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医療の矛盾〜医者ガチャにならないために(後編)


前編では患者が診療科を選ばなければいけない矛盾などを書きましたが、後編ではこの『医者ガチャ』を仕組みで解決するにはどうすればいいかを書いていきます。

10.予防・リハビリ・セルフケアも医療の一部として考える

現代の医療問題は、病院の中だけを考えていては解決しません。

医療を、「病気になった人を医療機関で治す仕組み」だけとして考えると、

患者が増える

医療機関が混む

医師・看護師が足りなくなる

救急が逼迫する

医療費も増える


という構造から抜けにくいです。
だから、病院に来る前に何ができるかを考える必要があります。

そこには、

  • 予防

  • セルフケア

  • 相談

  • 地域支援

  • リハビリ

  • ピアサポート

  • 適切な受診判断

なども含まれます。

また我々は新型コロナウイルスの流行によって、さまざまな経験をしました。
新型コロナウイルスに限らず、健康情報や医療情報は常にアップデートしています。
またワクチンに対しても様々な考え方、意見があります。
そしてその情報源には不確かなものやフェイクも含まれます。
そのためには日頃から健全な健康情報、医療情報にアクセスしておくことも大切です。


11.患者側の意識の変化も必要

病気をしたら病院に行って薬をもらう。それで安心。

そういった意識はかなり根強くあると思います。

症状が続くのは不安です。

そして何かのためにとなるべく大きい病院にかかるといった意識もありました。

それが大学病院などの大型病院の混雑につながります。

最近は、紹介状なしで大きな病院を受診すると、一定の医療機関では高い選定療養費がかかるようになりましたので、昔ほどではないと思いますが、病院や薬に頼りすぎてしまっているところもあるかもしれません。

病院や薬だけを頼りにするあたりの意識も少しずつ変えていく必要があるかもしれません。


また、通院を「いつまで続けるのか」という引き際についても考える必要があります。
例えば整骨院などの混雑を考えても、必要な治療とセルフケアやリハビリへの移行について、まだ改善の余地があるのかもしれません。


