【インタビュー】オオゲジと虫の目レンズの人と呼ばれたい(虫写真家・枯草泥舟)
本記事は「虫撮り機材ガイド」のインタビュー編です。
広角マクロを武器に、オオゲジからムカデ、クモまで幅広く追う虫写真家・枯草泥舟さん。CCTVレンズを組み込んだ自作“虫の目レンズ”や、3Dプリンター製のアダプタなど、独自に進化させた機材とその使いこなしを語っていただきました。
枯草泥舟(Karekusa Deishu)

CCTV虫の目での撮影がメイン。
オオゲジ推し。
生き物知識は産毛レベル。
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■主な撮影機材
Sony α1Ⅱ
SIGMA 105 mm F2.8 DG DN Macro + CCTV虫の目レンズ
※以下、CCTVレンズ使用時の写真は使用CCTVレンズを表記させていただきます。
Xiaomi 14 ultraでの撮影に絶賛挑戦中
──早速ですが、普段はどんな環境で虫を撮ることが多いですか?
枯草泥舟:基本的には近場の里山公園や雑木林で撮影しています。子供がいるので夜間での撮影がわりかし多いですね。
観察会や目的の被写体がいる場合には、足を伸ばしていくこともあります。


FE 70-200mm F2.8 GM OSS II SEL70200GM2 + SEL20TC(2倍テレコン)

Laowa 25mm F2.8 x2.5-x5
──夜の撮影が中心なんですね。好きな被写体もやっぱり夜行性?
枯草泥舟:そうですね、好きな被写体はオオゲジ、ムカデ、クモです…が何でも撮ると言えば撮ります!!ただ結構気分屋なのでピンと来なかったり構図が浮かばなかったら撮りません。


枯草泥舟:一般的に人気の高い蛾目、トンボ目に対しては食指があまり動かなかったりします。冬場は活動している虫自体が少ないので土壌動物を度々撮りに行ったりしてますね。


枯草泥舟:虫を撮り始めて6年目になりますが、虫の種類には詳しくなくて、これはと言う種でなければ同定も”科”もしくは”目”で止めてしまうこともありますね。小難しいことは考えずに面白イイ写真が撮れて楽しめればそれで良いスタイルです(笑)


V両爬がいるとレンズが吸い込まれていきます。
──面白イイ写真!その自由さが枯草泥舟さんの型にとらわれないお写真になっているのですね!よく使っている機材も気になります。
枯草泥舟:現在のメイン機材は、
カメラ:SONY α1Ⅱ
レンズ:SIGMA105mm F2.8 DG DN MACRO + CCTV虫の目レンズセット
フラッシュ:Godox V860Ⅲ、GODOX MF12 ×2
その他:SmallRig社製ハーフカメラケージ、JJC社製フレキシブルアーム、Convoy社製T3(14650リチウム電池が使える高出力高演色タイプの補助光)、kuangren社ディフューザー
といった感じです。

枯草泥舟:CCTV虫の目レンズというのはCCTVレンズという小型のレンズを組み込んで、虫を大きく写しながら広角で撮れるレンズのことです。まるで虫の目線から見たような写真が撮れることから国内では”虫の目レンズ”と呼ばれることもあります。海外では”Wide angle macro”と呼ばれたりしていますね。広角で撮ることで背景を写し込んだり、パースを強調してダイナミックな写真を撮影することができたりします。また被写界深度が深い(ピントの合っている領域が広い)ことも特徴です。
枯草泥舟:詳しく知りたい方は私のnoteを流し読みしてください。
私が使ってる主に使っているのは35mm判換算で約15mm(2.8mmCCTV)、約22.5mm(4.5mmCCTV)、約38mm(8mmCCTV)の三種類で、たまに魚眼です。


──お写真のインパクトも強いですが、機材の見た目のインパクトもすごいですよね…(笑) 初めての撮影からそんな感じだったんですか?
枯草泥舟:虫の撮影を本格的に始めた際はOLYMPUS(現OM SYSTEM)のEM1-mk2と60mmマクロ、Godox TT350という小型のストロボを用いて撮影していました。加えてRaynox DCR-250というクローズアップレンズで撮影倍率を上げての撮影を行うこともありました。
虫撮影を始めてから半年程で自分で虫の目レンズを組んで、そこからは虫のレンズでの撮影がメインになりました。

