『モモの古道具屋さん』第2話 失せ物探しの眼鏡 第二走者 usagiが担当します!
昼下がり、エルフィアの森のモモの古道具屋の扉が開いた。
カー🐦⬛ https://tales.note.com/grand_hyena7705/w14c049bh3xkw
入ってきたのは、身なりの整った老夫婦だった。
「いらっしゃいませ。忘れもの屋の、おじいちゃんとおばあちゃん。
遠くから来たね」
「ああ、地球の反対側だからな」
「今日は、買うの? 売るの?」
モモは店の中をせわしなく飛び回った。
「今日は、この人の探しものがないか見にきたの」
そう言って、祖母は店内を見回した。
棚には、伝説の英雄、ココロ・アルヴェリア王のサイン色紙、タケル・ロッシュの包丁、アルミナ・フェルの櫛(くし)まで並んでいる。
「ふふっ、モモのお店は、本当に何でもあるわね」
「あるよ。ないものも、たまにあるけどねー」
祖父が眉を寄せた。
「だったら、ないかもしれんな」
「でも、明日にはあるかもしれないよー」
モモがちょこっと舌を出す。
「それは、ありがたいわね」
祖母は笑みを浮かべた。
祖父は髪をなでながら、店の奥へ目を向けた。
「青い木箱を探しているんだ。三十年ほど前、なくさないように、分かりにくい場所へしまった」
祖母が続けた。
「分かりにくすぎて、本人にも分からなくなってしまったの」
「安全な場所だったんだ」
「あら、見つからない場所を、安全とは言わないわよ」
モモは店の中を飛び回り、店の奥から次々と品物を引っ張り出した。
「これ?」
「違うな」
「じゃあ、これは?」
「それは鍋だろう」
「空を飛ぶ鍋かもしれないよ」
「底に焦げ目がある。台所で使う鍋だ」
祖父が店の隅に目をとめた。
「……あれだ」
「どれ?」
祖父が指さしたのは、モモがいつも椅子にしている青い木箱だった。
「これは売り物じゃないよ」
モモが木箱に腰かけた。
「中を見るだけならいいだろ」
祖父に言われ、モモは渋々、箱から降りた。
ふたには、『忘』の文字が彫られている。
祖父が手をかざすと、カチリと音がして、ふたが開いた。
中に入っていたのは、祖父が昔作った細い真鍮の眼鏡だった。
「あった! 失せ物探しの眼鏡」
「そんな便利な物があるなら、どうして木箱を探せなかったの?」
モモがたずねた。
「眼鏡が木箱の中に入っていたからだ」
「役に立たないねー」
「ふふっ、作った本人に似たのね」
祖母の言葉を、祖父は聞こえなかったふりをした。
眼鏡には、古びた紙が結ばれていた。
モモが声に出して読む。
「この眼鏡は、なくしたものを見つけます。ただし、物とは限りません。……どういうこと?」
「なくした品だけではなく、迷子も探せるということだ」
祖父は眼鏡を手に取り、レンズの曇りを確かめた。
「実は、魔法の森のシルバー人材センターに登録してな。このたび、森の安全パトロールを任されることになった」
「立派なお仕事だね」
モモが言った。
祖母は少し心配そうに夫を見た。
「でも、森の道は覚えています?」
「もちろんだ」
祖父はすぐに答えた。
モモが首をかしげる。
「青い木箱を三十年も見つけられなかったのに?」
祖父は聞こえなかったふりをして、眼鏡をかけた。
「これで迷子がどこへ行ったのか分かる」
「迷子を見つける前に、あなたが迷子になったらどうするの?」
祖母が尋ねた。
祖父はしばらく考え、眼鏡を外した。
「そのときは、これで自分を探す」
「自分で自分を探せるの?」
「それは、まだ試していない」
モモは声を上げて笑った。
「じゃあ、魔法の森のみんなのために、眼鏡は返してあげる」
こうして失せ物探しの眼鏡は、三十年ぶりに祖父のもとへ戻った。
店を出る夫の背中に、祖母が声をかける。
「あなた、帰り道はそちらではありませんよ」
祖父は何事もなかったように向きを変えた。
眼鏡の出番は、思っていたより早く訪れそうだった。
(おしまい)
……🏃🏻♀️➡️…🏃🏻♀️➡️(KoKoRo物語リレーの、第三走者はみっちゃんさんです)
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