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【大考察】映画『おもひでぽろぽろ』が、ホラー映画にしか見えなかった話


◾️『おもひでぽろぽろ』が面白い

歴史と文化をこよなく愛する
ちゃんとしてない系教養ママ
harukaです。



最近、4歳娘が
高畑勲監督作品
『おもひでぽろぽろ』(1991年)

どハマりしているんですが



めちゃくちゃ面白いですね?!?!?!!




作品のコピーは「私はワタシと旅に出る」



27歳、独身のヒロイン
親戚のツテで
「憧れの田舎」「農業」を楽しみ



その合間に
小学校5年生・10歳の頃の自分を
ぽろぽろと思い出していく
、という物語。



一見、「自分探し系」
「田舎リトリート物語」を
淡々と進めているように見えるのですが



いったん深読みを始めたら



社会的ホラー映画にしか見えなくて
考察が止まらない
🤣🤣🤣🤣🤣




ゾンビとかお化けとかは出てこないけど
なかなかの地獄絵図が詰まっていました



というわけで、今日は
40代女の視点で見る
『おもひでぽろぽろ』の
面白かったポイント
を語ってみます。



ちなみに、私が感じる
『おもひでぽろぽろ』の
ホラーポイントは、こんな感じ。



・最後まで隠されていた「あべくん」事件
・自分探しどころか「逃げ場探し」状態のタエ子
・無神経な田舎体験の重すぎる代償
・最初から仕組まれていた?本家の嫁探し
・ハピエン要素が見つからないトシオとの恋



◾️回想シーンの本当の時系列

1991年に制作された『おもひでぽろぽろ』は



1982年を主な舞台にしながら
1966年の主人公の少女時代の
回想シーンが入る、という
二重の「過去」を描いた作品です。



つまり、作品が根本的に
ノスタルジック(懐古的)




夏休みのラジオ体操に、スタンプシート
この光景を知っている世代、どれくらいいるんだろう



ところで
それら2つの「過去」は
時系列に沿って展開されていると
錯覚してしまう
んですが




実は、1966年の
少女時代の回想シーンは
時系列がけっこうグチャグチャ
です。




夏休みの話があったかと思えば
次の回想は冬のお話で
その後に紫陽花のシーンがあったりする



1966年の回想で登場する
思い出の本当の時系列は、この通り。



夏休み前(6〜7月?)
・あべくんが引っ越してくる(物語最後の回想)
・「お前とは握手してやんねぇよ」事件
・あべくん引っ越し(遅くとも7月13日迄に)

夏休み前(7月中旬)
・女子だけ「生理学習」
・男子に生理をからかわれる

夏休み序盤
・夏休みスタート(物語最初の回想)
・「田舎」への憧れ
・熱海へ1泊温泉旅行して卒倒

秋ごろ?
・分数の割り算で大苦戦
・「何も考えずにやる」ができない自分

11月
・学芸会で演技が評判に
・日大演劇部の誘いを父親に一蹴される

12月
・初めてのパイナップルが家族に大不評

12月〜2月?(梅の季節)
・エナメルのバッグ騒動
・父親に頬を叩かれる

1月
・広田くんとの初恋

2月15日前後
・給食残しのエピソード
・学級会(給食や廊下のルールについて)

家のカレンダー、教室掲示、黒板表記
描かれている服装や植物などから類推


さて、ここからどんなことが
言えるでしょうか?



