朝は、戦場であり、希望の実験場でもある~高1男子は朝起きない~
息子は、どうしても起きられない日がある。
去年の夏頃から、ぽつぽつと学校を休む日が増えてきた。
学校が嫌いなわけではない。
むしろ好きで、土日も自主的に学校へ勉強しに行く。
イベントはほぼ皆勤。友達とも楽しそうにやっている。
ただ、朝、体が動かない日がある。
起きられず、そのまま休んでしまう日がある。
そしてとうとう、留年一歩手前になった。
「これ以上、何をすればいいのか」
私は毎朝、仕事に出るギリギリまで息子を確認する。
カーテンを開け、何度も声をかける。
本人が「休む」と言えば学校に連絡する。
「起きれる」と言えば、その言葉を信じて仕事に向かう。
でも、職場に着くと先生から電話が来る。
「来てません。確認してください」
家に電話すると、寝ている。
「起きた? 学校行く?」
「今日は休む」
そして学校に連絡すると、毎回こう言われる。
「欠席が多いと困ることになりますよ。ご家庭でも気を付けてください」
……これ以上、何をすれば良いのだろう。
仕事を辞めろということなのか。
その思いが、胸の奥でずっと渦巻いていた。
初めて支援センターに電話した日
あまりにしんどくて、発達障害支援センターに初めて電話した。
話を聞いてもらい、診断を受ける決心がついた。
診断を受けるのは、
「本人が自分の強みと弱みを知った方が、生きやすくなる」
そう思ったからだ。
この程度なら、特別な支援はないかもしれない。
それでも、知ることには意味がある。
私は、息子が構わないなら留年してもいいと思っている。
でも、できればしない方がいい。
学校が好きだから。
楽しそうだから。
久しぶりに怒鳴った朝
昨日、珍しく私が家にいる時間に、息子が朝食を食べに来た。
いつもなら私はもう出かけている時間だ。
「一緒に車で行く」と言うので、
息子が用意できるという15分後の出発を了承した。
私にとっては遅刻ギリギリの時間。
息子に合わせると、割高の駐車場になる。
でも、それは“安心料”だと思っている。
残り10分で声をかける。
「間に合う?」
「間に合うよ」
部屋を見ると、着替えていない。
ベッドでスマホを見ている。
「何してるの?」
「間に合うし」
その瞬間、私は久しぶりに怒鳴った。
「できないのはいい。でも、しないのは違う!」
あまりに久しぶりすぎて、昼まで喉が痛かった。
勝手にやっているのは私だとわかっている。
それでも、それは違うと思った。
少しだけ、光が見えた朝
今日はテストの日。
いつものように、まず彼の指定した6時にドアの外から声をかけた。
「おはよ」
目覚ましを止める反応で、その日の調子がわかる。
今日は鳴っていない。これは少し期待できる。
「起きれそう? 今日テストだよ」
「大丈夫」
間延びしているけれど、少しだけ正気も混じった声。
それだけで少し安心する。
6時半、7時、7時15分、7時半、7時40分。
脳のスイッチを何度も入れ直す。
彼は、こうやって少しずつでないと起きられない。
無理やり体を起こそうとしたこともある。
でも、私が疲れただけだった。
今日は、7時40分に自分で体を起こすことができた。
リビングに来た彼に聞く。
「車で行く? 何分で用意できる?」
「5分」
昨日の出来事が頭をよぎる。
でも、今日はちゃんと8分で用意してきた。
昨日怒鳴ったことも、
今日の小さな成功も、
どちらも私たちの日常の一部だ。
今日も、戦場のような朝だった。
でも、確かに希望の実験は成功した。
