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士業事務所を経営していると、日々の業務や顧客対応、集客活動に追われ、あっという間に一日が終わってしまうものではないでしょうか。

経営者としては、

・問い合わせも安定している
・受注も順調
・売上は右肩上がり
・業務体制も整ってきた
・スタッフも定着している

こうした状況から、「事務所経営はうまくいっている」「特に大きな問題はない」と感じることも多いと思います。

「もうウチの事務所に死角はない」
「やるべきことは一通りやってきた」

そうした自信や手応えを持つこと自体は、決して悪いことではありません。

ただ、少しだけ視点を変えて考えてみてください。

うまくいっている“はず”なのに、

・大小さまざまな課題が次々と起こる
・対処しているのに、もぐら叩きのように感じる
・現場から前向きな意見があまり出てこない

もし、こうした違和感が少しでもあるなら、知らず知らずのうちに「できているつもり経営」に陥っている可能性があります。

誤解のないように先にお伝えしておきますが、ここで経営者の能力や努力不足を指摘したいわけではありません。

むしろ、真面目に経営と向き合ってきたからこそ、見えにくくなってしまう部分がある、という現実について整理し、お伝えしたいのです。

▮ 「できているつもり経営」とは何か

「できているつもり経営」とは、経営者自身は事務所が順調に回っていると感じている一方で、

・課題が構造的に整理されていない
・現場との受け止め方にズレがある
・成果が属人的で不安定

といった状態が静かに進行している状況を指します。

一定の成果は出ているため、大きな危機感はありません。ただ、「本当はもっとできるのではないか」「なぜかスッキリしない」という、不完全燃焼のような感覚が残ります。

問題は、この状態に気づかないまま時間が過ぎてしまうことです。

これは特定の事務所だけに起こる話ではなく、規模や業種を問わず、多くの士業事務所で起こり得る現象です。

以下では、「できているつもり経営」が生まれやすいポイントを、

① 集客・営業
② 業務体制・効率化
③ 人材育成と理想のズレ

この3つの観点から整理していきます。

❶集客・営業が経営者に依存している

まず、集客や営業についてです。

30名以下の士業事務所では、集客・営業のほとんどを経営者一人が担っているケースが少なくありません。

・Webマーケティング会社との打ち合わせ
・施策の判断
・効果測定
・PDCAの管理

あるいは、

・交流会やコミュニティ活動への参加
・紹介営業
・セミナー登壇
・メディア露出
・書籍出版

こうしたオフラインでの活動も含め、経営者が中心となって動いている事務所は多いでしょう。

ここで、ひとつ考えてみてほしいことがあります。

「自分が動けなくなったときでも、同じように売上は維持できるだろうか?」

この問いに、即答できる事務所は多くありません。

集客や営業を経営者が一手に担っていると、スタッフ側には次のような意識が自然と生まれやすくなります。

・仕事は天から降ってくるもの
・自分は案件処理をしていればいい
・売上や利益は経営者の仕事
・顧客が何を求めているかは深く考えなくても仕事は回る
・事務所の成長は自分ごとではない
・所長だけ楽しそうでいいな

偏見でも、スタッフを責めたいわけでもありません。

多くのスタッフにとって、

・営業がしたくないから士業の世界を選んだ
・資格や専門性を磨くことが自分の目標
・個々の案件を正確にこなすことが役割

こうした価値観の方が自然だからです。

その結果、経営者が「回っている」と感じていても、集客・営業は強く属人化し、経営者自身が止まれなくなっていきます。

営業が好きで飛び回っている先生もいるでしょう。ただ、不在がちになることで、事務所内の空気や小さな歪みに気づきにくくなる側面があることも、意識しておきたい点です。

➋業務体制・効率化に潜む見えないズレ

次に、業務体制や効率化についてです。

効率化ツールや業務管理システム、生成AIなどを積極的に導入している事務所も増えています。

経営者としては、

・生産性は確実に上がっている
・属人化も少しずつ解消できている
・ツールを入れれば仕事の質も上がる

そう感じているかもしれません。

一方で、現場では必ずしも同じように受け止められていないことがあります。

・覚えることが増えて負担に感じている
・ツール導入の意図が十分に共有されていない
・運用が現場任せで定着していない
・自動化と非属人化が混同されている

作業が楽になった分の時間を、
「もっと仕事を詰め込まれる」と感じるスタッフもいれば、
「そもそも質の高い仕事とは何か分からない」と戸惑うスタッフもいます。

経営者は「回っている」と安心し、現場は小さな違和感を抱えたまま声を出さなくなる。

このズレが続く限り、課題は表に出ず、改善も進みにくくなります。

➌人材育成と理想のズレ


士業事務所で行われている人材育成は、

・法改正や業務対応の勉強会
・定期的な面談
・OJT

といったものが中心です。

やらないよりは、もちろんやった方がいいですし、一定の効果もあります。

ただ、これらは「業務をこなす力」を育てる側面が強く、

・事務所としてどうなりたいのか
・スタッフ自身はその中でどんな役割を担うのか

といった視点まで踏み込めていないケースも少なくありません。

その結果、

・経営者は「育てているつもり」
・スタッフは「求められていることが分からない」

という理想のズレが生まれます。

このズレは表面化しにくく、

・静かな不満
・突然の退職
・ミスやクレームの繰り返し

といった形で後から現れることが多いのが特徴です。

▮ 人は見たいように見、信じたいように信じる

人は選択をするとき、デメリットよりもメリットを重視します。

集客、業務体制、人材育成。
経営者として「これなら大丈夫」と思って取り組んできたことが、

いつの間にか「やっている」=「できている」という認識にすり替わって
しまうことがあります。

機能やハウツーのロジックに惹かれ、良かれと思った施策が、結果として現場との距離を広げてしまうこともあります。

▮ まとめ

「できているつもり経営」は、誰にでも起こり得ます。

・経営者の視点だけでは見えない課題がある
・現場との受け止め方や理想にズレがある
・形だけの施策に安心してしまう

これらは一人で考えていると、なかなか気づけません。

だからこそ、第三者の視点で整理することに意味があります。

属人化している部分はどこか
スタッフと理想は揃っているか
本当に解消すべき課題は何か

それらを整理することで、初めて「できているつもり」から一歩抜け出す
ことができます。

第三者の視点で、経営者の視界は広がり、事務所はより安定的で、
働きやすく成長しやすい事務所に近づいていきます。

これまでの努力を振り返りつつ、壁打ちという形で、別の視点で見つめ直す時間を一度取ってみませんか?

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