【Emotions to Action④】目標設定は「夢」ではなく「脳への指令」である。

こんにちは。
マインドコーチ×スタイリストの結城 繭(ゆうき まゆ)です。

文化服装学院で服飾を学び、アパレル販売・ソックスデザイナーを経て、現在はフリーランスの美容部員(BA)としても活動しています。これまでに延べ3万人以上の女性たちの美に触れてきた現場経験と、認知科学・CBTをベースにしたマインドコーチングを掛け合わせ、「他人の目」から解放された100%素直な「最高に可愛い私」で生きるための伴走をしています。

「Emotions to Action ―感情から、人生を動かす―」シリーズ第4回です。

①では問いの転換、②では感情の言語化、③では沈黙と「間」の価値についてお話ししてきました。

今回は、このシリーズの中でも特に「認知科学」と「潜在意識」という視点から深く掘り下げる回です。

目標設定は、夢を語ることではなく脳への指令を出すこと__。

「目標を立てても、続かない」という経験はありませんか?

「今年こそ、自分らしい服を着こなせるようになりたい」

「もっと自分の本音を大切にして生きたい」

「自信を持って、堂々と生きていきたい」

こういった目標や願望を、心の中で思い描いたことは、きっと誰にでもあるはずです。

でも、気がつけば「また同じ場所に戻ってしまった」「なかなか変われない」という経験も、同じくらいよくある話です。

なぜ、目標を立てても変われないのでしょうか。

それは、目標の「置き場所」が間違っているからかもしれません。

目標は“現状の内側”より「現状の外側に」リアリティを

認知科学において、効果的な目標設定には重要な原則があります。

新しい目標(コンフォートゾーン)を設定し実現するには、現状の延長線上ではなく、現状の外側にリアリティ置くということです。

「もう少し自信がつけば、好きな服を着られるようになるかも」

「少しずつ変わっていければ、いつか自分らしくなれるかも」

これらは、現状の内側にある目標です。現状を少し改善したものを目指している。

でも、脳はこういった「現状に近い目標」に対して、強烈なエネルギーを発動しません。
なぜなら、「今のままでも大丈夫」という判断をするからです。

一方で、現状の外側にリアリティーを置いた目標となるとどうなるか。

「私はすでに、自分の好きを全力で纏って、毎日ご機嫌に周囲とも良好な関係を築いて生きている」

「私は、自分の本音をアサーティブに伝えながら、対等で心地よい関係性の中で生きている」

この状態を、「まだそうなっていないけれど目指している」ではなく、「すでにそうである」という臨場感を持って設定すること。

これが、脳への本当の意味での「指令」になります。

潜在意識は、「現実」と「イメージ」を区別しない

ここで、潜在意識の重要な性質についてお話しします。

人間の脳は、意識(顕在意識)と潜在意識の2層構造で動いています。
そして、行動の95%以上を支配しているのは、潜在意識です。

潜在意識には、一つの重要な特性があります。

「現実に起きていること」と「鮮明にイメージされたこと」を、区別しないという特性です。

スポーツ心理学の分野では、イメージトレーニングの効果が繰り返し証明されています。
実際に練習するのと、鮮明にイメージして練習するのとでは、脳内の神経回路の活性化パターンがほぼ同じになるという研究結果があります。

これは、ファッションとマインドの文脈でも、まったく同じことが言えます。

「100%素直な私として、好きな服を纏い、ご機嫌に生きている」という状態を、臨場感を持ってイメージし続けること。

その繰り返しが、潜在意識に「これが私の当たり前の状態だ」というインプットをし続けることになります。

RASが、ゴールに向かって世界を再編成する

目標を現状の外側に置き、臨場感を持ってイメージしたとき、脳のRAS(網様体賦活系)が動き始めます。

①でもお伝えしたように、RASはあなたが意識を向けたものを「重要な情報」として優先的に拾い上げるフィルタリングシステムです。

「100%素直な私として生きている」
「日々の些細なことにも幸せを感じている」
という状態を潜在意識にインプットし続けると、RASはその状態に関連する情報を、日常の中から次々と拾い上げ始めます。

