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第112話|松葉杖で苦しんだ数日間。原因は脚の弱さではなかった。

6月30日に手術をして、7月14日から左脚に1/3荷重の許可が出た。

ようやく、少しずつ左足に体重をかけられる。

ここから歩く練習が始まる。

そう思っていた。

でも、実際に松葉杖を使って歩いてみると、思ったようにいかなかった。

許可された重さを左脚にかけると、膝が痛い。

体重を乗せるのが怖い。

理学療法士さんからは、姿勢が悪いことを指摘された。

右足が早く出てしまう。

左のお尻が引けている。

左脚で受けるというより、膝で支えてしまっている。

頭では言われたことが分かる。

でも、身体はなかなかその通りには動かない。

「脚の筋力が足りないからだろう」

最初はそう考えていた。

だから、自主練も頑張った。

脚を動かす。

腿を上げる。

少しでも筋肉を戻そうとする。

ところが、数日たっても膝の痛みが消えない。

むしろ、膝の周囲だけでなく、膝裏やふくらはぎ、股関節周辺まで張ってくる。

「頑張っているのに、なぜ良くならないんだろう」

そんな感覚だった。

その後、理学療法士さんと自主練の内容を見直すことになった。

サイド、バック、斜め後ろの腿上げをいったんやめる。

自分では脚を鍛えているつもりだったけれど、ハムストリングスなどを無意識に使いすぎていた。

患部をリハビリでしっかり見てもらっているなら、自主練ではさらに鍛えることより、身体を整えることを優先したほうがいい。

そこから、少し考え方が変わった。

膝が痛いからといって、膝だけを鍛えればいいわけではない。

実際、リハビリでは脚だけではなく、股関節や骨盤、体幹まで見てもらった。

姿勢を整える。

骨盤の位置を変える。

お尻で身体を受ける。

身体の使い方を少し変える。

すると、それまで続いていた膝の痛みが収まった。

痛かった場所と、原因になっていた場所は同じではなかった。

この時期、理学療法士さんは松葉杖で歩き始めた段階から、単純に「脚の筋力が戻ったか」だけを見ていたわけではなかった。

歩くときに身体がどう動いているか。

どこで受けているのか。

左右の脚をどう使っているのか。

そういうところを見ていた。

僕は「早く筋力を戻したい」と考えていた。

でも、身体は「まず正しく使えるようになろう」と言っていたのかもしれない。

頑張る方向を変える。

筋力を増やすことだけではなく、今の身体でできる動きを整える。

リハビリを始めてから、少しずつそんな考え方になっていった。

松葉杖で苦しんだ数日間は、歩くことの難しさを知った期間だった。

そして同時に、

身体は、力が足りないから動かないとは限らない。

ということを知った期間でもあった。




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