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『モモの古道具屋さん』 第16話 アルバムが欲しい 第十六走者 kokoro_hashiruが担当します!

エルフィアの森の片隅に、深い緑に包まれた古道具屋さんがある。
大きな木をくり抜いて中を空洞にしただけの一軒の古道具屋さん。

そこには毎日、多くはないがお客さんが来る。
買いにくる客、売りに来る客、商品を見に来るだけの客。
いろんな客がそこには来た。

午後の西日がさす中、店の前に長い影が一筋伸びた。

「いらっしゃい、モモの店へようこそ。
何でも見ていって。ないものは探すよ」

モモは羽をパタパタしながら言った。
男は、店の中のものを丁寧に探した。
見れば、五十代の白髪混じりの男性だった。
最近老眼がキツくなっているせいか、手に取ったものを少し遠ざけたりしながら、小物を見ていた。

「……ないかな? やっぱり」

「ねぇ、おじさん、何探してんの?」

「アルバムが欲しいんだ。
記憶をとどめておきたくてね」

「へー、何か記憶したいことがあるってこと?」

「……夢のような話さ」

男は、モモの方を向き直して言った。

「どういうの? 話してみてよ」

「ああ、ある男がね、ギターを売りにきたことから物語が始まったんだ。
そしたら、次々に物語がつながってね……」

男はモモの目を捕まえて、正面から向き合って言った。

「モモ……ありがとう」

モモの小さな手を取り、男はぎゅっと握り締めた。

「いたた……力が強いって。
えっ? なんでモモの名前知ってるの?
あっ、看板か!」

「いや、君は僕が書いたんだ」

「どういうこと?」

「君は僕の筆から生まれたキャラクターなんだ」

「えっ? もしかして、kokoro?」

「そうだ、どうして名前を……」

「それはね、幸っていう女の人が『二回目のバトン、受け取ります』って、つい最近来たんだ。
そのとき、『kokoroさん』って言ってたからねー」

「幸さんも……この店に来たのか……」

kokoroは目を細めながら、モモの店の低い天井を見上げた。

「モモ、そのときは意味分かんなかったけど、
本当にその本人が来たんだね。
まあ、筆から生まれたとか何とかは理解できないんだけどねー」

「ああ、それでいい。私もモモに言いたいことがある」

kokoroは言葉を置くように紡いでいった。

「このエルフィアの世界は素晴らしい。
優しい世界や不思議な世界、
みんなの夢がいっぱい詰まっている。
歌が出てきたり、仕掛けが出てきたり、
本当に楽しい世界だ。
モモがいてくれて、良かったよ」

「へへー。褒められちゃったー」

モモは羽をパタパタと動かして、急に照れ出したのか、クネクネし出した。
kokoroは言葉を続けた。

「そして、古道具屋モモに改めて言うよ。
欲しいものは、usagiさん、みっちゃん、幸さん、みーさん、晴久さん、ちえべさん、柚月さんたちが入るアルバムだ」

「えっ、それって人間だよね? 人間がアルバムになんか入らないよ」

「うーん。人間の記憶を入れたいんだ。
魔法でも何でもいい。
そんな道具を探してはくれないか?
こうやってつながって、何かを成し遂げていく物語をどうしても保管したい……」

「それは、さすがのモモの魔法でも、難しいーなー。風の精霊・ジンを呼び出してぐちゃぐちゃぐちゃーっとするのは得意なんだけどー」

二人は店の中で、あれこれと頭を悩ました。

何か不思議な気持ちだった。
作者と登場人物が……。

◇◇◇◇◇

日が沈みかけた頃、二人の高校生くらいの男女がエルフィアの森へやってきた。
モモの古道具屋さんの前に長い影が二筋並んだ。kokoroはモモより、先に店先に出て、二人に話しかけた。

