送る前に、何度も読み返してしまう。
「ありがとう。」
そう打って、
送信ボタンの上で指が止まる。
これだけでよかったかな。
何か足した方がいいかな。
絵文字はあった方がいい?
でも、多すぎるかな。
「!」
を
「。」
に変える。
また読み返す。
閉じた画面を、
もう一度開く。
たった一言なのに、
送るまでに何分もかかってしまう日がある。
⸻
「考えすぎだよ。」
そう言われたことがある。
きっと、その通りなんだと思う。
でも、
考えたいわけじゃない。
ただ、
あの一文で相手を困らせないか。
冷たい人だと思われないか。
失礼じゃないか。
そんなことが頭をよぎる。
⸻
言葉を選んでいるつもりだった。
でも本当は、
相手の気持ちばかり選んでいた。
どう返したら嬉しいだろう。
どう書けば安心するだろう。
どうしたら嫌われないだろう。
気づけば、
自分が何を伝えたかったのか、
分からなくなる。
⸻
だから、
何度も読み返す。
誤字を探しているんじゃない。
もっと優しい言い方がないか、
探している。
⸻
誰かを大切にしたい人ほど、
言葉を簡単には送れない。
自分の一言で、
相手の一日が変わるかもしれない。
そんなふうに思えてしまうから。
⸻
でも、
あなたが大切に思っている人は、
完璧な文章を待っているんじゃない。
少し不器用でも、
少しまとまっていなくても、
「伝えようとしてくれた。」
その事実を受け取っていることの方が、
ずっと多い。
⸻
全部の言葉が、
正解じゃなくてもいい。
少し言いすぎても。
少し足りなくても。
あなたらしい言葉は、
思っているよりちゃんと届く。
⸻
今日もまた、
送信ボタンの前で、
少しだけ指が止まった。
その数秒は、
臆病だったからじゃない。
誰かを大切にしたかった時間だった。
今日もまた、
「送信」を押す前に、
一度だけ、
深呼吸をした。
その優しさを、
いつか自分にも向けられますように。
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