損することばかり考えていたら、動けなくなっていた ― 脳の癖と暮らしている② ―
何か新しい話が出ると、損を計算してしまう
何か新しい話が出ると、
私は無意識に計算を始めてしまう。
時間を失わないか。
お金を無駄にしないか。
途中で投げ出して、後悔しないか。
失敗して、恥をかかないか。
それは慎重というより、
損をしないように生きようとする癖だった。
暮らしの中で身についた「損しない思考」
主婦になってから、
損しない選択をする場面は、確実に増えた。
家計。
子どものこと。
人付き合い。
一度の失敗が、
そのまま生活に響くこともある。
だから私は、
できるだけ安全で、
損の少ない道を選んできた。
それは、
間違いじゃなかったと思っている。
でも、損を避けるほど動けなくなる
ただ、ある時から
違和感が出てきた。
損しないかどうかを考えれば考えるほど、
動けなくなっていく。
やらなかった場合の安心感はすぐ浮かぶのに、
やった場合の楽しさは、なかなか想像できない。
頭の中に並ぶのは、
失敗したときの場面ばかり。
やる前から、
「やめておく理由」だけが、どんどん整っていく。
失敗の想像だけが、やけに具体的になる
うまくいったときの未来は、ぼんやりしているのに、
うまくいかなかったときのことだけは、
妙にリアルに浮かぶ。
時間を無駄にしたらどうしよう。
お金を使って後悔したらどうしよう。
人にどう思われるだろう。
その結果、
結局、何も始まらない。
慎重なのではなく、守ろうとしていただけ
私はずっと、
自分は慎重な性格なんだと思っていた。
臆病なのかもしれない、とも思っていた。
でも、
どうやらそれは性格ではなく、
脳の癖らしい。
脳は、
「得をする喜び」よりも、
「損をする痛み」を大きく見積もる。
新しいことは、
成功の可能性よりも、
危険として扱われやすい。
私が弱いわけでも、
意志が足りないわけでもなかった。
ただ、
一生懸命、守ろうとしていただけだった。
損を避ける自分を、否定しない
そう気づいてから、
私は考え方を少し変えるようになった。
損を避けようとする自分を、
無理にやめさせない。
でも、
その声だけで決めない。
「全部の損を避けなくてもいい」
そう思う練習をするようになった。
半分くらい損でも、暮らしは壊れない
半分くらい損をしてもいい。
うまくいかなくても、
生活が壊れない範囲ならいい。
経験として残るなら、
それはもう“損”じゃない。
そう思えるようになってから、
少しだけ、体が動くようになった。
損を引き受けた選択が、後から効くこともある
損を引き受ける選択は、
後から別の形で効いてくることがある。
それは数字にはならないし、
説明もしづらい。
でも、
確かに自分の中に残る。
ここからは
ここからは、
この「損を避けすぎる癖」と、
私がどう折り合いをつけているかについて書いています。
克服の話ではありません。
前向きになれた話でもありません。
ただ、
動けなくなる自分を責めずに、
一歩出るために選んでいる考え方の話です。
それでも私は、損を引き受ける日がある
それでも私は、
損を引き受ける選択をする日がある。
今でも、計算はする。
損か得かも、考える。
でも最後に、
こう問い直すようになった。
「これは、やらなかったら後悔しない?」
「失敗しても、何かは残らない?」
損を引き受けるには、覚悟より余白がいる
損を引き受ける選択は、
少し怖い。
時間を失うかもしれないし、
思った成果が出ないかもしれない。
でも、
何も起きないまま時間が過ぎるより、
少し揺れたほうが、私は楽だった。
正解じゃなくても、「自分で選んだ」は残る
損を避けることだけを基準にしていた頃より、
自分の感覚を信じられるようになった気がする。
損を引き受けた選択は、
必ずしも正解じゃない。
でも、
自分で選んだという感覚は残る。
それだけで、
次の一歩に繋がることがある。
損を怖がる私と、これからも暮らしていく
損を怖がって、動けなくなる私と、
これからも一緒に暮らしていく。
無理に変えなくてもいい。
なくさなくてもいい。
ただ、
少し距離を取れたら、それでいい。
※次回は
「難しいことは、だいたい後回しになる」
考えるのが面倒で止まる話です。
今日のハーブティー
今日のハーブティーは、
レモンバームにしました。
新しい話が出たとき、
頭の中で自然に計算が始まる日には、
少し思考の音量を下げたくなります。
レモンバームは、
「大丈夫だよ」と強く言うお茶ではありません。
「急がなくていいよ」と、
静かに間をつくってくれる感じがします。
損をしないように考えることも、
失敗を避けようとすることも、
どちらも暮らしの中で身についた、大事な癖。
今日のハーブティーは、
その癖を無理に変えるためではなく、
一度、横に置いてみるための一杯です。
計算し続けて疲れた頭に、
少しだけ余白をつくる時間。
#40代主婦 #エッセイ #生き方 #脳の癖と暮らしている #途中経過の話 #損するのが怖い #考えすぎる #一歩が出ない
ここまで読んだあとに、
もう少しだけ言葉のそばにいたいときのために、
続きの置き場所を残しておきます。
この連載を、はじめから眺める
ひとつ前の話に戻る
別の場所にある、少し近い話
この連載を、少し整えて一冊にしました。
続きを読むような気持ちで、置いておきます。
『脳の癖と暮らしている』(Amazon)
いいなと思ったら応援しよう!
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
もし「少し考えるきっかけになった」と感じてもらえたら、
サポートという形で応援していただけると嬉しいです。
次の記事を書く力になります。