羽のない天使 epi-28
〜目覚めの夜〜
莉子は長い眠りからゆっくりと目を覚ます。
視界に飛び込んできたのは隼人の顔。
「急がなければ! 地球が危ない!」
莉子は重たい身体を必死に起こす。
「莉子!落ち着け!」トゥルガンが制した。
「信じてた‥‥」カレンは涙を流し、
「よかった‥‥」とソフィアは胸を撫で下ろす。
ミアは抱きつき、声を上げて泣いていた。
アレハンドロと隼人は安堵の笑みを浮かべ、静かに言った。
「おかえり」
「とりあえず、飯だな! 酒だ酒!」トゥルガンが叫ぶと、
「戦いの前の宴か」アレハンドロが笑った。
その夜、彼らは温かな灯りの下で、久しぶりに笑い合った。
迫り来る戦いを前に――確かな“仲間”である
ことを感じながら。

〜作戦会議〜
ランプの明かりが食卓を照らし、湯気と香りが漂う中、仲間たちの笑い声が一息ついたころ。
莉子はみんなを前に、少しバツが悪そうに語り出した。「闇界で、レグルスをみたの。
彼はね、悲しみに囚われて、怒りと絶望に飲まれてて‥‥でも、リリアが彼に光を示してくれて。
それで‥なんか‥うーん‥‥ややこしいことになってないといいんだけど‥‥ははは😓」
「えっ?なに?」アレハンドロが眉をひそめる。
「まさか‥‥💖」カレンが身を乗り出した。
莉子は苦笑いして肩をすくめた。
「その‥‥レグルス、リリアに一目惚れしたかも」
「えぇーーーッ!?😱」
全員の声がそろった。
「んー‥‥なんだかね、いい雰囲気だったのよねー」莉子は困ったように笑う。
トゥルガンが頭をかきながら豪快に笑った。
「まぁ、愛に目覚めたってことはいいことだよな! でも隼人、もたもたしてると莉子をレグルスにとられるぞ!」
「なっ‥‥!」隼人は思わず赤面した。
「禁断の恋の方が燃えるかもね〜」ミアが茶化すように口を挟む。
莉子は慌てて手を振った。
「ちょ、ちょっと!やめてよ!💦
隼人とは、いい友達!親友!いや親友以上に信頼してる家族みたいなもんなの!
わたしにとって、大切な人なんだから〜茶化さないで!」
そう言って隼人を見て、にっこり笑う。
隼人はますます赤くなり、言葉を失った。
アレハンドロが真剣に頷く。
「愛は光より強し、だ」
カレンはうっとりした表情で手を組んだ。
「なんか、ロマンチックよね💕」
ソフィアは静かに呟いた。
「結ばれない恋‥‥切ないものね」
ミアは目を輝かせて身を乗り出す。
「わぁ✨なんだか羨ましいかも!」
隼人だけは真顔で眉をひそめた。
「‥‥莉子には手を出してないよな?」
莉子「いや全然。むしろ魂ごと消されそうだったし」
隼人「なにぃ!? やっぱり一振り斬っとけばよかった!!」
莉子「待って待って!💦 今ここで殺意高めるのやめて!」
「「「ぎゃはははは!」」」
その場に爆笑が起きた。
その夜は、部屋いっぱいに笑い声が響いていた。
――しかし笑いの奥で、誰もがレグルスの心に芽生えた“光”を意識していた。

