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【愛縁奇縁/神代編】第二話:砂塵に溶ける双影

 空は裂け、黒雲が渦を巻いて月を覆った。

 風は狂ったように吹き荒れ、砂塵と血の匂いを戦場に叩きつける。
 地の底からは唸るような地鳴りが響き、
 大地そのものが呻いているかのようだった。
 椥の刃は時の流れを裂いて、宿儺の金棒は大地を粉砕する。
 元老院の結界は崩壊寸前に見えた。

 だが、その刹那。

「……今だ。封じよ!」

 呪符が一斉に閃き、光の鎖が天を貫く。
 宿儺の振るった金棒の隙を突き、四本の腕ごと絡め取り巨体を縛る。

 同時に椥の足元を鎖が這い上がった。
 瞬く間に四肢を締め上げる。

「ぐ……っ!」

 そのまま膝をつく。
 椥の身体は地面に縫いつけられるように拘束され、
 抗えば抗うほど魂を削られる。
 宿儺も咆哮し、四本の腕で鎖を引き千切ろうと藻掻く。
 黒い蒸気を吹き上げるが、
 鎖は焼け焦げながらも食い込み身を灼きつけて離さない。

「……ぬかったな」

 元老院の一人が薄ら笑いを浮かべる。

 その背後には、瀕死の物部天羅が引き立てられていた。
 両腕は血に濡れ、呼吸は浅い。
 だが、消えかけの瞳だけは今なお光を宿している。
 元老院の一人が、冷ややかに刃を構えた。

 そして、椥と宿儺へ吐き捨てるように告げる。

「反逆者の末路を教えてやる……まずは、この女からだ」

 刃が振り下ろされようとした、瞬間。

「待て!」

 澄んだ声が戦場を裂き、白が物部と元老院の間に立っていた。
 突然に姿を現した白に対し、さすがの元老院も困惑し、たじろぐ。

 小柄な身体に宿る気迫は、誰よりも鋭く強い。

「……それ以上は、許さない」

 白の瞳が銀光を帯び、刃を振り下ろそうとした手を止める。

「砕け」

 白銀が椥と宿儺の鎖に触れると、
 黒炎が蛇のように絡みつき全て焼き切った。

 黒曜は静かに歩み寄ると、椥と宿儺の肩に手を置く。
 すると、柔らかな白い光が流れ込み、痛みに歪んでいた呼吸を和らげた。

「な、何だと……!」

 自由を取り戻した椥と宿儺が、荒い息を吐きながら立ち上がる。

「反逆者が!」
「幽世の理を破り、秩序を乱すか!」

 元老院の声が一斉に響く。呪符と印が再び空を覆い尽くした。

「全員、捕らえよ!」

 如月と華が同時に駆け出す。
 二人が掌を翳すと、結界が現れ、彼らを包んだ。

「ここは通さないから……!」
「もう、あなたたちの好きにはさせない!」

 結界が閃光を弾き返し、轟音と火花が散る。

「出でよ……屍の群れ」

 玄の声に応え、戦場に横たわっていた影が呻き声を上げ、立ち上がった。
 屍が術者たちを追い回し、混乱が広がる。

 志輝は舞うように刀を抜き、鎌を構える日夊と並び、呪弾を斬り払う。

「退かない……!」
「私も、微力ながら尽力させていただきます」

 そして前線を切り裂いたのは……黑と白哉。 
 視線を交わし、同時に力を解放する。

「おめぇらの好き勝手にゃ、させんばい!」
「覚悟せい!」


 足音が土を蹴り、舞い上がる砂塵の中を一直線に駆け抜ける。

▶次の話


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