▶︎実は序盤だった、「あべくん」事件

物語の1番最後に回想され
成人したタエ子が
「自分の嫌な本質」を突きつけられた
「あべくん」事件。



転校生で、清潔感がないことから
「クラスの嫌われ者」だった、あべくん



タエ子によると、あべくんは
「夏休みになる前に引っ越した」
「私の隣の席だった」

とのことでしたが



そもそもタエ子のクラスで
生理用パンツが話題になった日の
黒板の日付は、7月14日



タエ子の席は
ずっと「スー」くんの隣だったので



あべくんがタエ子の隣の席だったのは
それよりさらに前だと
考えられます。



あべくんを見かけた後のタエ子も
町の人々も、半袖で初夏の格好です



つまり、物語で最もヘビーな
「いい子ぶっている、嫌な子」という
タエ子の辛い自己認識は
5年生の序盤に既に経験されていて



それを内に秘めたまま
タエ子は残りの小学5年生を
過ごしていた、ということになります。



物語の冒頭の夏休みスタートのシーン
この1ヶ月ほど前
タエ子は「あべくん」を経験していた



▶︎「広田くん」がタエ子に惹かれていた理由

また、回想シーンを整理すると



学校では大人しいタイプだったタエ子が
隣のクラスのイケメンエース
広田くん
に好意を寄せられていた
理由も見えてきます。



赤と白、なんだか象徴的な二人の装い



学芸会エピソードは
物語の後半で回想されているので
気づきにくいですが



実は、広田くんからの好意や
クラス対抗試合があったのは
タエ子が学校の有名人になった
学芸会の後のお話。



学芸会の「村の子1」の演技で
タエ子はたちまち学校の話題に!



