【インタビュー】超高倍率マクロで観る小さな土壌動物の世界(土壌動物写真家・ジーク)
本記事は「虫撮り機材ガイド」のインタビュー編です。
土の中に潜むカニムシやザトウムシ、目に見えないほど小さな生き物たちを追い続ける土壌動物写真家・ジークさん。石をひっくり返す現場の見極めから、超高倍率でのライティング、車中泊での遠征スタイルまで。実践に裏打ちされたリアルな撮影スタイルを激白していただきました。
ジーク

土壌動物写真家
カニムシとザトウムシとトビムシとササラダニが特に好きです。
「土の中の美しい生き物たち」(朝倉書店)など。
HP : https://cagilis.jimdofree.com
Blog : http://bufoninus.blog47.fc2.com
Twitter : https://x.com/bufoninus
■主な撮影機材
CANON 90D
LAOWA 25mm F2.8 2.5-5×ULTRA MACRO
LAOWA 60mm F2.8 2x ULTRA MACRO
10倍対物レンズ
KuangRen KR-888
──ジークさんといえば小さな土壌動物ですが、普段はどんな環境で撮影することが多いですか?
ジーク:暑いのがとにかく苦手なので涼しいところの日差しがあまり入らない樹林内がほとんどです。季節によって場所を変えていて、気温が高くない晩秋〜春までは関東の里山〜低山地や海岸など、夏はブナ林から亜高山帯などが多いです。車中泊で回ってる関係上、夏はとにかく標高上げることがほとんどですね。あと亜高山帯の針葉樹林はずっと良い香りがするので集中力が長続きします笑
また土壌動物探しでは石や朽木、落枝をひっくり返すことが多いので、そういった"ひっくり返せるもの"が多いところを選んでいます。
──「石をひっくり返す」どこか懐かしい響きです笑。"ひっくり返せるもの" のポイントってありますか!?
ジーク:落ち葉がちゃんとあり、下層植生がしっかりしてるというのも重要なポイントで、そのようなところは土壌動物が豊富なことが多いです。また石にしても朽ち木・落枝にしても埋まりすぎてなく、浮きすぎてもいない、ちょうど良い塩梅で落ち葉層に乗っているものが良いです。

手頃なサイズの石が積み重なったり落ち葉層の上にちょうど良い具合に乗っている。

埋まりすぎてなく、新しくもなく、大きすぎないのでひっくり返せる。
──土壌動物が主役だと思いますが、フィールドに出ればいろんな生き物に会いますよね。そういう中で、特に土壌動物以外で好きな被写体はありますか?
ジーク:土壌動物がほとんどですが、元々両爬から生き物好きになっているのでヘビやカエルなどもよく撮影しています。その後はクモや粘菌、冬虫夏草などいろいろはまりましたが、本格的に土壌動物にはまってからの特に近年は被写体の9割5分が土壌動物ですね。他の生き物は見たことない種類だとか良い場面に遭遇した時くらいです。土壌動物の撮影は探すのと撮影に時間がかかり過ぎてとにかく時間が足りなくなるので他の生き物は二の次になってしまいます。
──撮影遍歴も少し。初めて買った虫撮影用の機材と現在の機材に至ったきっかけは?
ジーク:Olympus(現OM SYSTEM)のE-510 と ZUIKO DIGITAL 35mm F3.5 Macroです。
フォーサーズ規格がマイクロフォーサーズへと移行してしまった際に、小さすぎて自分の手の大きさではあまりにも持ち辛かったことと、仕事で鳥を撮影する機会が多いためキャノンへ移行しました。移行当初は2倍テレコンバーター+25mm接写リング+CANON EF-S 60mm F2.8 USM+レイノックスMSN202という組み合わせでしたがLAOWAのレンズが出てからは変わらないです。
────現在の”主力セット”も教えてください。
ジーク:
・カメラ:CANON 90D
・マクロレンズ:
LAOWA 25mm F2.8 2.5-5×ULTRA MACRO(+枯草泥舟スペシャルmarkⅢ)
LAOWA 60mm F2.8 2X ULTRA MACRO
10倍対物レンズ
・広角レンズ:LAOWA 15mm F4 WIDE ANGLE MACRO
・ストロボ:KuangRen KR-888
・その他:
Kenko 影とりジャンボ、自作ディフューザー
カメラケージ、Ulanzi スーパークランプ
強力なハンドライト(補助光)
※枯草泥舟スペシャルmarkⅢとは色消しレンズで倍率の底上げが可能。ワーキングディスタンスは短くなるが25mmのレンズ先にワンタッチで装着できるよう製作されている超優れもの。

