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『モモの古道具屋さん』第13話 やっと、ここに 第十三走者 枝本幸が担当します!

私はとうとう、このエルフィアの森にやってきた。

深い緑の森の片隅まで、この森の空気を味わいながら一歩一歩を大事に歩いてきた。

そして今、目の前には、あの『モモの古道具屋』がある。

この店に入ってしまったら。
モモちゃんに会ってしまったら。
もう私は逃げられない。

「あれえ?お客さんかなあ?」

ふいに後ろから声がして、私は驚いて振り向く。

そこには、5歳児くらいのかわいい女の子がいた。
手には箱を持っていて、背中には白い羽がある。

モモちゃんだ。

初めて会うモモちゃんに、私はドキドキする。
店の中にいるものだと思っていた。
またどこかに出張していたのだろうか。

「モモの古道具屋に来たんだったら、入って見ていって!」

モモちゃんはそう言って微笑む。
ああ、これがモモちゃんの天使のスマイルか。

私はもう、モモちゃんに会ってしまったのだ。
覚悟を決めて、店に入ることにした私は言った。

「では、ちょっと品物を見せてください」

「どうぞ!ゆっくり見ていってね」

モモちゃんは、箱を持ったまま店に入っていく。
モモちゃんの後について店に入った私は、店内を見回した。

これが『モモの古道具屋』か。

本当にいろいろなものが置いてある。
時代も国もバラバラだし、いったい何なのかわからないものもある。

だが、私は知っている。

この店にあるすべてのものに、誰かの想いがつまっていることを。


「何か欲しいものあったー?」

箱をしまったモモちゃんが、奥から戻ってきた。
モモちゃんは本当にかわいい。
私の子たちも、このくらいの頃があった。

・・・ん?

大きさは5歳児だが、モモちゃんは5歳じゃないか。

あ、そうだ。

私は、モモちゃんにお願いしたいことがあったのだ。

「モモちゃん。ちょっとお願いがあります」

「なになにー?」

私はモモちゃんに言ってみる。

「ジンに会ってみたいんです」

モモちゃんは目をパチクリする。

「モモが契約している風の精霊ジン?」

「そうです!ぜひ会ってみたくて」

モモちゃんは不思議そうな顔になる。
だが、すぐにちょっと得意そうな笑顔になって、あのセリフを言った。

「ジン出てきて」

モモちゃんは両手を包み込むようにすると、ジンを召喚する。

すると、
「はいな!何用で?」
というセリフとともに、モモちゃんの手からジンが現れた。

半透明の青い体をした風の精霊ジン。

感激で言葉が出ない。

魔法を使うために契約する精霊。
ゲーム好きにはたまらない。

想像したより大きかった。
60cmくらい?

しげしげとジンを見つめる私に、ジンが言った。

「・・・わてに、何用で?」

私は、はっとする。

「あ、ごめんなさい。どうしてもあなたに会いたくて出てきてもらったけど、特に用は無かったんです」

モモちゃんとジンは顔を見合わせる。
ジンは笑って言った。

「わてに会いに?かまへん、お安いご用でさあ」

そしてジンは、ふわりと軽く風を起こして消えた。
私はジンの消えたあたりを見てため息をつく。

「・・・会えてよかったです。モモちゃん、ありがとう」

「モモはいいけど、買いたいものがあったんじゃないの?」

モモちゃんにそう言われて、私はあわてる。

「そうでした、ごめんなさい」

お願いだけして何も買わない客なんて、それは申し訳ない。
私は店内を改めて見回して、棚の上のものに目を留めた。

――ステラのダークブロンドのウィッグ

ああ、これが。

ステラは、娘のエンディとの生活のために、自分の髪を売ったのだ。
その髪で作られたウィッグが、まさかこのモモの古道具屋にあるなんて。

「・・・ねえ、モモちゃん」

「なに?」

「私みたいなおばさんが、こんな綺麗なダークブロンドのウィッグを使ったらおかしいと思いますか?」

私の問いを受けて、モモちゃんは、棚の上のウィッグと私を見比べると言った。

「おかしくないんじゃない?オシャレに歳は関係ないと思うし。ココロ王たちだって、中年勇者だったけど、立派で素敵な勇者たちだったよ」

モモちゃんにそう言われて、私は自分の頭に手をやる。

私の髪は、抗がん剤治療中に抜けた。

抗がん剤を卒業して復活した髪は、髪質が変わって以前より更にクセがひどくなり、雨の日は全然まとまらない。
薬の副作用で弱くなった肌のために、パーマもカラーリングもやめて、もう白髪だらけだ。
白髪とクセ毛を活かしたヘアスタイルを目指して伸ばしてはいるが。

どうしてもスタイルが決まらない日に、このウィッグを使ってみたら、気分転換にもなっていいかもしれない。

ねえ、ステラ。

あなたの遺したこのウィッグ、私が使ってもいいだろうか。

私は少し考える。
きっとあの子なら、許してくれる気がした。

「モモちゃん、ではこのステラのウィッグをください」

モモちゃんは天使の微笑みで言った。
「毎度あり!」

会計を済ませた私は、思い出した。

「そうだ、モモちゃん。エンディから聞きました」

「なにを?」

「先日、エンディがこちらで買ったお雛様のことですけど、ソルとクレアとみんなで飾って大事にしているそうです」

「よかったー!売ってくれたおばあちゃんに会ったら、伝えておくね!」

そして私は、更にエンディから聞いたことを伝える。

「ただ、奇妙なことがあったみたいです」

「なに?」

「クレアが竪琴の練習をした後、お雛様を見たら、雛人形たちの立ち位置が変わっていたらしくて」

「ええっ!?」

「でも、クレアは雛人形たちをじっくり見て、『大丈夫、みんな悪い目じゃないから怖くない。このお人形たちはみんな優しいお人形だよ』って言って、雛人形たちのために竪琴を聴かせてあげたりしてるんだそうです」

