イメージはいつでも雨のち晴れ
森林限界を突破したものの、ガスが捌ける気配がなく、このままガスの中を歩き続けると思った矢先に⋯
前回の話はこちらの記事になります。
はじめてのキャラメル

鬱蒼としたジャングルの木々の背丈は徐々に低くなっていった。気が付けば、木々の背丈は自分の身長とあまり変わらず、どうやら、キリマンジャロで言う森林限界を突破しようとしていた。


ジャングルから脱出をし、視界は開けてきたものの、朝から山を覆い被さっているガスが捌ける気配は一向になかった。


視界不良な中を歩いていたところ、一旦休憩を取ることになった。私が休憩所に到着する頃には、ツアーのみんなはすでに休憩に入っていた。
みんなよりも遅れを取って私も荷物をおろし、ひと休み。
あたり一面、ガスに覆われているものの、雨は降っていなかった。温度も湿度も不快指数が日本に比べて高くはなかったものの、朝から着用していたレインウェアはサウナスーツとなっていた。ひとまず、雨は降らなさそうという見解のもと、レインウェアは任意で脱いでもいいでしょうと言われ、みんな一斉にレインウェアを脱いだ。

私は日本から持ってきたキャラメルを食べているところを、ポーターたちは不思議そうに見ていた。私はポーターたちに「キャラメル、知ってる?」と聞いたら「キャラメル?知らない。」と答えた。「キャラメルを食べてみる?」と聞いてみたところ、「食べてみる。」と答えたため、グッチャンを筆頭に3名のポーターにキャラメルを渡した。
3人はキャラメルの包みをキレイに剥がしていた。私はキャラメルの味についてどうやって教えてあげればいいかが分からなかった。ひとまず、「キャラメルはミルクと砂糖だよ。」と漠然とした説明をしたが、3人の頭上には「?」マークが浮かび上がり、キャラメルの味を上手く伝えることができなかった。
3人はキャラメルの包みを取り、キャラメルを口に運んだ。すると、グッチャンがキャラメルを食べた第一声が「It’s very sweet!」だった。どれぐらい、very sweetだったかは分からないが、キャラメル自体がなかなか甘い食べ物であることは間違いなかった。「キャラメルは美味しい?」と聞いてみると、「もちろん、美味しいさ!」と答えた。
イメージはいつでも雨のち晴れ
ひと休みをしたところで、「もう少し歩いたらお昼休憩となります。」と言う添乗員の掛け声とともに、山行を再開した。

ジャングルに比べると、咲いている花の種類が多かった。ポーターでも、名前を知っている花があれば、名前が分からない花があった。花の名前はどうであれ、日本では見かけない花で珍しく、幻の花を見つけたような気分になってとっても嬉しかった。


森林限界を突破してからどれぐらいの距離を歩いたのだろうか。雨が降っているわけではなかったものの、ガスがどんよりと視界を覆っていた。ガスの世界観は好きだけれども、少しばかり晴れてほしい気持ちがあった。しかし、相手は自然である。自然のいいなりに従うしかなかった。
ところが、お天道様はどういうつもりなのだろうか、ポレポレで歩いていたところ、ガスは徐々に捌けてきて、さっきまで全く見えなかった周りの景色が鮮明に姿を現してきた。

ガスは徐々に捌け、青空が垣間見えるようになってきた。ツアーのみんなは「わぁ~!」と歓声を上げた。私も思わず声を出してしまった。


さきほどのガスはどこへ行ってしまったのだろうか。見る見るうちにガスが捌けて行き、どんどん山の姿が明るみとなって出てきた。
今朝の出だしの天気のことを思うと、今日の山行では青空を見ることは難しいと思ったけれども、まさかの突然の晴れ模様となり、初めてタンザニアで青空を見ることができた。
標高がそれなりにあり、空気が澄んでいるため、青空の色は濃かった。これは日本の高山でも同じことが言えるが、常日頃は海抜100m未満のところで生活をしており、公害に汚染をされた空の色は非常に薄汚い。その薄い空の色を見慣れてしまっているため、タンザニアで見る空の色は新鮮味があった。

ガスが完全に捌け、いくつかの高い山が我々を悠然と見下ろしていた。どの山がキリマンジャロであろうか。添乗員に聞いてみたところ、「キリマンジャロはまだ見えません!」とズバッと言われ、ツアー一同、肩を落とした。でも、今見えている山が例えキリマンジャロではなくても、初めて見る海外の山に心が躍った。
人生初めてのランチボックス
天気は快晴となった。そんな中、お昼休憩の場所に到着をした。今回はみんなと遅れを取ることなく、みんなと同じようにテーブルに座ることができた。