教室内のカレンダーによると
その広田くんとの初恋騒ぎは
1月頃の出来事。




夏休み前に、「生理」という
女性ならではのイベントに
直面させられ



タエ子の誕生月でもある
2月を前に
初めての恋を経験する
、というのは



物語の冒頭に出てくる


「サナギにならなければ、蝶になれない」
「サナギはちっとも蝶になんかなりたくないのに」


という成人タエ子の
ナレーションの内容を
象徴するような出来事です。




このように、回想シーンの時系列を
本来の並びに整理してみると
思わぬ物語が
浮かび上がってきます。




▶︎「信頼できない語り手」としてのタエ子

ところで、文学批評の世界では
「信頼できない語り手」という
ワードがあります。



通常、読者は小説などを読むにあたって
「私」などの「語り手」に対して
全幅の信頼をおくものですが



その「語り手」が、偏見や願望で
事実を歪ませていたり
重要な情報を隠していたり
読者を騙す
ような語りをすることがあります。




『おもひでぽろぽろ』は全編を通して
27歳のタエ子のモノローグによって
進められますが



彼女の回想話は特に
タエ子自身の願望や妄想で
かなり脚色されている可能性があります



その際たる場面が
クラス対抗の野球のシーン。



あのシーンだけ見ると
「広田くんの圧倒的活躍」により
タエ子たちのクラスは
完敗の雰囲気さえありましたが



審判が宣言したスコアは
意外にも「5-3」



それほど一方的な展開ではなかったのです。




この調子だと
タエ子に異様に冷たく接する岡島家
実際にはもう少し
マイルドだった可能性がありますし



学芸会での活躍も
話が多少盛られている可能性
出てきます。



学芸会で有名人になった話を
山形で得意げに披露するタエ子



思い出を脚色してしまうのは
人として、むしろ自然なことではありますが



時系列的には
序盤だったはずの
「あべくん」の記憶を
最後まで封じている
あたり



タエ子の回想は
やはり本人に都合よく編集されていて



そういった認知の歪みも
踏まえて鑑賞すると
また別の物語が
どんどん浮かぶようで、面白いです。




◾️時代を超えた、「女の生きづらさ」

ところで、私がこの作品を
「ホラー」だと感じるのは



『おもひでぽろぽろ』という作品は
田舎の風景に癒されながら
昔を懐かしむ
「癒しの物語」に見える一方で



時代を超えた「女の生きづらさ」
容赦なくフォーカスした
作品でもあるからです。



それは、タエ子自身が感じる
生きづらさ
でもあり
彼女の視点を通して見る
他の女性たちの生きづらさをも含んでいます。




▶︎「結婚」という現実に抗う、27歳タエ子

映画の冒頭で
長期休暇を取るというだけで
「失恋でもしたの?」
失礼なワードを投げられたり



「お見合いを断ったんだって?」
「あんないい話、もうない」
「あんたもいい歳なんだから」

と、長姉ナナ子から説教されたり。



山形県に行く前から
27歳のタエ子は
「恋愛」や「結婚」について
やたらと外野につつかれています。



昭和の働く女性のリアルが
垣間見える



ところが本人は
長姉ナナ子が結婚した
山形出身の義兄の縁から
「田舎」での農業体験に夢中



義理の姪ともすっかり打ち解けています



「結婚していないのは普通」
トシオ相手に強がりながら



少女時代からの憧れだった
「田舎」生活を満喫
しています。



1980年代の日本では
27歳という年齢は
確かに「結婚適齢期」の後半
という感覚だったかもしれません。



タエ子自身も
おそらく、それを感じていて



そんな現実に反発したくて
「夢の田舎」生活に
あれだけの気合を
ぶつけていたのでしょう。



夜行列車で、朝4時に現地到着し
もんぺに着替えて即紅花摘み、という気合



ところが、少女時代から
ずっと憧れていた
その「夢の田舎」では
思わぬ悲劇が待っています。




1週間お世話になる
義兄の本家のおばあちゃんから




タエ子は「トシオの嫁にならないか」
と、思いもかけない提案を
受けるのです。



田舎の実態も知らず、「いいところですね」を連発して
自分の首を絞めていたタエ子



都会の現実から逃げたくて
せっかく山形の田舎まで来たのに
しつこく追いかけてくる
「女は結婚」という現実




「田舎」にもまた「田舎」の現実がある
という、当たり前の事実が
タエ子の無邪気な夢を
粉砕してしまったのでした。




山形での農業体験は
最高のリトリート(避難)になるはずでした




▶︎岡島家の女たちの生きづらさ

「女の生きづらさ」というのは



現代のタエ子だけでなく
少女時代のタエ子の目を通して見た
岡島家の女たちからも伺えます。



象徴的だったのは
絶対的な発言権を持つ
父親の存在
と、子役反対事件




岡島家の男は、父親一人
それでも圧倒的な存在感でした。



学芸会の演技がきっかけで
タエ子が日本大学の演劇部から
出演依頼
を受けた時
岡島家の女性たちは、一気に湧き立ちます。



これがきっかけで子役になれるかも?!
と、タエ子の夢は大きく膨らみました



普段は小言ばかりの母親や姉2人
その上、いつも静かな祖母まで
この時ばかりはタエ子を褒めそやし
食卓は大盛り上がり!



ところが父親は
「演劇なんてダメだ」と一蹴。



女性たちの興奮は
一瞬にして鎮火され
タエ子の夢は儚く潰えてしまいました。



このとき、興味深かったのは
タエ子の母親の反応。



タエ子ほどではなくても



実は、母親も
ちょっと浮かれ気味になっていて
かつ、父親の反対にも意気消沈



作品中では「良妻賢母」に徹し
「自分の考え」や「自分の感情」を
ほとんど露わにすることのなかった
タエ子の母親は



きっと、現代以上に
「誰かに評価される」機会に
飢えていた
と思います。



末娘のタエ子が
華やかな脚光を浴びるのは



母親にとって
自分自身も認められたような
気持ちだったのかもしれません



結局、他のクラスの女子生徒が
代わりに子役を引き受けたと
タエ子が愚痴っていた時も



母親は珍しく
タエ子をたしなめませんでした。


唯一、タエ子に注意したのは
「自分が最初に出演依頼を受けたと
学校で言わないこと」。



娘の悔しさに理解を示す一方で
他クラスの生徒に対する、この気遣い。



「奥ゆかしい女の在り方」に関して
さすがタエ子の母は何枚も上手で



「女の生きづらさ」
何倍も味わってきた
悲しい熟練を感じさせました。




▶︎超女系家族の中、生理を知らなかったタエ子

ところで
祖母・母・姉2名という
超・女系家族
でありながら



学校で教わるまで
タエ子が「生理」を知らなかった
という事実も、なんとも歪な構図です。



こんなに女だらけの家族なのに
タエ子は「生理」を知らされていなかった



ちょっと怖すぎませんか?!!?!