「で、これからどうする?」
皆は真剣に耳を傾けた。
隼人が小さくうなずき、トゥルガンが腕を組む。
「どこから始めるんだ?」アレハンドロも言った。
すると、カレンが窓の外に浮かぶ月を見つめながら口を開いた。
「クロノスに頼んで‥‥時を止める」
「そ、そんなことできるの?」ミアが息をのむ。
ソフィアは落ち着いた声で続けた。
「正確には‥‥私たち七人で力を合わせて、可能にするのです」
カレンはうなずき、さらに言葉を重ねた。
「そう。莉子についている“魔女の神”に魔法神を顕現させてもらう。その魔法陣に、私たちの光を下ろすの」
「そしてさらに――」隼人が低く言う。
「莉子を守護する陰陽師の力で、陰と陽の均衡を整えながら‥‥」
莉子は自分の胸に手を当てた。
「わたしの中の“リリア”の光を放つのね」
「そう」カレンが微笑む。
「リリアの光を呼ぶ前に、私たち六人が“光の鍵”を魔法神に下ろす。その鍵が揃ったとき、道が開かれる」
ミアは不安げに首を振る。
「本当に、うまくいくのかしら」
「やるしかない」トゥルガンが即答する。
「地球全体を光で包む‥‥それが目的だ」アレハンドロの瞳は燃えていた。
隼人が補足する。
「その時、神界からも光が降りてくるはずだ。外側からと内側から、光を同時に放つ。そうすれば――」
カレンが厳かに告げた。
「一時だけど、地球の自転が止まる。その一瞬を耐え抜き、“光の鍵”を繋ぎ続けることができれば‥‥闇は浄化される」
ソフィア
「魔法神を降ろすには、地球に残された“神々の門”へ行かなければならないわ」
隼人
「神々の門?」
ソフィア
「ギリシャにある古代神殿跡‥‥今は廃墟となっているけれど、かつては神と人をつなぐ祭壇だった」
カレン
「そこでなら、リリアの光と、私たちの光の鍵を結び合わせられる」
ソフィア
「神々に知られず、しかし確かに存在した祭壇があるの。人の歴史からは消されてしまったけれど、大地は覚えている」
隼人
「どこに?」
ソフィア
「ピンドスの山奥。険しい峡谷の奥に、崩れかけた円柱と祭壇だけが残っている‥‥そこが“魔法神”を降ろせる唯一の場所」
カレン
「失われた神殿‥‥いいわね。表の歴史には存在しない、隠された場所こそふさわしい」
沈黙のあと、アレハンドロが力強く叫んだ。
「よし! やろう! 俺たちならできる!」
ソフィアは大地を見下ろし、静かにうなずいた。
「では‥‥魔法神を呼び出す場所へ。出発しましょう」
〜雨音の告白〜
作戦会議のあと――。
夜風が心地よく吹く中、カレンと莉子は外に出て、星を仰いでいた。
「ほんとはどぅなの? 隼人のこと、ほんとに友達?」
カレンの問いに、莉子は小さく息を吐いた。
「わからないの‥‥。好き‥‥だよ。
でも、これが“恋”なのかは、わからないの」
カレンは優しく微笑み、莉子を抱き寄せた。
「帰ってきてくれて、ありがとう‥‥莉子」
「やだぁ、涙が出ちゃうよ〜。また泣いちゃう」
そう言って笑い合う二人。
そのとき、部屋の中から元気な声が響いた。
「おーい!風邪ひくよ〜!もう一回飲みなおし〜!みんなでゲームしよー!」
ミアが身を乗り出して手を振っている。
「はーい!」
カレンと莉子は顔を見合わせて笑い、明るい部屋へと戻っていった。
――その一方で、ソフィアとアレハンドロはいつの間にか二人きりで飲んでいる。
穏やかに視線を交わす様子は、すでに恋仲そのものだった。
やがて、それぞれが明日のために部屋へ戻る時間となった。
莉子はバルコニーに出て、冷えた空気で酔いをさましていた。
ふと気づくと、隼人が黙って隣に立っていた。
「なんだか‥‥いろんなことがありすぎて‥‥」
莉子は夜空を見上げ、かすかに笑った。
「平和が恋しいよ‥‥」
「莉子‥‥」
隼人は堪えきれず、彼女を抱き寄せた。
「どうしたの‥?」
隼人は震える声で、押し殺していた想いを吐き出す。
「莉子、ずっと前から‥‥好きだ。
好きで、好きで、仕方ないくらい‥‥。
このまま目を覚まさなかったら、どうしようって‥思ったんだ!」
莉子は驚いた顔をして、それから微笑んだ。
「私も好きだよ〜隼人‥‥。そして、ちゃんと帰ってきた。大丈夫よ‥‥私はリリアの魂なんだからね〜」
「莉子、違うんだ‥‥」
「ん‥‥‥?」
莉子が隼人を見つめる。
次の瞬間、隼人は彼女をぐっと抱き寄せ、唇を重ねた。

ちょうどその時、静かに夜の雨が降り出した。
しとしとと降る雨音に包まれながら――。
隼人は、抑えきれなかった想いを、莉子に抱きしめて伝えていた。
名もなき深淵 ―アビス―
この世界には、善と悪がある。
闇王の封印によって監視の目を逃れていた
“最悪の悪” が蠢きはじめていた。
それは、形を持たぬ深淵そのもの。
名を アビス。
「レグルス‥‥おまえが迷い、光に心を奪われたその時こそ、我が解放の刻」
歪んだ声が、闇の深淵に響き渡る。
最悪の悪は狙っていた。
地球を救うために集った“7人の異能者”を、ひとり残らず呑み込み、世界を闇で覆い尽くすために。

いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援をお願いいたします。いただいたチップは、これからの創作や活動の大切な支えにさせていただきます