枯草泥舟:虫撮影初期の写真。上述したセット(M.ZUIKO ED 60mm F2.8 Macro + DCR-250)で撮影しています。とにかく寄ってばかりいました。
──最初のセットアップからすでにこだわりを感じます。そして撮影をはじめて半年で虫の目デビューですか…早すぎる…いったい何がきっかけで今の装備に?
枯草泥舟:今の機材に至るまでには紆余曲折ありますが、まずフルサイズへの移行の発端は撮影した虫を4Kモニタでアップでとにかく高画質で鑑賞したかったから、ですね。
最終的に今のカメラになった理由として…単純に機材が好きだからというのも大いにありますが、端的に言えば何でも撮れるように、です。連射性能やプリキャプチャー機能(※シャッターボタンを押した際に◯秒前まで遡って記録してくれる人をダメにする機能)、AFの精度、被写体認識、高感度耐性、高画素、全部盛りな機種です。低い撮影技術を機材のスペックで補っています(笑)
──そんなカメラが…!?
枯草泥舟:正直、私には過ぎたスペックですし、懐事情もズタボロです。ただ、私生活が変化してきて段々と撮影に行ける頻度も減ってきた中、限られた時間で成果を出そうとすると多少なりとも機材へ投資して歩留まりを上げるのは有効な方法だと考えています。”あのときこの機材だったら撮れていたかもしれない”という後悔もなくなります(実際撮れていたかどうかは置いておきます)。
あとは良い機材を使うと写真が思うように撮れなかったときに機材のせいにはできないので、否が応でも自分の腕の低さと向き合わされます。

SIGMA 105 mm F2.8 DG DN Macro
枯草泥舟:レンズは汎用性、光学性能、AF可能、虫の目レンズとの相性が良いといったところでここに落ち着いています。
フラッシュはチャージ時間が早いリチウムバッテリー式の高出力の物をメインにすることで撮影テンポと歩留まりを上げています。重たいですが、このフラッシュに変えたおかげで明らかにクオリティオブカメライフが上がりました。
サブフラッシュに関しては広角マクロではレンズと被写体との距離が近いこともあり、一灯では光が回りにくいのでほぼ必須ですね。
本当は機材をもっとコンパクトにしたいのですが、自分の求める写真を撮ろうとすると中々削ぎ落とせないですね。もはや呪いです(笑)
──機材選びから戦いが始まっていますね(笑)。撮影時に気を付けていることはありますか?
枯草泥舟:撮影時に気をつけていることは…被写体へのリスペクトを忘れないことですね!…とカッコつけて書いてしまいましたが、要するにどのように魅力を引き出すかを考えて撮影しています。どういうアングルで撮ったら良いか、どういう風に光を当てたら良いか、どういう環境で生きているのか等、被写体の活き活きとした様を撮りたいと考えています。コレといった正解というのはないですし、その時の被写体のポジション撮りにも左右されるので試行錯誤の連続で、何枚も別カットを撮ったりしていますね。
当然、最初に触れたように被写体に対して撮らせてもらっているというリスペクトは前提にあります。どんな写真でも言えますが、被写体に対してリスペクトがなければ良い写真は撮れないと思っています。
──「この写真を撮っている人は本当に被写体のことが好きなんだろうなぁ…」って写真、確かにあります!リスペクトあってこその作品ですね。ストロボなどの光の当て方などで意識していることも聞いていいですか?
枯草泥舟:ライティングは人それぞれ好みだとは思いますが、私の場合は以下の三点
・なるべくテカらせない。
・不自然にならないように点の反射を2つ以上にしない。
・生息環境がわかるように背景を写す。
と言ったところを意識しています。実際は被写体や環境によって難しい場合もありますけどね。
──「背景を写す」とは具体的にどういった…?
枯草泥舟:背景に関しては基本の撮影が広角マクロなので昼夜問わず、活かせる状況なら写すようにはしていますね。背景があるとぐぐっと被写体の生命感が上がる気がします。