それくらい
タエ子が子供扱いされていたのか
彼女の心身の変化に
誰も気にかけていなかったのか。



生理のことを知らずに
初潮を迎える気まずさは
生理を知る年代の女性なら
誰もが想像できるはず



十分な性教育を受けられず
自身の心身の変化については
ギリギリまでほったらかしにされ



心の準備も整わないまま
なんとなく「昭和的女性観」へと
歩かされる感じ。



現代の感覚で見ると
なんとも雑で、酷な世界です。




このように、『おもひでぽろぽろ』には
微笑ましいエピソードも
たくさんあるようで



細かく見ていくと
ゾッとするような設定も
多々含んでいます。



女性の自己決定に対する
時代を超えた
家父長的、社会的プレッシャーと
無慈悲な無関心。



27歳のタエ子が
5年生の時の自分を
思い出し続けるのは



タエ子にとって5年生が
「少女から大人へ」
象徴的な学年だったのと同様に



「結婚」という
社会からのプレッシャーを
受け入れざるを得なくなってきた



「少女から大人へ」の
もう一つの過渡期
だったからかもしれません。





◾️「田舎の現実」への、あまりの無知

▶︎タエ子の田舎体験の裏にあったもの

さて、話を「現代」に戻しますが



『おもひでぽろぽろ』の物語で
さらに酷なのは



「親の代から東京生まれの東京育ち」の
都会暮らしのタエ子が



「田舎の現実」に対して
決定的に無知で、無神経だったこと



「減反とか、大変なんでしょう?」と
日本の農業に対する危機感も浅すぎる



それは最後に
「農家の嫁になる」可能性を示唆されて
自己嫌悪に陥るシーンにも
象徴されていますが



そもそも、タエ子が山形で
農業を「楽しむ」ことができるのは



長姉ナナ子が
山形の農家の長男坊と結婚し
「田舎に縁ができた」から




夏休みにクラスメイト達が
田舎に行くのが、ずっと羨ましかったタエ子



少女時代から
田舎に憧れていたタエ子にとっては
夢のような「ラッキーな出来事」でしたが



ただでさえ後継者不足が
深刻な農家にとって
長男を都会に取られるのは
悪夢のような、大打撃



「私たちの家業を楽しんでくれて嬉しい」
「農業に親しんでくれて嬉しい」



そんな温かい眼差しだけで
るんるん気分のタエ子を見守れるほど
本家の人々は、穏やかでいられたのでしょうか。



タエ子の無邪気な「田舎体験」の裏には
岡島家との婚姻によって
切実さを増した
農家の「後継者」問題があったのです。




▶︎陰謀渦巻く「農家の嫁」探し

実際、物語の終盤になるまで
ほぼ「背景」状態だった

「本家」の人々
なかなか食えない存在です。



そもそも、タエ子が山形に到着した時も



迎えに行くのは
本来は「カズオ」という
前年もお世話になり、面識もあった
本家の人間のはずでした。




ところが、実際に来たのは
タエ子と直接面識もなく
「カズオさんの又従兄弟」という
年下の遠縁、トシオ



朝4時という
ハードな送迎なのに
前日になって急に行かされているのも
よく考えたら、不自然な話です



面識がなさすぎて
最初は不審人物だと勘違いされるトシオ



「タエ子を農家(トシオ)の嫁に」
という発想は
本家のおばあちゃんが
ひとり密かに温めていたようなので



カズオがトシオに
急に翌日早朝の出迎えを
お願いしている背景には



「農家の嫁」作戦を練っていた
おばあちゃんの
巧妙な戦略と指図

あったのではないかと推測されます。



良い笑顔すぎて怖い、本家の人々


しかも、本来
タエ子を迎えに行くはずだった
カズオはしれっと紅花畑にいて
(画像左端)



おばあちゃんやキヨ子さんと共に
異様に「良い笑顔」でタエ子を
出迎えています。



やっぱりなんかおかしくないか………?



