あの日から 少し変わった
すぐに変われたわけではなかった
白衣の意味が変わったあの日から、
すぐに何かが変わったわけではなかった。
次の日も、その次の日も、
これまでと同じように時間は流れていった。
業務の量も、忙しさも変わらない。
覚えることも、判断することも、変わらないまま。
うまくできない日があることも、
思うように動けない瞬間があることも、
これまでと同じように続いていた。
「少しは変われたのかもしれない」
そう思う日もあれば、
やっぱり自分は変わっていないのではないかと感じる日もあった。
あの日の言葉があっても、
迷いがなくなるわけではなかった。
それでも、
前とは少し違う感覚が残ることがあった。

同じ毎日の中で起きていた変化
同じように働いているはずなのに、
どこか見え方が変わってきているように感じることがあった。
以前の私は、
「ちゃんとできているかどうか」を気にしていた。
間違えないこと。
ミスをしないこと。
周りに迷惑をかけないこと。
そのことばかりに意識が向いていた。
けれど、
少しずつ変わってきたのは、
目の前の人にどう関わるかという視点。
うまくできているかどうかではなく、
いま、この人にとって何が必要なのか。
そのことを考える時間が、
ほんの少しだけ増えていった。
大きな変化ではなかった。
それでも、
同じ時間の中で、
自分の向き合い方が変わっているように感じていた。
関わり方が変わった瞬間
ある日のことだった。
患者さんと話をしているとき、
いつもなら途中で言葉を補っていた場面で、
そのまま待ってみたことがあった。
すぐに答えを出さず、
その人の言葉が出てくるのを待つ。
ほんの数秒のことだったと思う。
それでも、
その時間の中で、
相手の表情が変わったように見えた。
話し終えたあと、
その方は、安心したような表情をしていた。
うまく話すことや、
正しいことを伝えることだけが、
関わりではないのかもしれない。
ただそこにいること。
言葉を急がずに受け取ること。
そういう関わり方もあることを
実感した瞬間だった。

白衣を着る時間の中で
あの日から、
すべてが変わったわけではない。
今でも、
うまくできなかったと感じる日はある。
帰り道に、
「あのとき、別の関わり方ができたかもしれない」と
何度も思い返すこともある。
それでも、
以前と違うのは、
自分を、否定しなくなったことだった。
できていない部分だけを見るのではなく、
その中でも何ができていたのかを考えるようになった。
ほんのわずかな違いかもしれない。
けれど、
その見方が変わることで、
次の日の白衣の重さが、少しだけ変わることがある。
白衣の意味が変わったあと、
特別な何かが起きたわけではない。
それでも、
同じ時間の中で、
見えるものや感じることが少しずつ変わっていく。
白衣を着るということは、
完成された自分でいることではなく、
迷いながらでも、
その場に立ち続けることなのかもしれない。
もし、
いまも迷いながら白衣を着ているとしたら。
その時間は、
意味のないものではなく、
これからの関わり方をつくっていく途中なのかもしれない。
その変化はすぐに見えるものではないが、
気づかないところで、
少しずつ積み重なっていくものなのかもしれない。

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