街を歩いていて、「これ、なんかいいな」という服が目に飛び込んでくる。

会話の中で、「本当はこう言いたかったんだ」という自分の本音に、以前より早く気づけるようになる。

クローゼットを開けたとき、「今日の私はこれだ」という感覚が、自然と湧いてくる。

これらは、偶然ではありません。
RASが「ゴールに関連する情報」を優先的にキャッチし始めた結果です。

目標を立てることで、脳の見る世界そのものが変わっていく。
それが、「目標設定は脳への指令である」という言葉の意味なのです。

コーチングにおける目標設定の実践


私のコーチングでは、
「RASを活用したゴール設定ワーク」と、
「長期ロードマップの設計」という2つの段階で、目標設定を扱います。

ここで大切にしているのは、2つのことです。

ひとつは、「なりたい」ではなく「すでにそうである」という言語で設定すること。

「自信を持てるようになりたい」
ではなく、
「私はすでに、自分の感性を信頼し、自分の選択に誇りを持って生きている」という形で。

もうひとつは、そのゴールの状態を、感情(Emotions)と共にイメージすること。

どんな気分で、どんな表情で、どんな服を纏って、誰とどんな会話をしているか。
五感を使って、できる限り鮮明に描く。

感情を伴ったイメージは、そうでないイメージと比べて、潜在意識への定着が劇的に深まります。
これは、感情記憶が脳の扁桃体と深く結びついているという、神経科学の知見とも一致しています。

「現状の外側」のゴールを持つことへの、最初の抵抗

「でも、まだそうなっていないのに、すでにそうであるとイメージするのは、嘘をついているみたいで違和感がある」

そう感じる方は、少なくありません。

これは、ホメオスタシス(恒常性)という、脳の現状維持機能が働いているサインです。「現状を脅かす変化」に対して、脳が抵抗を示している。

でも、思い出してください。

③でお話しした「沈黙の後に出てきた言葉は本物」という話。そして、Life in Bloomシリーズでお伝えした「なった」という言語の力。

脳は、あなたが強くイメージし、感情を伴って繰り返し描いたものを、「現実」として認識し始めます。

「嘘をついている」のではありません。「新しい現実を、先にインプットしている」のです。

その違和感こそが、あなたがコンフォートゾーンの外に踏み出しているサイン。その摩擦を、③でお話しした「さあ、どんな本音が私に眠っているんだろう」というワクワクと共に、抱きしめてみてください。

目標は、管理するものではなく、“育てるもの”

目標設定というと、「数値で管理する」「期限を決める」「達成できたかどうか評価する」
——そういったイメージを持たれる方も多いかもしれません。

でも、私が考える目標設定は、少し違います。

目標は、管理するものではなく、育てるものです。

感情ノートで毎日自分の感覚を言語化し、感性の語彙を増やしていくプロセスの中で、「私はどこへ向かいたいのか」というゴールのイメージは少しずつ、より鮮明に・より深く、育っていきます。

最初は「なんとなく、もっと自由に生きたい」だったものが、3ヶ月(導入コース)、6ヶ月(本コース)と積み重ねる中で——「私は、こういうマインドで、こういう服を纏い、こういう人たちと、こういう関係性の中で生きていく」という、具体的で感覚的なビジョンへと深まっていく。

そのビジョンが明確になるほど、RASはより鮮明に「ゴールに関連する情報」を拾い上げ、潜在意識はより深く「それが当たり前の状態」として認識していきます。

WhyやHow toで目標を管理しようとするより、あなたのwantを大切に育てていくこと。

その先に、目標は「目指すもの」から「すでに生きているもの」へと変わっていきます。

次回【Emotions to Action⑤】では、
「自己開示の連鎖。一人が本音を語ると、場全体が変わる理由」
というテーマで、グループという場の持つ力についてお話しします。

結城 繭|mind coach × stylist

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