医療やシステムにも課題はありますが、医療を受ける側である地域住民にも、課題があるように思えます。

そのために何が必要かを考えることも大切かもしれません。



12.「これからの医療」は、病院中心から患者中心へ

ここまでの話をつなげると、医療の形そのものを変える必要が見えてきます。

現在は、

症状が出る

患者が診療科を選ぶ

医療機関を探す

受診する

必要なら別の医療機関を探す


という流れになりやすいです。

これを、

相談する

必要な医療を整理する

オンライン診療・訪問診療・診療所・検査施設・病院を使い分ける

必要なところへつながる

必要に応じてリハビリ・地域支援につながる

という形にしていくことはできないでしょうか。

そして、その中心にいるのは、

患者です。



13.「包括」「連携」「ネットワーク」という言葉を考える

地域医療構想などには、「包括」「連携」「ネットワーク」という言葉がたくさん出てきます。

例えば、

  • 地域包括ケア

  • 包括的支援

  • 医療・介護・福祉の連携

  • ネットワーク

  • インクルーシブ

  • つながる

といった言葉です。

どれも、医療や介護、福祉などがつながり、患者を支えるという、とても大切な考え方だと思います。

でも、

言葉が包括的だからといって、仕組みまで包括的に考えられているとは限りません。

包括」という言葉を見たとき、本当に包括されているのか。

連携」と書いてあったら、本当に連携できる仕組みになっているのか。

ネットワーク」と書いてあったら、本当に必要なところにつながるのか。

そこを考える必要があるのではないでしょうか。



14.「ネットワーク」と呼ぶなら、どうつながるのか

本当のネットワークを作るのであれば、

  • 誰と誰がつながるのか

  • 何を共有するのか

  • 誰が情報を持つのか

  • どのタイミングで共有するのか

  • どのような方法で共有するのか

  • 誰が次につなぐのか

  • つながらなかった場合、誰が責任を持つのか

まで考える必要があります。

「つながっています」と言うだけでは、ネットワークとは言えません。

誰と誰が、何を、いつ、どのような方法で共有するのか。

そこまで設計されて初めて、

「つながる」

ということになるのではないでしょうか。

例えば、

医療

介護

福祉

地域支援

予防

リハビリ

オンライン診療

訪問診療

訪問看護

相談

と、それぞれの機能を並べただけでは、ネットワークにはなりません。

患者がその間をどう移動するのか。

マイナ保険証による情報共有も進んでいますが、それは医療情報の一部のみです。

どこで相談し、誰が判断し、次にどこへつなぐのか。

そこまで決まって初めて、患者にとっての「ネットワーク」になるのだと思います。



15.本当に「包括」されているのか

さらに難しいのは、実際に人と人がつながるときです。

例えば、ヘルパーさんと医師が患者について情報を共有するとします。

ヘルパーさんと医師では、見ているものが違います。

生活の中で患者を見ている人と、医学的な視点から患者を診ている人では、

  • 視点

  • 観点

  • 疑問点

  • 必要としている情報

  • 使用する言葉

  • 専門用語

も違います。

だから、単純に「情報を共有するシステム」を作れば、それで連携できるわけではありません。

重要なのは、患者を中心にして、

どのような情報を、どのような言葉やツールで共有し、それを患者の治療や生活の改善につなげるのか。

ということです。

さらに、医療の現場には、

「医師には逆らいにくい」

という風潮もあります。

医師、看護師、保健師、ケアマネジャー、ソーシャルワーカー、ヘルパー、ピアスタッフなど、それぞれが専門性を持っていても、上下関係が強かったり、専門性だけを主張したり、立場の強い人の意見に合わせたりしてしまえば、本当の意味での情報共有はできません。

つながるためには、それぞれが自分の専門性を持ちながら、相手の専門性も尊重する、謙虚な体制が必要です。

そして、その中心にいるのは患者です。

患者を中心に、

「自分たちは何ができるのか」

「相手は何を知っているのか」

「自分たちが持っていない情報は何なのか」

を、それぞれが考える必要があります。

包括インクルーシブ連携ネットワーク

こうした言葉や構想図を作って、それで満足してはいけないと思います。

本当につながるためには、

誰がつなぐのか。
どのような情報を、どのような言葉やツールで共有するのか。
そして、つながらなかったときに、誰がその人を支えるのか。
何が障壁になるのか。
どこでつながらなくなるのか。

そこまで考えなければ、本当の意味での「包括」にはならないのではないでしょうか。



16.本当に必要なのは「つながっている医療」

これからの医療に必要なのは、

「病院を増やすこと」だけでも、

「かかりつけ医を作ること」だけでもありません。

必要なのは、

患者を中心に、それぞれの機能がつながること。

例えば、

健康情報

予防・備え

相談窓口

かかりつけ医

検査可能な医療機関

専門医

オンライン診療・訪問診療

リハビリ・地域支援

ピアサポート


というように、

必要な場所へ必要なときにつながる。

そして、その「つなぐ役割」が誰なのかも明確にすることです。



17.「医者ガチャ」をなくすために

ここで初めて「医者ガチャ」という言葉が全体につながります。

医者ガチャとは、単純に「良い医者・悪い医者」という話ではありません。

問題は、どの医師に当たったかによって、その後の医療への道筋が変わってしまうことです。

だから必要なのは、

「良い医師を増やしましょう」

だけではなく、

むしろ、

どの医師に最初に当たったとしても、患者が必要な医療につながりやすい仕組みを作ること。

それが必要なのではないでしょうか。



18.目指す医療の姿

最終的には、

患者が診療科を当てる医療

から、

患者の症状を入口に、必要な医療へつなぐ医療

へ。

病院中心の医療

から、

患者中心の医療

へ。

包括」と書いてある机上の空論

から、

本当に包括され、実際につながる地域

へ。

そして、

医師個人の力量や相性に左右される医療から、
仕組みによって必要な医療へつながれる医療へ。


医者ガチャで振り回される患者が一人でも減る地域にしないといけません。

医療政策となると難しい話と思うかもしれませんが、それで患者の暮らしが変わります。

地域のひとりとして、医療政策にも関心を持ち、パブリックコメントが募っていれば、意見を出してみる。そんなことから変えられる一歩になると思います。

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