+
LAOWA 25mm F2.8 2.5-5×ULTRA MACRO
+
枯草泥舟スペシャルmarkⅢ
────その組み合わせに落ち着いた理由、決め手はどこにありますか?細かいチューニングの話もぜひ。
ジーク:90Dは3250万画素というある程度の高画素機で、土壌動物では必須のバリアングルモニターであったためです。またLAOWA25mmは多数の接写リングをつけた状態でよく使用するのですが、フランジバックの短さのため接写リングとの相性があまりよくないとされるミラーレスではなく本機を購入しました。が、同じセンサーサイズのミラーレス機でテスト撮影して比較したわけではないので実際のところは分かりません。
ただし大量の接写リング+LAOWA25mmとマイクロフォーサーズ機の組み合わせは画質面で全く使い物になりませんでした。少量の接写リングなら大丈夫かと思います。
また、接写リングは全てに内面反射防止対策としてターナー色彩アクリルガッシュのジェットブラックを筆でくまなく塗っています。これをやらないとコントラストの低下や中心部が白く写るなどするため、接写リングの使用を考えてる方は必ず対策をしてください。光陽オリエントジャパンのファインシャット極を貼るのも良いようです。
LAOWA 60mmは当時初めて無限遠〜2倍まで撮影可能なレンズとして発売され、その当初から大型〜5mm程度までの土壌動物撮影で重宝しています。倍率を変えてもレンズ全長が変わらないためライティングがしやすいのと、ワーキングディスタンスが4cm程度と土壌動物撮影では個人的にもっとも撮りやすいと感じる距離であるためです。解像力も申し分なし。が、四隅がやや流れる傾向があるため(接写リングを挟むと顕著に出る)癖を理解した上で使用することが望ましいです。

LAOWAで初めて販売された2倍マクロレンズであるLaowa60mm。解像力にはいつも驚かされます。今でも現役です。
ジーク:LAOWA 25mmは2.5〜5倍のマクロレンズで似たようなスペックのレンズも他社から出ているものの、解像力が申し分なくワーキングディスタンスも60mmと同様に4cm程度とちょうど良いこと、またレンズが細く水平方向からの撮影もしやすいことが特徴です。ただし、倍率を上げる際はレンズを5倍にするのではなく、レンズを伸ばさない状態で接写リングを重ねて使用することがポイント(面倒な時や接写リングを付け足す余裕がない時は伸ばすこともあります)。自分の組み合わせだと倍率を上げやすいテレコンバーターを使うと色収差がよく出てしまうようになり解像感もなくなるため使いません。
また、本レンズは絞ると小絞りボケを起こしやすいため、レンズ単体〜少しの接写リングならF8、ある程度の接写リング併用なら5.6、かなりの量の接写リングならF4などと絞らずに使うことが重要。ボディとの相性もあるはずなので試し撮りして自分の許容できる値を調べておくと良いと思います。
他の高倍率レンズと比べると被写界深度は深い方なので(それでも慣れてなければ倍率が高すぎてかなり浅く感じると思われる)、高倍率撮影時にはいかに面的に捉えるかが重要です。

LAOWA25mmで撮影。低倍率ではF8でも解像度は悪くありません。
ジーク:これに枯草泥舟スペシャルmarkⅢを25mmのレンズ先に装着して撮影すると倍率を底上げできる上に色収差を抑えることが可能になりますが、ワーキングディスタンスが2cm程とかなり近くなりライティングがやや難しくなります。

大量の接写リング+LAOWA25mm+枯草泥舟スペシャルmarkⅢで撮影。
ジーク:10倍対物レンズは自宅で使用している顕微鏡についていたものをそのまま流用。別途M42に変換するマウントアダプターやM42→M42の手動の絞り、M42→RMS変換アダプターが必要となりますが、アリエクスプレスで揃えればそこまで高額にはなりません。
手動絞りの調整は慣れないとかなり難しいですが、体長0.5mm前後の種などはこのレンズを使って撮影することも多いです。ただし少しでも絞りの調整を間違えると画質が厳しくなるので鍛錬が必要になります。ワーキングディスタンスも1cmちょっとしかないのでライティングもシビアですが、これはレンズによって変わってきます。


大量の接写リング+10倍対物レンズで撮影。
ジーク:LAOWA 15mm F4は唯一無二の広角マクロレンズで、無限遠から等倍まで撮影可能。と言いつつ等倍はほぼレンズに被写体がついてしまうくらいの近距離であるため現実には1/2倍くらいまでが現実的な倍率です。
被写体にグッと近寄って被写体を大きく写しつつ背景も写すことができるので使用していてとても楽しいレンズです。シフト機能もついてるので便利。フルマニュアルなためある程度の慣れは必要。解像度は申し分なし。