「君たちは、どこからきたんだ?」 

「僕たちは、晴久って人からあるものを受け取ったんだ。そして、それをモモっていう羽のある女の子に届けるように言われてるんだ」

「私がモモだよ! なになに? 晴久って誰?」

「君がモモか。じゃあ、こっちへ来て」

女の子がモモの手を引き、男の子がkokoroの横に並んだ。

四人は、エルフィアの森のまだずっと奥の方に歩いて行った。その先には、そこだけ光り輝き、柔らかなひだまりのような広場があった。

広場の真ん中には、スタインウェイのグランドピアノがあった。光に当たってピカピカ黒く輝いていた。二人は目と目を合わせてうなずき合った。
羨ましくなるくらい、二人の息がぴったりだった。

「やっぱり、晴久さんの言った通りだね。ここに来ればあるって言ってたから」

そう言いながら、男の子がピアノの鍵盤蓋をゆっくり開けた。

「へーこんなところにピアノがあったんだー。モモも知らなかったよ」

「さっきから、名前が気になってるんだけど、私も『桃』っていうのよ。それと、こっちは直。よろしくね、モモ」

と、桃はフフッと笑った。 

「羽のあるモモとないモモだね」

モモは羽をぱたつかせながら二人を見てにっこり微笑んだ。

そうして、二人はピアノの前の長椅子に座り、顔を見合わせて深呼吸をした。

「あっ、そうだこれ」

と、直はモモに紙の楽譜を手渡した。
すると、モモの体が、光りだした。

譜面の上の音符がモモの体の中に入ってきた。
あのときと同じ。

あの「ロスト・ハーモニー※」を奏でたときと同じ、魔法の楽譜だった。

「何か、歌いたくなってきた。
このワクワクした気持ち……何だろう?」

直の合図で曲が始まった。

「せーのー」

ポロン……

二人の指から紡がれるメロディは魔法のようなメロディだった。そして、エルフィア族であるモモのハイトーンボイスが合わさる——

『この物語をバトンにして』 

曲が終わったら、モモは空に舞い上がった。
嬉しい時は、空を飛ぶ。
モモは素晴らしい曲と出会えたことに酔いしれた。

「ヒャッホーー!」

大空を自由自在に飛んだモモは、この感動を誰かに伝えたい。この思いを森中に届けたい。
空の上でそう考えた。

kokoroはオレンジに染まる空を見上げながら、演奏し終えた二人に言った。

「ありがとう。音楽がこんなに人を感動させるんだね。確かに曲は受け取ったよ。
晴久さんにこの紙を渡しておいてくれ」

そう言うと、kokoroはエルフィアの森を後にした。

手紙には一言、

"みんなでつないだ『奇跡』を形にしてくれてありがとう"

そう書いてあった。 

興奮冷めやらぬモモは、地上に降りてきて、kokoroがいないことに気づいた。

「あー! kokoroー! アルバムは?」

——もう、いらない。この曲が、この歌が僕らのアルバムだから。

エルフィアの森に吹く風のざわめきからそう確かに聞こえてきた。

そして、桃と直は顔を見合わせて、もう一度曲を奏でた。モモは羽を大きく広げて、メロディに歌をのせた。

モモの歌は、森中に響き渡った。
森の緑が空のオレンジに溶け込んで、揺れているように見えた。


         ——And the story goes on……





ロスト・ハーモニー……『KoKoRoQuest』第22話参照


【あとがき】


今回、枝本 幸さんが第13話で物語に出てきてくれたときに、

「あっ、呼ばれてる」

と感じ僕もメタフィクション(作者が物語に登場する)をやってみました。


しかも、モモとの会話。
めちゃくちゃ新鮮で楽しかったです。

桃と直は晴久さんの『音紋—Sound Print —』からお借りしました。必殺、クロスオーバーです!

僕は今回どこかで『この物語をバトンにして』を作ってくれた晴久さんに感謝の意を込めて、この物語の挿入歌にしたかったので、一番収まる形がこういう形でした。

もっと、皆さんの作品をガンガンご紹介したかったのですが、もう、頭の中で二人のモモと直が喋りだしていたので、申し訳ございません🙇

カッコよく可愛く、絵画的にをテーマに描いたつもりです。

最後の ——And the story goes on……

めっちゃ気に入っています。
歌詞の中に出てくる言葉です。

そして物語は続く……

この続きは、どこからでも大丈夫です!

十七話よろしくお願いします。



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