今日のお昼ご飯は、ランチボックスだった。人生初めての海外版のお弁当である。
お弁当の中身は、サンドウィッチ、ゆでたまご、チキン、カップケーキ、バナナ、スニッカーズだった。サンドウィッチの中身はピーナッツバターだが、ツアー会社とポーターの配慮で私のサンドウィッチの中身はレタス、トマト、にんじんのすり潰しとメニューを変えていただき、ヘルシーサンドウィッチだった。
ゆでたまごは、たまごの茶色い殻付きだった。たまごの殻を剥いで、殻から出てきたゆでたまごを手でパカッと割ってみたところ、黄身の色が黄色ではなく白色に近いクリーム色だった。あまりに色が薄い黄身に「黄身がほぼ白い!」と思わず声を漏らしてしまった。このことについて、添乗員が「ニワトリにあげる餌の違いですね。日本はオレンジ色に近いですし、インドは真っ黒ですよ!」と教えてくれた。インドのたまごの黄身は黒色、どのような餌をニワトリに与えているのだろうかとふと疑問に思った。
ランチボックスに入れられていたカップケーキだけでなく、キリマンジャロの山行中に出された甘味系のお菓子は全てジンジャーこと、生姜入りだった。砂糖に生姜、思いの外この組み合わせは相性が良く、どちらかと言うと癖になるような味だった。生姜入りの甘味系のお菓子は、キリマンジャロ登山オリジナルなのか、タンザニア自体がそういう味付けをしているかは分からない。
この日の朝食は完食した。完食したことは良かったものの、登山をしているが、超ハイパーポレポレで歩行をしているせいか、朝食をあまり消費ができていなかった。そのため、チキンを食べる余裕がなかった。今思えば、「MOTTAINAI」精神は、初日と二日目の朝食までであった。
最後に、アレルギーの関係上、スニッカーズは食べられなかった。周囲のツアーメンバーに「スニッカーズはいりませんか?」と聞いてみたところ、みんなも同様に満腹でこれ以上入らなかったようで、「いや、いいです。」と口々に言われた。食べられない食べ物を持っててもな、と思った矢先、「僕、食べます!」と少し席が離れた男性が挙手をして、スニッカーズを食べてくれると言ってくださった。私のスニッカーズは男性の手へ渡って行った。
ちなみに、このスニッカーズは三日目以降の昼食に出てきた(そうだ)そして、スニッカーズ攻撃を受けたみんなは、毎日スニッカーズが食べられず、スニッカーズだけが手元に残るという結末を迎えたそうだ。
カナダからやってきました🇨🇦

昼食を摂っているテーブルは、日本人同士固まって着席をしていたものの、私が着席していたテーブルには、二人の外国人が座っていた。この二人はものすごく気さくにフレンドリーに話をかけてきた。
「ねぇ、君たちはどこからやってきたの?」
「日本から来ました!あなたたちはどこから来ましたか?」
と、質問に答え、オウム返しをするように同じ質問をした。すると、
「僕たちはカナダからやってきたんだよ。」
なるほど、この二人はカナダ人であった。
(以下、私:はるのぼん、カ:カナダ人)
カ:「キリマンジャロは初めて登るんだ。」
私:「私も初めて登ります!」
カ:「お互い、初めて登るんだね。
実はね、僕の家族は僕以外みんな、
キリマンジャロに登頂をしているんだ。
それで、僕だけキリマンジャロに行ったことがなくてね。」
私:「ご家族の皆さん、すごくないですか?」
(いや、本当に超人ファミリーであると素直に思った。)
カ:「ありがとう。
それで、僕も登らなきゃと思ってここへ来たんだ。
こちらの方(もう一人の男性)は、僕のいとこ。
僕はいとことキリマンジャロへ登りに来たんだ。」
むちゃむちゃ、ええ話じゃないですか!と内心、「うんうん」と頷きながら聞いていた。すると、カナダ人に尋ねられた。
カ:「君たち、カナダについて何か知ってることはあるかい?」
この会話はデジャヴである。今朝、グッチャンに「カナダ」ではなく、「タンザニア」について聞かれていた。タンザニアの次はカナダか、と思っていたら、先に添乗員が答えてくれた。(以下、添:添乗員)
添:「僕は、ナイアガラの滝を知ってます!」
カ:「なかなかいいところを知ってるね!」
確かに、カナダと言えば、ナイアガラの滝が有名である。立て続けに、今度は私が答えた。
私:「私は、イエローナイフを知ってます。
オーロラが見えるところですよね?」
カ:「よく知ってるね。
イエローナイフは本当にキレイなところだよ。
カナダは見どころがたくさんある国だよ。
いつかカナダに遊びに来てね!
話に付き合ってくれて、ありがとね!」
私&添:「こちらこそ、ありがとう!」
と言って、会話は終わった。まさかの昼食の席でカナダ人とお話ができるとは思いもしなかった。このカナダ人がキリマンジャロへ行こうと思った素敵なお話を聞くことができて、ほんの束の間だったけど楽しいおしゃべりタイムだった。
ドイツからやってきました🇩🇪

