準医療機関」という発想
ここで、医療機関に行く前の問題が出てきます。
患者には、
「病院に行くほどなのか分からない」
「何科に行けばいいのか分からない」
「この症状は様子を見ていいのか相談したい」
という段階があります。
しかし現在、この「医療機関にかかる前」の受け皿が弱いです。
そこで、
「医療の手前」と「医療」の間に、もう一つ層を作ってもいいのではないか。
という「準医療機関」の発想です。
ただし、ここは診断や治療をする場所ではありません。
役割として考えられるもの
症状を聞く
受診の必要性を一緒に考える
何科が適切か考える
どの程度急ぐべきか考える
日常生活でできることを案内する
必要なら医療機関につなぐ
医療機関から戻ってきた人の相談を受ける
つまり、
患者が診療科を当てるのではなく、相談を入口にして適切な医療へつなぐことです。
現在も医療を受ける前の相談機関はありますが、相談先によっては、最終的に「心配であれば受診してください」という案内にとどまることもよくあります。
一方で、国は医療機関の負担を減らすためセルフメディケーションも推奨しています。市販の薬で様子を見ることも必要かもしれません。
ドラッグストアで相談するのは少し敷居が高かったり、薬剤師が常駐しているとは限りません。
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8.「病院に行くこと=常に正しい」ではない
病院はもちろん必要です。
ただし、病院には病気の人が集まっています。そして体力や免疫力が落ちている人も集まります。
だから、必要のない対面受診を減らすことは、単に医療費を減らすためだけではなく、患者自身を感染リスクから守ることにもつながります。
例えば家族が発熱や感染症のような症状になった場合、
本当に対面診療が必要なのか
オンライン診療で対応できないか
訪問診療・往診が適切ではないか
薬の受け取りまで自宅で完結できないか
家族への感染をどう防ぐか
という選択肢があります。
軽症の風邪などは受診せずに自宅でゆっくり休むという選択肢もあります。
感染症などでは早めの受診が必要になる場合もあります。
インフルエンザなどでも、タミフルなどの抗インフルエンザ薬が処方されます。
一方で、その効果については、発症期間をどの程度短縮するのかなど、さまざまな研究や議論があります。
だからこそ、「薬があるから病院へ行く」という一方向ではなく、
「今の自分は受診が必要なのか」
「自宅で様子を見てもよいのか」
「どのような症状が出たら受診すべきなのか」
を判断できる情報と相談先が必要なのです。
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9.オンライン診療・訪問診療という選択肢
対面受診だけが医療ではありません。
オンライン診療・訪問診療を適切に使えば、
感染リスクを減らす
医療機関の混雑を減らす
医療者の負担を減らす
救急医療を本当に必要な人に使ってもらう
医療費や医療資源を適切に使う
子どもがいる家庭の負担やリスクを減らす
感染拡大予防
にもつながります。
つまり、オンライン診療・訪問診療は、患者のためだけではなく、医療システム全体のためでもあります。
また、精神科や認知症患者などの訪問診療も良い点があります。生活を見ることでわかることもたくさんあるからです。
病院を中心に考えるのではなく、医療そのものを患者中心に組み直すことはできないでしょうか。
では、この『医者ガチャ』を仕組みで解決するにはどうすればいいのか。後編では病院の外側も含めた新しい医療の形を考えます。
