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漫画家アシスタント物語 もう終わりで章 〈9〉 これで、ホントの最終回!

 
《 写真上: 私が現在、隠居暮らしをしているチェンマイの夕暮れです。私が住む借家の前でドイステープ山に沈む夕日を撮影しました。 2018年1月 》
        < この『もう終わりで章〈9〉』は、文庫本約10ページ分 >
 
 

「もう終わりで章」は、独立した「章」ですので、「古い話で章」の続きではありません。 無料で、各話、お楽しみいただけます!
 
ただし‥‥ 各話が連続していますので、
「もう終わりで章〈1〉」からお読みいただく方が、よろしいかと思います。
 
はじめての方は、
「マガジン:第1章、第2章」(無料)がお薦めです!

 

 
           その13 最終回( 後編 )

   《 漫画家アシスタントが・・・・退職金を受け取る・・・・!? 》

 
39年間、私がアシスタントをしたジョージ先生は73歳。

2017年6月末・・・・・・・・

その時、私は61歳。

老人が二人、ゴミ屋敷のような場所で猫背になって話し合っている・・・・

そんな不潔で陰気な部屋。 腐ったコーヒー缶と紙屑、山のような古雑誌と単行本、ホコリと老人臭・・・・・・・・・・

皆さんが想像される通りの、まさにそのまんまの姿こそ・・・・ ピッタリと現場の実相を表していると思います。

ジョージ先生は、退職する私に向けて最後の言葉を贈ってれるのですが・・・・・・・・

それは、私が想像もしない・・・・ まったく唐突な・・・・ 不可思議な言葉でした・・・・・・・・・・・・
 

「 おみぃ~はよ・・・・・・・・ 」

「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」

「 おみぃ~は・・・・・・天才にはなれなかったな 」

「 ・・・・・・・・? 」
 

私は、天才になりたいと話したり、天才一般についてジョージ先生と議論した事もありませんでした。

ですから、突然言われてたこの言葉を、どう解釈してよいのか・・・・・ 

一瞬、混乱したのです・・・・・・

・・・・・と、同時に、頭の中で不思議な事が起こりました・・・・・・・・・・・・・

「 おめぃ~は、天才になれなかったな 」

この言葉によって、記憶の封印がはじけ飛んだように・・・・・・・・

まるで、走馬燈のように・・・・・・・・過去の先生の言葉が頭を駆け巡りました!( ほんの数秒間のことです )
 

勤め始めてすぐの頃( 1978年秋 )、私が20歳の頃からやっていた同人誌の話をした時、先生が軽蔑するように吐き捨てた言葉・・・・・・・・

「 同人誌なんかやめろっ! 」

秋山プロに勤めて5,6年経った頃( 1983年頃 )に、私が職場の「 失業保険 」について質問した時には・・・・

「 サラリーマンみたいな事言うんじゃねぃ~っ! 」

多くの若手の漫画家が生まれては消えていく過酷な現状を話してくれた時、なるべき漫画家の姿を指し示すように・・・・・・・・

「 苦しくてよ‥‥ 泣きながら机に向かうような漫画家に‥‥ なりたくねぇ~だろ? 」

少年ジャンプで海洋物の漫画を連載している時に描いた、私のフニャフニャした描き文字( 効果音 )について、キッパリと・・・・

「 おめぃ~の字は死んでるんだよっ! 」

私が中学生の頃、私と母を捨てて芸者と逃げた私の父・・・・ その父の話を何気なくした時、私にさっき食べた昼飯の感想でも言うように・・・・

「 おめぃ~のオヤジはよぉ、腐れ外道なんだよ 」

私が13年前に池袋でタイ式マッサージ店を開こうとした時には・・・・

「 ど素人が店なんか出すんじゃねぃ~っ! 」

私がこのブログを始めている事を編集サイドから聞き知った時には・・・・

「 ブログなんかやめちめ~~っ! 」

大学で講師として、漫画を教えている事を聞いた時‥‥

「 なんで教えるんだ~~っ! 」

全ての言葉に、天才ではない私には、返答の仕様がありませんでした・・・・・・・・・・・・

それぞれは、違う時間、違う局面で言われている言葉ですが・・・・・・・・実は、同じ事を言っていたのです。

全ては、ただ一つ・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・余計な事をするな、天才性を呼び覚ませと!

・・・・・・・・・・・・・・・今すぐ悟れと!

・・・・・・・・・・・・・・・迷うなと!

天才か、凡人か、どちらか選べと!

今すぐ! 

実行しろ!
 
 
 

しかし、悲劇的なことに・・・・・・・・・ 優秀な人間とそうでない人間の間には、越えられない裂け目があるのです。

暗くて深い裂け目が・・・・・・・ 

私はその裂け目の前で立ち止まっておびえる‥‥ 振り返れば覗き込むような師匠の眼がある!

馬鹿には、優秀な人間が理解できないものです・・・・・・・

そして同時に‥‥

優秀な人間には馬鹿が分からないものです!

