【愛縁奇縁/神代編】第四話:遠ざかる笑顔の残響
凄まじい轟音が響いた、次の瞬間。
白の身体は真一文字に切り裂かれ、鮮血が雨のように散った。
地面に落ちた亡骸は、無造作に転がっている。
「っ!!」
「嘘やろ……そんな、……っ!!」
その光景に黑は絶句し、白哉の瞳は絶望に染まった。
震える手が宙を掴んでいる。
如月の結界が一瞬揺らぎ、彼女は声を失い膝をつく。
志輝も剣を握ったまま動きを止め、息を呑む。
華の両手が震え、玄は言葉を失う。
戦場を包むのは、仲間たちの絶望と混乱。
……――――そして。
「はは……あははははは! 見たか!
我々に歯向かうからこうなる!」
「愚かモノめ……これが、秩序に逆らった報いだ!」
元老院は、一斉に笑い出す。嗤いは風に乗り、耳を打った。
「次は誰だ? その娘の後を追う者は、前へ出ろ!
引導を渡してやる!!」
「抵抗など無駄だ! ……幽世は、我らの掌の内にあるのだからな!」
仲間たちの悲嘆を元老院の嘲笑が掻き消す。
血に濡れた大地は、嘲笑の余韻に支配されていた。
椥は動かない。ただ虚空を見つめるように立ち尽くしている。
血に濡れた大地、白の無残な亡骸――全ての音が遠のき。
彼の耳にはただ「静寂」だけが満ちていた。
胸の奥で何かが崩れ落ちる。
規律、誇り、使命……全てを支えていた柱が音を立てて折れた。
「っ……ぁ、…………」
喉が乾ききったように、その声は掠れている。
だが、すぐに絶叫へと変わった。
「……――――ああああああああああああ!!!」
瞬間、黒き嵐が戦場を吹き荒れる。
椥の身体がひび割れ、時の流れが狂い出す。
それを見ていた元老院たちの顔色が変わる。
「なっ……これは……!」
「歪みだ!!」
椥の目は紅く濁り、もはや理性は残っていない。
一歩踏み込むごとに大地が砕け、空が軋む。
時の奔流が渦を巻き、触れたものをことごとく切り裂いた。
「全て、……断ち切る……」
その呟きは、もはや神のものに非ず。正しく、災厄そのものの咆哮。
白を喪った椥の力は暴走し、戦場を新たな地獄へ変えようとしていた。
……――――全てが混乱の中。
天羅はただ黙って歩み出た。椥の様子を気にも留めず。
敵にも味方にも視線を向けぬまま白の亡骸へ近づいてゆく。
細い指先が震えながら伸びる。
その指は触れられそうで、まだ届かない。
天羅の脳裏に、かつての温かな光景が蘇る。
白が、笑顔でこちらを見上げ……
『物ちゃん!』
そう、呼んでくれた日の声が脳内に木霊する。
嗤い声、嘆きの叫び、怒りの咆哮……――――音が満ちる戦場で、
天羅だけが沈黙していた。
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