この事実に、今まで
何の違和感を抱かなかった自分と
おばあちゃんの暗躍(※憶測)に
小さな戦慄が走る今日この頃です😇




▶︎タエ子の無神経と、トシオとの噛み合わなさ

さて、そんなことなど露知らず
タエ子は山形で
なかなかの無神経ぶりを発揮します。



「斜陽」産業である農業を
必死に立て直そうとしてる
トシオに向かって



「夢中になれるなんて、尊敬しちゃう」
と言い放ち



自分の勤務先が
東京の優良企業であることを匂わせつつ
「のめりこめないのよね」
とこともなげに言うタエ子。



途中、流石のトシオも
「それ、皮肉ですか」と言っちゃう



「夢中になれるかどうか」という
あまりに無邪気すぎる基準
自分とトシオを比較しているのが
いかにも「都会の人間」らしい。



こうした経緯があるので
物語のエンドロールで
タエ子が突然、帰りの列車から降りて
トシオと再会するシーンでも



結局、恋愛ものにしてしまうのか?
というこのエンディングは
賛否両論だったそう
広田くんとの初恋を思い出させる
相合傘



「この2人、絶対うまくいくわけないやん」
と、思ってしまうんですよね😂



いくらトシオに惹かれていても



「田舎」に憧れていた割に
「有機農業、ちっともカッコよくない」
というのが、タエ子の率直な本心。



「日本の農業」という大きなスケールで
当事者として、また貴重な「次世代」として
農業にコミットするトシオとでは



生き方も、住んでいる世界も
見ている先も、あまりに違いすぎて




果たして「愛の力」だけで
そのギャップを乗り切れるのか?

私は甚だ疑問です。




▶︎トシオもトシオで「痛い」件

さて、「ちっともカッコよくない」
と言われる程度には
ハードな有機農業を実践しているトシオ



だからこそ
あの農家や田舎に関する熱弁には
独特の説得力がありますが



トシオが農業を始めたのは、ほんの2年前。
その前はサラリーマンです。



それでいて「俺、百姓だから」
ハンガリーの「百姓の音楽」
わざわざ初対面の女性に
得意げになって聞かせるって



ちょっと痛くないですか🤣



田舎に憧れる都会の女性に
有機農業を熱弁し、事故りかけるトシオ



「俺、この車気に入っているんです」
わざわざアピールしながら
小洒落たマイカーで迎えに行ったり




本家に了解を取った上で
タエ子を蔵王デートに誘い
当日はおしゃれして超安全運転とか



トシオもトシオで
やっぱり25歳の可愛い青年だなと🤣

(我ながらこの感想がアラフォー)



