【寄稿】技術で魅せる黒バック。カマキリを美しく写すための実践ノート(カマキリ写真家・CIDER)
本記事は「虫の撮影機材ガイド」の寄稿編です。
トンボの生態撮影からカマキリの威嚇姿勢まで──フィールドと室内、二つの舞台で被写体の魅力を引き出すカマキリ写真家・CIDERさん。
なかでも注目を集めたのが、黒い背景を活かしたカマキリのポートレート写真。海外でも話題となったその「黒バック撮影」について、機材構成から照明、現像、カマキリの状態管理まで、独自の手法と考え方を詳しく解説していただきました。
CIDER

主に野外でトンボとカマキリを撮影する人だったが、部屋で黒バックで撮ったカマキリの写真が海外でバズり、現在はフィールドでのトンボ撮影と室内でのカマキリ黒バック撮影の二刀流。
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テーマ:カマキリの黒バック撮影
カマキリの黒バック撮影について簡単にまとめました。あくまでも私のやり方であり、これが最適解とは限らないのでご注意ください。
■主な撮影機材
カメラボディ:OM SYSTEM OM-1
レンズ①:M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
レンズ②:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
ストロボ①:FL-900R
ストロボ②:FL-700WR
ディフューザー
ミニ三脚
黒い布
流木・枝
現像ソフト:lightroom Classic
レンズ2本の使い分けは、小さな被写体(体長4cm以下)と、顔周りのアップなど寄って撮りたい時は60mm マクロ、大型種の全身を写したい時は12-40mmを使う。
ストロボは片方はカメラに装着し、もう片方はミニ三脚につけて運用。(OMのストロボにはコマンダー機能が内蔵されているので、片方をカメラに付ければコマンダーは不要)
ライティング
天井バウンス(ストロボの発光部を天井に向けて光を反射させる手法)で柔らかい光を作る。
ストロボの直射光で撮るときはディフューザーを使って光を柔らかくする。
ディフューザーは市販のものを使っている(乳白色のポリ袋などでもOK)
硬い光とやわらかい光
【硬い光】
例:晴れの直射日光
コントラストが強い
光源の位置(光の向き)がわかる
発色△
解像◎
白飛びしやすい

【柔らかい光】
例:曇りの日光
光源の位置がわかりにくい→立体感△
発色◎
色のグラデーションなど、繊細な描写ができる

カメラの設定
絞り優先またはマニュアルで設定。
被写体に寄るとき(近づくとき)は絞り込んで被写界深度を稼ぐ。
背景は真っ暗なので、背景ボケとかは一切気にしなくてOK。
▼設定
絞り値:F8~11
シャッタースピード:1/60
ISO感度:100
シャッタースピードはこれでも全然ブレないので、光量を少しでも稼ぐために低く設定。
60mmマクロはF11より絞ると回折現象による解像度の低下が目立ち始めるので、これ以上は絞らない。
OMのカメラのISO感度200以上は暗部にノイズがのりやすい特徴(高輝度側諧調優先)があるため、黒バックでの使用は非推奨。

撮り方
カマキリは流木に載せたり、枝にぶら下がらせたりする。黒い布に直接置くのはNG。(黒い布は、被写界深度に含まれると、自然に黒く写すことはできない。レタッチで無理やり暗くはできるが不自然)黒い布は背景として完全に分離させる。
レンズは水平に構え、机など底面が写りこまないアングルをとる。
背景ではなくカマキリで露出(明るさの調整)を合わせる。重要。背景は完全に黒潰れしなくてOK。現像時に調整する。
アングル・構図

威嚇撮影の場合、カマキリの「顔」と「開いた翅」の両方が被写界深度に収まるようにアングルをとる。
寄るときは極端に被写界深度が浅くなるため、手前側の複眼には最低限ピントが来るようにする。「手前の複眼」と前脚を被写界深度に収める。
被写界深度とは
写真において、ピントが合っているように見える範囲。ピント面。
被写界深度の外側はボケる。
よくボケる=被写界深度が浅いためピント合わせが難しい。
▼被写界深度を深くする方法
①絞り値を大きくする
②レンズの焦点距離を短くする
③被写体から遠ざかる
④カメラのセンサーサイズを小さくする
【最重要】撮影するカマキリの状態
前提条件として、健康であること。個体の不調は写真に出る。
羽化して10日以内の個体を撮るときは発色に注意。カレハカマキリの前脚と前翅裏側の模様の赤色など、羽化してから色づくまで期間を要する種類がいる。栄養状態が悪いと日が経っても発色しない。
威嚇撮影の場合、飼育容器から出てすぐが最も威勢がいいので、勢いがなくなる前に撮りきる。次回の撮影まで2~3日以上のインターバルを設ける。

その他
種類によるが、流木に立たせるよりもぶら下がりの方が威嚇姿勢が良くなることが多い。インスタの投稿ではぶら下がりを上下反転しているものも多数ある。
RAW現像
現像前提での撮影となる。現像で行うのは諧調とホワイトバランス調整、色かぶりの除去、コントラスト調整など。すべて詳細に書くとものすごい量になるので、ポイントだけ。


諧調
露光量で調整すると黒くしたい背景まで持ち上がってしまうので、白レベルを上げて明るさを調整する。白レベルを上げてハイライトを下げていくといい感じになる。
背景が暗くない場合はシャドウと黒レベルを下げる。
黒レベル・シャドウ・白レベル・ハイライトで調整できない時はトーンカーブでさらに微調整する。
外観
テクスチャーとかすみ除去で質感と発色を調整する。テクスチャーは上げすぎると謎の青紫色が出現することがあるため注意。プレビューで変化を見ながら調整。明瞭度はあんまりいじらないのがベター。
WB
ホワイトバランスは撮影時はオートなどなんでもいいので、現像時に諧調の調整が終わってからいじる。いつも肌感で調整しているためうまく言語化できないが、緑が黄色っぽいなら青側に寄せる、茶色が赤っぽいなら青側に寄せる感じ。逆に黒っぽい被写体は青みがかりやすいのでオレンジに寄せる。
色かぶり補正は基本いじらなくていい。紫側に寄せたほうが解像感は出るが、やりすぎ注意。
プロファイル
ホワイトバランスまで調整が終わったらプロファイルを選ぶ。慣れないうちはAdobeカラーでOKだが、若干色乗りが悪いのでAdobe風景などを選ぶ場合もある。選んでみて、違和感のあるやつはやめておいたほうがいい。
カラーミキサー
色かぶりなどで出るいらない色を抜くのに使う。
黄色か紫が悪さをしていることが多い。
カラーグレーディング
色かぶり除去最終兵器。ハイライト・中間調・シャドウそれぞれに少しずつ青紫を足すと全体が整う。
ブレンドとバランスで不自然にならないよう調整。
初心者は諧調とWBだけおさえればOK。
数値を少し動かしただけでは変化量もたいしたことない結果になってしまうので、バーは思いっきり動かす。適用量+100とかもよくやってる。
AIノイズ除去も優秀なので、ノイズが気になるときは使う。低感度でもノイズが乗るときは乗る。※PCスペックによってはめちゃくちゃ時間がかかるので注意。
仕上げに周辺光量を少し落とすと雰囲気が出る。
CIDER

主に野外でトンボとカマキリを撮影する人だったが、部屋で黒バックで撮ったカマキリの写真が海外でバズり、現在はフィールドでのトンボ撮影と室内でのカマキリ黒バック撮影の二刀流。
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