ぼくものがたり【第27話】シラミ、疎開学童のもう一つの敵
疎開生活のなかで、もう一つ参ったことがある。
それが、シラミだった。
東京にいたころは、シラミなんて気にしたこともなかった。
ましてや、自分の体にたかるなんて、想像すらしなかった。
でも、疎開先ではちがった。
先に来ていた上級生の服にも、
すでにシラミがたかっていたから、僕たちもすぐにやられた。
髪や首、お腹、足、腕――とにかく体じゅう。
服を裏返すと、縫い目やゴムのところに、
白っぽい虫がうじゃうじゃ動いている。
2ミリほどのシラミが、鈴なりになってくっついていた。
すげぇ気持ち悪かった。
シラミは血を吸う。
吸われたところは、あとから猛烈にかゆくなる。
夜は体じゅうがかゆくて、眠れなかった。
血を吸ったシラミは、赤くぷっくりとふくらんで、
見た目もさらに気持ち悪い。
それを爪で潰すと、プチンと音を立てて、血が飛び散る。
よく、みんなで「プチン、プチン」とつぶしていた。
だけど、どれだけやっても、なかなか取りきれるもんじゃなかった。
僕たち男子は丸坊主だったから、
頭にはつかなかったけど、女子たちは大変だった。
当時はみんなおかっぱ頭で、その髪の根元にまでびっしり。
本当にかわいそうだった。
シラミは衣類にタマゴを産み付けるから、
服は大釜で煮沸消毒された。
寮母さんたちが汗だくになって、
大きな釜で次々に煮ていく。
男子も女子も関係なく、
下着もシャツも、ブラウスも、全部まとめて放り込まれた。
結果、色落ちと色移りがひどくて、
白いブラウスなんかはすっかりネズミ色に変わってしまった。
気に入っていたブラウスなんかが変色して、
女の子たちは本当に落ち込んでいた。
それでも、シラミはいっこうに減らなかった。
お風呂でも、シラミが浮いてひどかったんだ。
みんなが入っていた、川沿いの共同浴場は、
男女で出入り口は分かれていたけど、
湯船はつながっていて、真ん中の仕切り板一枚しかなかった。
板は水面すれすれに付けてあって、
潜れば隣に行けてしまうような作りだった。
だから、女子が髪を洗うと、
そこから流れたシラミが男子の湯にどんどん流れてくる。
水面には、シラミがいーっぱい浮いていて、
僕たちはそれを避けながら入っていた。
みんな口をそろえて、
「気持ち悪いなあ」と言っていた。
温泉街だったから、お風呂に入れる環境だった。
それでもシラミは、まったく減らなかった。
栄養もろくに取れない中で、毎日、シラミに血を吸われていた。
けっこうな量を吸い取られてたと思う。
だから、僕の体は、ますますやせ細っていったんだ。

今もこんなに美しい姿で残り、地元の人たちに愛されています。
※写真は上田市公式ホームページより引用

川のせせらぎを聞きながら湯に浸かれる、心まで温まるような温泉です。
※写真は上田市公式ホームページより引用
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