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ぼくものがたり【第15回】空襲警報と灯火管制

親父の畑に爆弾が落ちた昭和19(1944)年11月24日から、
阿佐ヶ谷でも本格的な空襲が始まった。

杉七(杉並第七国民学校)も、空襲警報が頻繁に出て、
勉強どころではなくなってきた。

警報には、二つの種類があったんだ。

「警戒警報」は、「ウーーーー」と長く鳴り続ける音。
敵機が近くに来るかもしれない、という知らせで、
授業は中断して、急いで家に帰された。

「空襲警報」は、「ウーッ、ウーッ」と短く断続的に鳴る。
近くに敵がいることが確実で、一気に緊張感が高まった。
帰るのは危ないから、防空頭巾をかぶって、
すぐに校内の防空壕へ避難しなければならなかった。

警戒警報で帰ろうとしていると、
空襲警報に変わる時もあって、みんな慌てて防空壕へ避難した。

空襲のときの態勢は、しゃがんで目を閉じ、耳をふさぎ、口を開ける。
そう教えられていた。
冗談じゃなく、大人もみんな、そうしていたんだよ。
口を開けないと、爆風で目玉が飛び出すって言われていた。

学校のあちこちに防空壕が作られていた。
校舎の下に穴を掘り、校舎そのものが天井になるような形だった。

壕の中は真っ暗で、湿っぽい土の匂いがした。
座ると、地面の冷たさが、じわっとお尻に伝わってくる。
水たまりのようなところもあって、靴がじゅくっと音を立てる。
気持ちが悪かった。

「ウー!」という警報と、バン!バン!と迎え撃つ高射砲の轟音。
町のあちこちに設置された高射砲が、いっせいに発射されるから、
壕の中にいても、地面がドン!、ドン!と震えた。
耳をふさいでいても、ものすごい音で、体中に響いた。

壕の隅では、上級生の女子が小さな声で「怖い怖い」って泣いていた。
先生は、
「死ぬときはみんな一緒ですからね」
と声をかけていた。

励ましの言葉になっていないよね。

一年生の僕たちは、ただただ、
団子のように固まって、じっとしていた。
誰もしゃべらず、ただ息をひそめて、静かになるのを待っていた。
警報が終わると、急いで帰された。

そして12月に入る頃には、空襲はますます激しくなり、
僕たちは、ほとんど学校へ行けなくなった。


灯火管制

夜の敵の空襲に備えて、
「灯火管制(とうかかんせい)」という決まりができた。

家の明かりを、外にもらさないようにしろ、という命令だった。
これは「防空法」にもとづく規則で、
守らないと、罰せられることもあった。

僕のうちも、障子のすき間から光がもれないように、
窓ガラスに何枚も黒い布を貼っていた。

電球の上半分を黒く塗って、光が真下にしか向かないようにした。
さらに、その電球の傘の上から黒い袋をつけて、
天井や壁に光が当たらないようにもした。

この取り締まりも、隣組の役目だった。
白い割烹着に、「大日本国防婦人会」と書いたタスキ姿のおばさんたちが、
町中を見回っていた。

ほんのわずかな明かりでも、外にもれれば、激しく叱られた。
優しかった近所のおばさんが、血相を変えて、やってくる。

「なにやってるんですかー!明かりがもれていますよ!
空襲を呼び寄せるつもりですかー!」
なんて怒鳴られた。

隣近所は、お互いに監視し合う義務があったから、
遠慮のない、厳しい言葉が使われた。

明かりをつけていた家の周りが空襲され、村ごと焼かれた、
そんな噂もあった。
だから、恐ろしくて誰もが必死になっていた。

家々の垣根や塀、窓や障子の枠も、
真っ黒なペンキを塗られたり、黒い板が貼られていた。
光の反射を防ぐための、国からの命令だった。

街灯も全部消されて、夜は本当に真っ暗だった。
月が出ていない晩は、何も見えなくなるほどの闇。
外を歩かなきゃいけない時は、みんな、手さぐりで歩いていた。

闇に、じっと身をひそめるようにして、生活していた。


でも、だんだん灯火管制も、あまり意味がなくなってきた。

アメリカ軍は、照明弾という、
下に家があるかどうかを照らすための明かりの爆弾を投げた。
僕も何度か見た。

空襲警報が鳴り、防空壕から空を見上げていると、
B29が、パラシュートのついた弾を一つ落とす。

高いところから小さな光が、ふわふわと、ゆーっくりと落ちてくる。
すると、ドン!と音がして、
パーっと、ものすごい強烈な光を放つ。

あたり一面が、一瞬、昼間のように明るくなるんだ。
花火よりも、もっともっと強い光り。

僕はただ「すげぇなぁ」と感心していた。

でも、家や人が、はっきり見えてしまう。
大人たちは、「見つかった!」と、青ざめていた。

だから、いくら家の光を消しても、
見つかってしまい、灯火管制も無力化していった。


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親父の畑に爆弾が落ちた――空襲のはじまり

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