──たしかに生命力が伝わってきます!ところで虫の撮影ってピント合わせがAF派とMF派で分かれますよね。枯草泥舟さんはどちらですか。
枯草泥舟:ピント合わせはAFがメインですね。MFを使うのは撮影倍率を固定したいとき、MFのみのレンズの時ぐらいです。補助光を積んで明るさを確保すれば大抵AFで合わせてくれます。自分の眼に対する信頼度は低く、MFで撮るよりAFに頼った方がよっぽど歩留まりが良いです。とはいえ、AFも低照度の環境ではピントが外れている場合があったり、ピントが合って欲しい場所に合わなかったりするので、フォーカス枠を小さく設定しておいたり、撮影写真を拡大確認しながら何枚も撮ったりしていますね。
──手ブレ対策とかってしていますか?
ブレ対策は極力身体をどこかに接地させる。レンズと地面等の間に手で橋をつくる。ISO感度を上げることを恐れずにシャッタースピードの確保を優先する。連射して数を打って当てる。辺りですかね。あとはなにより筋肉です。
特にISO感度に関して、昔は低感度教でしたが脱退してからは心に余裕ができ、撮影の幅も広がりました。
──ちなみにRAW現像や撮影後の編集はしていますか?
枯草泥舟:そうですね、撮影は基本的にRAWで撮影し、PCにて現像しています。CCTV虫の目レンズは解像度やコントラストが通常のレンズより低いので、その辺りを特に誤魔化しています。
ワークフローとしてはAdobeのLightroomを使って選定、良いかなと思った写真をDxO PureRawというソフトにてノイズ除去・ディティール強化、そして現像ですね。Photoshopは使いません、使えません。コントラストとシャープネスの高い現像が好きです。
PureRawの無い生活にはもう戻れません。
──ソフトを駆使していますね!聞いたことないものまで…撮影についても自分でも珍しいかなっていう機材や撮り方などはありますか。
枯草泥舟:上述したように私のメイン機材はCCTV虫の目レンズというちょこっとだけ変わった機材です。それ自体が他の人があまりやっていないようなことになるのですが、撮り方もそれをより活かすためになるべく低い位置から虫を撮影するよう心がけています。時にはカメラを逆さに構えたり、バリアングルモニターを活かしてキテレツな構え方で撮ることも多々あります。
──機材の改造なんかもされているんですか?
枯草泥舟:自作・改造という点では虫の目レンズ自体がそうなのですが、その他にも多灯ライティングをするためにアームを取り付けるのに色々がっちゃんこしたり、3Dプリンターでレンズ用のアダプタを作ったり、補助光やディフューザー用のアーム、UVフラッシュのためのフィルターアダプターを作成したりと機材を弄るのが好きなので色々弄っては失敗しての繰り返しですね。この辺りはずっと答えを模索し続けています(笑)

※ライトは自作ではありません
──撮影の話で3Dプリンターが出てくるとは思いませんでした(笑) この装備の数や大きさだとフィールドまで運ぶのも現場の中で移動するのも大変じゃありませんか。持ち運びや取り回しで気をつけていること、工夫していることってありますか?
枯草泥舟:運搬時は基本的に全てカバンに収めているのでそれほど苦労を感じたことはないですね。気をつけていることは特にありませんが、工夫している点を強いて挙げるならば、カバンはカメラリュックとショルダーバッグの二個に分けていて、CCTV虫の目パーツなどのよく使う小物はショルダーバッグへ。その他の機材はある程度分解してリュックへ放り込んでいます。また、機材はなるべく分解・組み立てが楽なようにしています。


枯草泥舟:フィールドでは先程の写真にあった機材フルセット状態のまま肩からぶら下げて歩いています。過酷なフィールドではないため可能なことではありますね笑
また、虫刺され防止兼ポケット拡張のためにメッシュパーカーを着ています。私のような小道具を多用する人はアクセスしやすい場所を多く備えておくとフィールドでの撮影が捗ります。
機材は軽くはないですが慣れました。やはり筋肉こそが正義です。

