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漫画家アシスタント物語 もう終わりで章 〈8〉 実は、まだ最終回の「中編」

 
《 写真上: 仕事の最終日に撮影した秋山プロ。アシスタントの仕事場風景。室内には、8つのデスクがありますが、今は一人しかスタッフがいません。そして、画面に写っているのは、ほとんどが古本と古資料、そしてゴミの山です。ホコリが酷いのでマスクをして仕事をしていました。2017年 》
        < この『もう終わりで章〈8〉』は、文庫本約8ページ分 >
 
 

「もう終わりで章」は、独立した「章」ですので、「古い話で章」の続きではありません。 無料で、各話、お楽しみいただけます!
 
ただし‥‥ 各話が連続していますので、
「もう終わりで章〈1〉」からお読みいただく方が、よろしいかと思います。
 
はじめての方は、
「マガジン:第1章、第2章」(無料)がお薦めです!

 
 
 
            その13 最終回( 中編 )

    《 漫画家アシスタントが・・・・師匠に質問する・・・・!? 》

 

「 最終回 」を書き始めたら・・・・

ちょっと長くなってしまったので・・・・・・今回を「 中編 」、次回が「 後編 」という形式にしたいと思います。

さて、本ブログの「 中編 」「 後編 」は、先生との最後の会話を中心に書かせていただきます。

2017年、6月いっぱいで退職する事になっていましたので、6月の終わり頃、連載中だった「 浮浪雲 」の仕事が一段落した時に、ジョージ先生の個室へお別れの挨拶に行きました。

仕事場の先輩Mさんからは「 なんだかやけに寂しくなるのぉ・・・・・ 」と言われましたが、私は、仕事( アシスタント業 )そのものが嫌いな人間ですので、仕事を辞める事は長期の夏休みでももらえるようなウキウキ感でいっぱいでした・・・・・・

そのため、先輩にはあっさりした対応しかできませんでした。( しんみりしている先輩には申し訳ありませんでした )
 
 

自分のデスクから貴重品だけまとめて紙袋へ納め( ほとんどの私物はゴミ同然ですので残しておきました )、帰り支度だけしておいてからジョージ先生の部屋へ向かいます・・・・・・・。

先生とは最後の対話になりますが・・・・・・・・・・緊張の度合いはいつもとまったく同じ。( 勤続39年間、ずっと緊張しているわけです )

いつもと同じ‥‥ デスクに向かう先生の背後から静かに・・・・・・・・・・

・・・・・・と、思ったら先生は仕事が終わったので、自分のソファーにかけて個室の入口に立つ私をジッと見ている!

私は先生にうながされて、正面のソファへ‥‥‥‥

「 先生、長い間お世話になりました 」

「 う・・・・ 」

「 どうも、ありがとうございました 」

「 ま、おめぃ~はよく勤めてくれたよなぁ 」

「 い・・・・・いえ、そんな・・・・ 」

「 ほんとだよ、よく勤めてくれたよ 」

担当編集員が完成原稿を取りに来るまで、少し時間があったので、二人だけで喋る機会を得ました・・・・・・・・

私は、「 退職の挨拶 」しか頭にはなかったのですが・・・・ ふと思いついたある質問をしてみました・・・・・・・・・・
 
 

先生の個室、左のソファと、右のソファが、全然見えないほどゴミが溜まっている。

 
 

「 先生は、若い頃‥‥ デビューする前に誰か漫画家で憧れるような人っていたのですか? 」

「 俺ぃは、いなかったね 」

「 こんな漫画家になりたいとか、尊敬する漫画家とかは? 」

「 そんなのは、なかったね 」

ジョージ先生は以前から漫画家を軽蔑している節がありました・・・・ その理由は、簡単で・・・・・・・・・

『 漫画家はバカだから 』

・・・・・というもの。

普通の漫画家志望者や関係者だったら、「 誰々が好き 」とか、「 〇〇先生を尊敬してます 」、なんて話にすぐなると思うのですが・・・・・・・・・・

ジョージ先生は、そういった人ではありません。

もう一度、書きますが・・・・・・・・・・

「 漫画家なんてバカばっかりなんだよ! 」

・・・・・とか

「 パーティーだの忘年会だのって、そんな事にエネルギー使ってる暇あるのかよ! 」

・・・・・・・・・・などという話を何度も聞かされた記憶があります。( もっとも、その『 バカばっかり 』にすら私はなれませんでしたが! )