モモちゃんは、少しひきつった笑いになって言った。

「モモはちょっと怖いけど」

「なんでも、三人官女と五人囃子の位置が、特に激しく変わるそうです」

「へ、へえ・・・」

私は更に思い出した。

「それと、カールとソルが、カラスの浩市さんのその後の具合を心配していて、調子が悪かったらいつでも来てほしいと」

「うん、言っておくね!」

「あとフミさんが、モモちゃん、また遊びにおいでって言ってました」

「わあ、ほんと!?行く行く!」

私は、あとは何かあっただろうかと考えた。

まったく、私より先にうちの子たちがいろいろモモちゃんと関わっているなんて。

やっと、ここに来れた。

ずっと来たかった『モモの古道具屋』に。

だが、来てしまった以上、再び私は走らなければならない。

「モモちゃん」

「ん?」

「ここにkokoroさんが来たら伝えてください。私も、2度目のバトン、受け取りますって」

「なんのこと?」

「言えばわかるはずだから大丈夫」

「モモ、おばさんのこと知らないんだけど」

「ああ、そうでしたね。ゆきがこの店に来たと言ってください」

モモちゃんは、白い羽をパタパタさせて言った。

「うーん。よくわかんないけど、わかった!」

「ありがとう、モモちゃん」

私は笑ってモモちゃんに頭を下げると、ステラのウィッグを持って、モモの古道具屋を出た。

店を出ると、風が吹いている。

ああ、これが、いつもモモの古道具屋の前に吹いている『優しい風』か。

私は満足して、またエルフィアの森を、一歩一歩大事に歩いて帰る。

やっと、ここに来れたんだ。
家に着いたら、早速走ろう。
無理のない私の速さで。

2度目のバトンを持って。


(おしまい)

#KoKoRoの物語リレー
#モモの古道具屋さん

KoKoRoの物語リレーに誘っていただき、前回、私が第四走者として走った第4話。

この時は、リレーらしさを出したくて、私の前に走った3人の書き手さんである、kokoro_hashiruさん・usagiさん・みっちゃんさんの物語の内容を含めて第4話を作りたいと思いました。

第2話で登場する、usagiさんの物語の登場人物とアイテム名もお借りしました。

まず、以下の3つを繋げるベースの物語を考えました。

  • 今の自分に合った新しい相棒

  • 失くしてしまった何かを探す

  • 歳をとっても新しいことに挑戦する

そして出来上がったのが第4話で、正直私はもうこれで役割は果たした、と思っていたのです。

ところが、その後も間をあけずにどんどんバトンは渡っていき、リレーは続きます。

しかも、各走者、書き手さんが変わり、それぞれの持ち味の素敵な物語ばかりで、感動して学ばせていただいたり、爆笑したり、驚いたり、じーんとしたり、ほっこりしたり、更になんだか部活のような楽しさもいただいています。

そして、気づけば2周目が始まっていました。

なんでもありのリレーでOKということで、私も2度目のバトンを受け取ったのが今回です。
1度目より、楽に走れた気がします。
すごい皆さんの後でプレッシャーもあるのに楽に走れたのは、参加されている皆さんがおおらかにあたたかく受け入れてくださるのがわかったからでしょう。

それぞれの書き手さんによる物語から、いろいろな登場人物がモモの古道具屋に現れる中、今回は、私自身が客です!
だって、すごーく行きたかったんですよ!!
なんでもありだし・・・たぶん、許してもらえる??

今回お借りした、ジンとココロ王は、kokoro_hashiruさんの物語の登場人物です。
kokoro_hashiruさん、お許しいただきありがとうございました!

ステラ、エンディ、ソル、クレア、カールは私の作品の登場人物です。

この「君の長い夜が明ける魔法」に絡めてリレー小説を書いてくださった書き手さんたちの物語も、今回入っています。

◆お雛様については、上記みっちゃんさんによるリレー小説第3話が初登場です

◆お雛様がエンディに予約されたのは

◆ステラのダークブロンドのウィッグと、その後のお雛様については

◆カールとソルがカラスの浩市さんと・・・については

◆カラスの浩市さんはkokoroさんの物語から

◆フミさんとモモちゃんが・・・については

こちらの晴久さん、とても多才な方でして、この企画のテーマ曲を作ってくださり、これがまた感動の曲なんです!
了承を得ていないので、タイトル等詳細は伏せますが、どこかで公開されないかなあなんて密かに期待しています。

【追記】
kokoro_hashiruさんが以下の記事で公開してくださいました!
とっても素敵な曲なので聞いてみてください!

◆フミさんは、私の物語の登場人物です

今までのリレー小説については、私をこの企画に誘ってくださったusagiさんの紹介記事があります。

そしてそして、このメンバーシップのリーダーであるkokoro_hashiruさんが、毎回新しい物語が出るたびにまとめ記事をアップしてくださっています。

物語リレーに興味のある方は👇

楽しく参加させていただき、ありがとうございました!
このリレーに夢中になり過ぎて、ゲームキャラのバースデーログインボーナスをもらい忘れてしまった・・・


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枝本 幸 いつもスキやコメントありがとうございます♪いただいたチップは、闘病中の自分へのご褒美の一服に使わせていただきます!

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