──印象に残っている撮影エピソードってありますか。
枯草泥舟:なんといってもオオゲジの脱皮に出会ったことですね。あのシーンに出会わなければ今ほど虫撮影にハマっていなかったかもしれないです。
フィールドでオオゲジを見た際になんとなくいつもと様子が違っていて、なんとなく脱皮するんじゃないかとしばらくじっと見ていたんです。そうしたら案の定脱皮をし始めて、ひたすら興奮していました。脱皮直後のオオゲジはブルーグレーな感じで、フラッシュを当てるとより青く見えます。色味も含めて生命の神秘をビシバシと感じて、どっぷりとオオゲジ沼にハマりました。あの時の感動を追い求めるように毎夏オオゲジの脱皮を求めて夜な夜なフィールドに出向いています。

──ってことはお気に入りの写真もオオゲジですか?
枯草泥舟:ですね、お気に入りのオオゲジ写真は何枚もあります!特に気に入っている写真は上述の脱皮直後のオオゲジです。ただ直近では虫の目レンズで撮影したジョロウグモがスズメバチを捕食している写真ですね。

枯草泥舟:今まで自分の写真にはどこかしら不満点があったのですが、この写真に関しては自分で満点を点けている写真です。虫の目レンズの特性も活かしており、撮影現場でも背景の明るさを意識しながら機材の設定を弄り、偶然”撮れた”写真ではなく意識的に”撮った”写真なので、そういう意味でも自分の成長を感じられて気に入っている写真です。
──狙って撮れたときの感動って格別ですよね。それこそカメラのおかげではなく自分の力で手にしたような…!ほかに今後挑戦してみたいことってありますか?
枯草泥舟:挑戦したいことはたくさんありまして、ちょこちょこやっているUVIVF(いわゆるUV蛍光撮影)や超高倍率撮影(1mm程度の虫の撮影)をもっと詰めていきたいのと、動画撮影も本格的にやっていきたいと考えています。機材に関しても虫の目レンズにプリズムを組み込んだりとバージョンアップやブラッシュアップも続けていきたいと考えています。

SIGMA 105 mm F2.8 DG DN Macro
──機材や写真の可能性をとことん追及している枯草泥舟さんが、ズバリこれから虫の撮影を始めたい方々におすすめの機材は!?
枯草泥舟:初心者の方におすすめの機材を上げるなら、予算の兼ね合いもありますので、段階的に言えばとりあえずスマホで撮れるならスマホで。Xiaomi14/15UltraやXperia1Ⅵ/Ⅶ等のテレマクロに強い機種がおすすめです。後付のマクロレンズでも良いと思います。

枯草泥舟:次にOM SYSTEM TGシリーズ。もしコンデジをお持ちでしたらマクロ機能があるか確認してみてください。もしあるならそれを一度使ってみても良いかもしれません。
予算がある程度あるのでしたらマイクロフォーサーズ機と60mmマクロですね。マイクロフォーサーズ機はOLYMPUS(OM SYSTEM)のEM1-mk2を中古で買うのがコスパ良いです。
なんにしろ、とりあえず撮ることが大切です。
──最後にこれから虫撮影を始める方々に伝えたいことはありますか?
枯草泥舟:とりあえずお伝えしたいのは
『まずはとにかく撮る』
ということです。散々機材がどうの、撮り方がどうのとお答えしてきましたが、最初の機材はスマホでもコンデジでも何でも良いと思っています。
最初は思うがままにとにかく撮って、時には人の写真を見て、その中で自分がどういう写真を撮りたいのか、それには何が必要なのかと後から学び考えていけば良いと考えています。
先にこれとあれとそれが必要だな、と考えていると私みたいに頭でっかちになりますし、買ってみたものの結局使わなくてお金の無駄にもなります。
──ありがとうございました!
枯草泥舟(Karekusa Deishu)

CCTV虫の目での撮影がメイン。
オオゲジ推し。
生き物知識は産毛レベル。
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