「 おめぃ~は、天才になれなかったな 」

茫然と‥‥ 息する事も出来ずにいる私に、ジョージ先生はニヤリと笑いながら・・・・・・・

・・・・・・・静かに・・・・・・・・しかし、確信に満ちた声で・・・・・・・・
( 先生の声はいつも低音で静かですが、迫力があり威圧的です )

「 おめぃ~はよ、俺ぃにはなれねぃ~んだよっ! 」

ジョージ先生は、さらに畳みかけてきます・・・・

「 おめぃ~は‥‥ 」

60歳を越えた私が‥‥ 小学生のようにおびえる‥‥

「 ジョージ秋山には絶対に成れねぃ~んだよっ! 」

そして‥‥ なんだか、訳も分からず落ち込んでいく私を救うように・・・・・・・・

「 ま・・・・・・・・おみぃは、おみぃ~でイ~んだよ 」

先生は、気持ちをリラックスさせるように( さらに集中するように )、深く、ゆっくりと息を一つ吐き出す。

「 俺ぃは、誰かに憧れた事なんかねぃ~よ 」

「 ・・・・・・・・・・ 」

「 俺ぃは、俺ぃだからよ 」

「 ・・・・・・・・・・・・ 」

「 おめぃは、おめぃ~でいいんじゃねぃ~か! 」

ジョージ先生は、優しく最後の言葉を締めくくったのです。

ちなみに、こうした言葉( セリフ )を普通なら一日中考えてもなかなか思い浮かぶものではありません・・・・・・・・

このレベルの人間は、一瞬の即興で名台詞がポロポロ出てきます。

24時間、常に自分にそうした( 切迫した )状況を強いているのです・・・・・・・・言い換えれば、マゾの極致とも言えます。( 本人は、結構快感なんだと思います )
 

 

先生のデスクです。中央の汚い新聞紙の上に原稿を置いて「雲」を描いていました。2017年。
新聞紙の下に見えるのが床で‥‥紙クズが散乱し、雑多なゴミが大量に堆積しています。 
先生は個室で土足を使用していました。無理もありません‥‥ゴキブリだらけですから。    これが、バブル期には、年収2億を稼ぎ出した男の仕事場です。


 
 

さて・・・・・・・

そろそろです・・・・・・・

私の漫画家アシスタントとしての人生は終わり、今はタイのチェンマイで楽隠居させてもらっています。

6月いっぱいで仕事を辞め、ありがたい事に退職金( 毎月、1万円が退職金として積み立てられていました。40年間! )も頂くことができ、こうして楽隠居のゲーム三昧でしっかり惰眠と怠惰をむさぼって暮らしております。

最後に・・・・・・・・

「 おめぃ~は‥‥ ジョージ秋山には、絶対になれねぃ~んだよ! 」

突き放すようなこの言葉の後で・・・・・・・・・・

「 おみぃは、おみぃ~でイ~んだよ 」

勤続39年間、色々な事がありましたが・・・・・ 最後に救ってくれたのです・・・・・・・・・・

これこそが、私にとっては先生からいただいた「 退職金 」だったのではないか・・・・・・・・・・・ そんな気がするのです。

この言葉・・・・・・・・

これからも、死ぬまで‥‥ 

いろいろなシチュエーションで使えそうな気がします。

 『 俺は俺でイ~のだ! 』
 
 
 

          『 最後の血の教訓 』 

      ( 漫画家を目指す、若い方々、若くない方へも )

面白い漫画を描けば誰でも売れます。

バカでもアホでも金星人でも。

しかし・・・・・・

誰もが面白い漫画を描くのに苦しみ・・・・ 迷い‥‥ もがきますが‥‥
残念ながら、そこからは「 面白さ 」は生まれません。

面白い漫画は、楽しく夢中で描く事によって生まれるからです。

楽しく夢中で描けない人間が生むのは、苦痛と混迷と敗北です。

では・・・・ どうやって「 楽しく夢中で描く 」事が出来るのか? 

それは・・・・・勝利し続けること‥‥ だから、絶対に勝利しなくてはならない!( 必要なのは戦略と実行力 )

賞取り、連載取り、人気ランキング・・・・・ 競争の連続に勝てなければ・・・・・私のように消えるだけのことです。( 消えて本望、グッドバイ )

勝てば光源、負ければヘドロ‥‥ 消える私は誰かのオナラ。
 
 

               「 漫画家アシスタント物語 」  ― 完 ―

 

       
           《もう終わりで章、2015年9月~'18年2月:公開》

 

 

      ~~~~~~~~ あとがき ~~~~~~~

読者の皆様、長い間( gooブログ開始は2004年11月 )、本当にありがとうございました。

読んでいただいた方、コメントを書いていただいた方、多くの方々から励まされてここまでやってくる事が出来ました・・・・・・・・いや、ホントに!

ブログの書籍化や、ラジオのゲスト出演、大学非常勤講師‥‥‥‥ ありがたいことに‥‥ 多くのご支援や、運の良さもあって、貴重な体験をさせていただきました。

今‥‥ 漫画から引退して、気楽な隠居暮らしを満喫しております。

この先は‥‥

noteブログで、「 元漫画家アシスタントのタイ移住物語 」を続けていくつもりでいます。

 ⇩ ⇩  2025年7月から【note】で始まった「移住物語」(マガジン)

タイでの暮らしや、エピソード、そして小説創作など、気楽に書いていきたいと思います。

コメントなどいただけたら幸いです。

どなたでも、お気軽に‥‥ 

よろしく、お願いいたします!

 
 
 
 


 
 
 
               お知らせ

「 漫画家アシスタント物語 」の「 note 」への引っ越し作業は、完全に終わりました。

この後は、「第1章」より、改めて「 note 」用に改編した「 物語 」をアップする予定です。

もうしばらく、お時間をいただきつつ、改編作業をしていくつもりです。

改編された「 新版・漫画家アシスタント物語 」は、全編が無料になります。 これまで、有料部分を敬遠されておられた方々にも、気楽にお読みいただけるように修正しました。

まだ、「 第3章 」や「 第4章 」‥‥などの有料部分を見ておられない方には、是非、一度、お越しになっていただきたいと思っております。

 
 

 
           「 遺書・漫画家アシスタント物語」へつづく・・・・
                「もう終わりで章〈8〉」へもどる‥‥
                         「もくじ」 へ‥‥
 
 
 
 
 

 ⇩⇩ 輝くバラの画家、村田先生が童話作品で創作大賞に挑戦! ⇩⇩

 
 

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