先生の話は、自分が若かった頃( たぶん1970年前後 )の逸話へと移っていきます・・・・・

「 前に・・・・って随分前だけどよ、〇塚(呼び捨て)から電話がかかってきた事があってよ・・・・ 」

まだ、ジョージ先生が若い頃、デビューして連載を取り新進気鋭の漫画家として注目を集め出した頃(1966年前後)の事です・・・・・・

〇塚先生といえば、天才ギャグ漫画家として有名な大御所です。 逆らえる新人なんていないのですが・・・・ 20代の若いジョージ先生は・・・・

「 俺ぃに『 来い 』って言うんだよ 」

「 ・・・・え・・・・・〇塚先生から・・・・・・・ 」

「 断ったぜ、行かねぉ~よって! 」ガチャンと受話器を置く仕草で

「 ・・・・・・・・・ 」

「 俺を探ろうとしてたんだよ! それに『 来い 』だなんてよ~、誰が行くかいっ! 」

「 ・・・・・・・・・・・・・! 」

「 新人のよ、才能を探りたいんだよな・・・・ 〇上( まだ無名の新人だった )なんか呼びつけられて、ひでぇ目に合ってるんだぜぇ 」

〇上先生も当時は、新人のギャグ漫画家でしたが・・・・ その後、「 〇〇デカ 」( 1974~80年 )で超ブレークした鬼才です・・・・ ジョージ先生とは気が合うみたいです。

〇塚先生は、新進漫画家の〇上先生を呼んで、メチャクチャに批判したそうです。 すっかり落ち込んだ( そりゃそうです、大先生の〇塚先生からケチを付けられたんですから )〇上先生が酒場でジョージ先生に、その時の事情を打ち明けたわけです。

〇塚先生とジョージ先生は、若い頃にテレビ番組の撮影中にケンカしたりして、仲が悪いのです。当時、業界では二人の仕事場の住所をかけて「 中落合と下落合が喧嘩してる 」などと言われていたそうです。

そして、先生は少し微笑ながらつづけます‥‥

「 それからよ、手〇治〇( この先生は名前付き )からも電話があったよ 」

この手〇先生については・・・・・・・・・説明なんて不要ですね!

「 え~~っ あの手〇先生からですかぁ!? 」

「 ああ、『 一席設けさせていただけませんか 』ってな! 」

「 ・・・・・・おお~~っ 凄いですねっ! 」

手〇先生の話まで出てくるのか・・・・・・・ 話を聞きながら私はワクワクしてくる!( 最後の挨拶に来たのに‥‥ )

「 手〇先生には、会いに行かれたんですか!? 」

「 う・・・・・・・・ 」

ジョージ先生は、黙ってうなずく・・・・ そこは、高級料亭の一室‥‥‥

二人は、おちょこに熱燗を注ぎ合いながら‥‥

「 怖いんだいよな、新しい才能が・・・・・・・・・・ 」

手〇先生は、新人だったジョージ先生に色々な質問をぶつけて、その発想の源を探ろうとする・・・・ ちょっと焦りでもあったのだろうか・・・・・・・( 1970年前後の新しい漫画の台頭と、虫プロの経営問題など )

「 あんまり、色々訊くからよ・・・・ 言ったんだよ俺ぃは・・・・・・・ 」

ジョージ先生は真剣な表情を少し和らげながら・・・・・・・・

「 心配いりませんよ、先生は大丈夫ですよ・・・・ ってな! 」

「 ・・・・・・・・・・! 」

「 そしたらよ、嬉しそうに笑ってたよ 」

「 ・・・はは・・・・・・・・ 」

私も緊張感が溶けたように、乾いた感じの笑いが出る・・・・・・・・

「 手〇治〇は『 来い 』なんて言わねぃ~よ、『 一席設けます 』だぜ! 」

「 はぁ・・・・・・ 」

「 手〇治〇は、さすがだぜ 」

いつも「 漫画家なんてバカばっかり 」とけなしていたジョージ先生が、「 手〇治〇はさすがだぜ 」なんて褒めちゃったりして・・・・ ホントは、尊敬してる漫画家が何人もいるんだと思います。
 

もっとも、こうした話は真偽のほどは分かりません。 漫画家の話ですので、どの程度信じてい良いか・・・・ 私も実は、測りかねるところではあるのです・・・・・・・・
 

・・・・と、ここまでは・・・・ 「 序幕 」みたいなお話。

この後、ジョージ先生の最後の打ち込みに、私は、あっけなく吹き飛ばされます・・・・・・・・
 
 

先生は、深いため息でもするように・・・・ 最後の「 贈る言葉 」を私に投げかけます・・・・・・・・

「 おめぃ~はよ・・・・ 」

ゆっくりと、一つ息を吐きながら・・・・・・・・

「 おめぃ~は・・・・・・・・ 」

 
 
 
 
 
             「 もう終わりで章〈最終回〉」へつづく・・・・
                「もう終わりで章〈7〉」へもどる‥‥
                         「もくじ」 へ‥‥
 
 
 
 
 
 
 

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