それなりにおしゃれしてきたトシオと
何の気合いも感じないタエ子



そんなトシオの
いじらしい努力をよそに



タエ子は色気のかけらもない
地味色のボーダー服で
「デート」に臨んでいたり



「蔵王は違う」
と、せっかくのトシオのチョイスを
ナチュラルにこき下したりと



タエ子の無神経っぷりの
コントラストもまた面白い
🤣



物語後半では良い雰囲気に見えても
やっぱりこの2人は



最初から最後まで
何もかもが噛み合っていない
感じがする
のでした。




昔は「昔の自分を思い出す話」
としか見ていなかった
『おもひでぽろぽろ』。



今は、高畑リアリズムの沼に
考察が捗りまくり
とっても楽しいです😇




◾️「生きづらい女性たち」の未来

▶︎高畑リアリズムが描く「過去」と「現実」

このように、『おもひでぽろぽろ』は



少女時代の自分を思い出しながら
田舎の農作業を通して
本当の自分と出会う




「自分探し」の皮を被った
「逃げ場探し」の女性の物語
でもあります。



過去は美化され
27歳の現実には
リアルなほうれい線が
くっきりと刻まれる



ちょっと慣れるのに時間がかかる
『おもひでぽろぽろ』のほうれい線。



ところで、
1982年の登場人物たちは
躍動感あふれる「ほうれい線」
わざわざ描き込まれていますが



1966年の回想シーンでは
ほとんど描かれず



わざわざほうれい線が描かれるのは
タエ子の父親や祖母くらい。




27歳のタエ子より年上のはずの
タエ子の母親にほうれい線はありません。



つまり、回想シーンでは
ほうれい線を容赦なく描きこむ
1982年ほどのリアリズムは適用されず



やはり「綺麗事」に寄っている
可能性は十分あります。



タエ子にとって
1982年は逃れられないリアルな現実。



だからこそ、過去は
淡く、少し霞が勝って
美しく思えるのかもしれません。




▶︎きらめく思い出と、蝶になる

良妻賢母を貫き続けた母親と
マイペースながら
ほぼ黙り続けていた祖母。



キラキラと流行を追いかけ
一見「新世代」を感じさせながらも
父親には逆らえなかった姉たち。



美大に通い、流行の最先端だった
長姉のナナ子
あんなに気の強そうな次姉ヤエ子も
お父さんの決定には口答えしません



家族からの子供扱いに
不満を溜めつつ
夢見る少女だった10歳のタエ子が
たどり着いたのは



東京の一流企業に勤めながら
仕事には打ち込めず



少女時代に憧れた「田舎」で
自身の無知と偽善を痛感し



結局ただの「嫁候補」として
見られてしまう現実。




分数の割り算が苦手だったタエ子は
この現実を、割り切れるのでしょうか



やりたいことも、居場所も
見つけきれないまま
加齢とともに、自分の生き方を
外野にじわじわ狭められていく。



『おもひでぽろぽろ』は
そんな閉塞感を
見事に描いた作品
でした。



サラリーマンを辞めて
有機農業に心身を捧げるトシオは



タエ子の
こうした事情から考えると
確かに「尊敬しちゃう」存在でしょうし



言葉としては軽率でも
その「尊敬」には
タエ子なりの切実さも込められています



紅花を摘むために
血で手を赤く染めながら
自分たちの唇に紅をさすことは
一生なかった、かつての山形の女性たち。



そんな女性たちに比べれば
タエ子は「自由」な
「現代の女」なのかもしれませんが



昔ながらの
「ジェンダー」という枠組に
自分もまた押し込まれかかっている
という意味では



彼女もまた、かつての山形の女性のような
「恨み言」の存在なのかもしれません。



日々繰り返される朝日に、次々と花をつける紅花
昔の女性は、どう見ていたのでしょうか



「結婚」という現実を前に
ぽろぽろとこぼれてくる
小学校5年生の頃の思い出は




「女性性」を押し付けられる前の
無邪気な「サナギ」の子供時代が
今のタエ子にはどうしようもなく
まばゆく、恋しかったから
かもしれません。



そんな思い出に
時には自分で色をつけながら
美しい思い出にすることで
人は生きていけるのかもしれません。






以上、すっかり長くなってしまいましたが
ここまで読んでくださり
ありがとうございました。



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【haruka プロフィール】

演劇研究10年、高校教師13年。ぜーんぶ辞めて、家族で世界一周に出た41歳。大阪生まれ、京都育ち。幼少期にアメリカ3年🇺🇸

国際学会、進路指導、国際交流支援……一見ちゃんとしてそうなのに、博士論文出せずに大学院を退学。メンタル病んで教師も辞職。

「どこにも使えなくなった知識と教養」を、育児・旅・自分のために注入中。英仏独韓露語チョトワカル。

育児のモットーは、「親のメンタル死守」。自分の心を大事にしつつ、子どもには豊かな世界を見せたい。

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