ツアー一同は昼食を終え、身支度が終わったら山行を再開することになった。
ここの休憩所にはお手洗いがあったため、お手洗いへ行くと女性が一人並んでいた。その女性の後ろに私は並んだ。お手洗いの順番を待っている最中に、私はその女性に話しかけられた。
「初めまして。どこからやって来たの?」
「初めまして。私は日本から来ました。
あなたは、どちらから来ましたか?」
「私はドイツから来ました!」
カナダの次はドイツである。なかなか国際色が豊かな山である。
(以下、私:はるのぼん、ド:ドイツ人女性)
ド:「あなた、Colombia!
私、MOVESPORTよ!」
最初は、何を言っているのか分からなかった。よくよく見ると、自分たちが着ている服のメーカーについて話していることが分かった。
私:「そうです!そうです!
私はColombiaを着てます。」
ド:「あなたは、キリマンジャロを何日間の行程で登るの?」
私:「私は5日間です。あなたは?」
ド:「5日間なんだね。私は6日間よ。
5日間で登れるなら5日間がいいわ!」
私:「いえいえ、6日間の方がいいと思います!」
ド:「あら、そうかしら?」
私:「ちなみに、ドイツからタンザニアまで
どれぐらいかかりますか?」
ド:「ドイツからはね、
ドイツからドーハ(カタール)へ行くの。
そこから乗り換えて、エチオピア。
それでまた乗り換えて、キリマンジャロ空港よ。」
私:「えっ?そんなに乗り換えるんですか?
ドイツからタンザニアまで直通ではないんですか?」
正直、これには驚いてしまった。世界地図を思い浮かべてみると、ドイツからタンザニアはほぼ真下へ行けば到着できるような気がした。しかし、このドイツ人女性が言うように、カタールへ行って、エチオピアへ行って、やっとキリマンジャロ空港という道のりに、少々大回りをしているようにも感じられた。
ド:「残念ながら、ドイツからの直通はないのよ。
だから、ドイツからタンザニアまで14時間ぐらいはかかるの。」
私:「えー!本当ですか?」
思わず、心の声がうっかりと声を大にして漏れてしまった。
ドイツからタンザニアまで近そうに見えるけれども、謎の大回りをすることにより、14時間のフライトでやっと到着をすることから、日本から行く時間とあまり変わらないような気がした。
ここら辺で、ドイツ人の前の人がお手洗いから出てきたため、「お互い、良い山行を~!」と言われて、話が終わった。
世界一難易度が高いトッポン便所
お手洗いから出てきた女性は、同じツアーの女性だった。お手洗いに並んでいる私に気が付いた女性は私に向かってこう言った。
「ここのトイレ、鍵がかからないですよ。」
なんてこった!見張りがいなければ、間違えて開けられてしまう可能性が大である。今入っているドイツ人女性は私が見張るにしても、私の後には誰も並んでいなかった。そのことに気が付いた女性は、
「もし、良かったら私が見張っておきましょうか。」
この女性が女神様にしか見えなかった。女性のお言葉に甘えて、私がお手洗いに入っている間はこの女性に外を見張っていただくことにした。そうこうしている間に、先ほどのドイツ人女性がお手洗いから出てきたため、私はお手洗いへ入った。
お手洗いのドアを開けた瞬間、お手洗いの中が暗ッ⋯!

あまりの暗さに反射的にズボンのポケットに手を突っ込んでヘッドライトを探したが、ヘッドライトはザックの中にしまっているため、手元にはなかった。あと、スマートフォンもザックにしまっているため、光を灯す道具は手元には一つもなく、突如、暗闇に突っ込んで入ってしまった。
ふと、上を見上げてみると床から2.5mぐらいの高さであろうか、申し訳なさ程度に小窓が取り付けられており、そこから薄らと外からの光が入り込んでいた。しかしながら、この窓から差し込んでいる光はあまり頼りにはならなかった。

なんだ、この部屋ならぬお手洗いは⋯
人生初めての不信感しか抱かない第一印象のお手洗いである。ひとまず、ドアを閉めようと思い、ドアを閉めてみたところ、ドアは閉まった。しかし、女性の言う通り、鍵を回しても鍵は空回りばかりするだけでロックがかからなかった。
長時間暗闇に目をこらしていると、薄らぼんやりと周囲が見えてきた。ドアの近くをよくよく見てみると、漬物石みたいな両手で抱えるぐらいの大きさの石が置かれていた。おそらく、ここのお手洗いの鍵がかからないことは知られているようで、鍵がかからない代わりにドアの前に漬物石を置いて、外部からドアを開けさせないようにする。そのために漬物石が置かれていると推測をした。
暗闇でハッキリとは見えないものの、このお手洗いの個室にしては無駄に面積が広く感じられた。室内は暗いし、窓は小さいし、鍵はかからないし、お手洗いではなく、何かのお仕置き部屋にしか思えなかった。独居房よりもお粗末な空間である。
こんなに人を不安にさせる要素しかないお手洗いから、私は一刻も早く外へ出たかった。さっさと、用を済ませようと私は暗闇の中、便器を探した。ところが、便器らしきシルエットが見当たらなかった。
私は疑った、「ここ、お手洗いだよね?」いや、答えは一つ、「お手洗いである。」それに、同じツアーの女性を始め、私の目の前に並んでいたドイツ人女性もお手洗いで用を済ませている。みんな、どうやって用を済ませたのだろうかと、当たり前のことを疑問に持ち始めてしまった。
あたり一面をキョロキョロしていると、床に大きさ約30cmぐらいの小さな正方形の穴を見つけた。嫌な予感が頭を横切った。しかしながら、考えられることは一つ、この嫌な予感が的中してしまった。この約30cmぐらいの正方形の穴がトッポン便所であった。便器も何もない、床にただ正方形の穴が開けられているトッポン便所である。

お手洗いの概念をものの見事に崩しにきてくれた海外式(もしくは、キリマンジャロ式)のトッポン便所。この30cmの正方形に用を足さなければならない難易度が非常に高いトッポン便所に驚きを隠せなかった。こんなに難易度が高いトッポン便所は存在するのだろうか、いや、目の前に存在をしている。自分でも、今、ここで、何が起きているのかさえ全く分からなかった。分からないまま、用を済ませてそそくさと外へ出た。
外へ出たら、女性は待っててくれていた。女性に「あのトッポン便所、なんですか?」と聞いた。すると、女性は「なかなかすごいトッポン便所でしたね。私、ポケットにスマホを入れていたから、落としたらどうしようとヒヤヒヤもんでしたよ。」と言われた。
やはり、あのトッポン便所を目の前にしてパニックになったのは自分だけではないことを知って安堵をした。女性は付け加えて言った。「あと、ドアの付近に漬物石が置かれてましたよね。あれ、鍵の代わりなんでしょうね。」これまたやはり、みんなと考えることが同じで一安心をした。
ちなみに、男性用お手洗いはどうだったかは聞き忘れてしまったけど、男性も女性も同じ構造だと考えられる。
このトッポン便所とはここでお別れかと思いきや、あと数回お目にかかることになる。ところが、ここで海外式(またはキリマンジャロ式)トッポン便所を知ったため、これ以降のトッポン便所にはとくに驚きはなかった。ましてや、世界一難易度が高いトッポン便所のような気がしたため、今後このトッポン便所を超えるトッポン便所に出会わない限り、とくに驚くことはないだろう。変な謎の免疫を付けさせてくれて、ありがとう。
今回の旅を通して、世界一美しいトイレと世界一難易度が高いトッポン便所を利用するとは思いもしなかった。
世界一難易度が高いトッポン便所で用を済ませ、身支度を整えて、本日の宿泊地に向けて、山行・昼の部が始まった。
おまけ:私が習ったスワヒリ語【Mambo】
前回の記事で触れた、スワヒリ語の「Mambo(マンボウ)」。意味は「元気ですか?」英語では「How are you?」と同じ意味になります。

タンザニア・キリマンジャロ登山の記事は、こちらのマガジンにてまとめております。