──詳細にありがとうございます!撮影時に気を付けていることってありますか。
ジーク:普通の倍率の撮影と比べると非常に被写界深度が浅いため、いかに面的に捉えるかを重視しています。また物凄い小さなゴミ粒や倒木に付着した根の先端、クモの糸など肉眼では気づけないくらいのサイズのものが被写体と被ることが多いので、そういったものに常に注意しながらの撮影となります。
それと構図の追い込みがかなりシビアになるため(例えば1時間以上全く同じ姿勢で座り込んで撮影するなど)無理な姿勢で撮影していると体を痛めるので長時間同じ姿勢でも耐えられるよう座り込む場所もこだわるようにしています。定期的にゆっくりと立ち上がってストレッチなどして血流を良くしておくことも大事です。
また撮影とは直接は関係ないのですが、起こした石や倒木などは必ず元に戻しておくようにしています。一度起こしただけでも乾燥させてしまうので次に探すときは数か月単位で時間をあけて湿度などが戻るまでそっとしておきます。また起こす際は倒木や朽ち木などは側面や表面に冬虫夏草や粘菌など触るとすぐに壊れてしまうような生き物もいますので、そういったものがないかチェックしてからにしています。
────光の回し方は皆さん悩みどころです。ストロボやディフューザーの当て方で意識していることは?
ジーク:被写体がもつ特徴がしっかり出るように常に意識しています。例えば体表面が滑らか、ゴツゴツ、シワシワなど色々ありますが、そういった特徴が最大限分かるようその都度被写体の特性ごとに当てる角度を調整します。全て説明するとキリがないのですが、練習方法としては人工物でもいいのでそういった特徴のものがどういう角度からなら上手く表現できるかストロボを使う前にライトを当てて見ると良いかなと思います(ディフューザー越しに当ててみると尚良い)。お勧めは落ち葉の質感をうまく表現できるようになることです。
例えばですが、表面がゴツゴツしているものの立体感を出そうと思ったら正面からだけ当てても陰影がうまく出ず平面的な印象を与えてしまうので少し横から当ててみるなど。
また、直接光を当てないよう光が2回ディフューザーを通るようにしています。ただし立体感が残るようにシャドーとハイライトがちゃんと出る当て方をしています。

ジーク:また場合によっては被写体に透明感が出るよう背後からもう1灯ストロボを当てることもあります。


──機材の改造や自作とかもされているんですか…?
ジーク:改造は特になく、自作してるのはディフューザーくらいでダイソーのPPシートを加工してストロボの発光部に付けています。
────背景処理のさじ加減も聞かせてください。ライティングや背景の処理はどうしていますか?
ジーク:マクロでは自分の場合写る範囲が狭すぎてあまり気にしていませんが、夜間に広角レンズを使う際は背景も写るよう被写体の明るさよりやや暗くなる程度の強さで背景にもストロボを当てています。

LAOWA15mmで撮影。
ジーク:夜行性のため被写体だけにストロボを当てると背景は真っ暗に。そこで後ろに見える石灰岩も分かるようストロボを当てていますが、この時被写体よりも明るくならないよう光量を調整しています。夜間はストロボで全ての光をコントロールできるので慣れれば比較的楽に撮影可能です。
逆に昼間に暗い林内で広角撮影する場合はスローシャッターにせざるを得ないので難しくなります。

ジーク:こちらは枯草泥舟さんに教わって組んだCマウントCCTVレンズを用いた虫の目レンズで撮影しています。夕方近くのやや暗い林内だったので、ISO500、SS1/10という手振れ、被写体ブレしやすい設定。連写して数打ちゃ当たる作戦。
昼間の広角撮影はまず背景の明るさをISO感度とシャッタースピードで調整した後に被写体に当てるストロボの光量を調整するようにしています。このようなシチュエーションではシャッタースピードがかなり遅いため、被写体にストロボを当てて被写体ブレしないようにするのも大事。
──ピント合わせやブレ対策にも工夫があればお願いします。
ジーク:基本的にフルマニュアルのレンズしか持っていないので、被写体のサイズに応じて倍率を決め(レンズを変更し)、ピント合わせは指による微調整でカメラを前後させています。0.1mmのズレでもピンボケとなるうえ、被写体ごとに動き方が違うので、被写体がいる位置とその周囲に何があるかを元に動きを予測した上で前ピンの状態で待機して撮影しています。
動きが速い場合は予測しつつ流し撮りの要領で追いかけながら撮影します。
また、高倍率マクロ撮影で難しいのはなんと言ってもモニターで被写体を捉えること。初めて扱う時なんかは倍率が高すぎて被写体がいるとこにレンズを向けてもどこを見ているのか全然分からないと思います。僕はレンズ構える左手を工夫することでスムーズに捉えられるようにしています。
どういうことかというと、あらかじめワーキングディスタンスを元に「被写体がここにいるならこの辺に左手を置く」というところにセットするんですが(カメラを構える前に)、その際にダーツを持つような手の形にしておきます。人差し指と親指の真ん中見通しで被写体が見えるようにしてその上にレンズをそっと載せれば理屈上は左右の位置は合っているはず。後はカメラを前後させるだけになります。さらにこの時に重要なのが被写体の近くに何があるか、です。例えば小さな白い粒があるとか、菌糸の先端が近くにあるとか、細い枝のようなものの近くにいる、とか。そしてそれらを目印にして辿るとモニターで捉えやすくなります。やってみないと想像しにくいかもしれません笑

ジーク:ブレ対策はストロボを使用する際シャッタースピードを同調速度上限まで上げるため(90Dだと1/320)基本的にブレることはありません。が、もちろんカメラをホールドする手や腕が大きく動いてしまうと多少のブレというか解像感が低下するので手や腕などはあちこちに固定して安定したホールドにして滑らかに追い続けられるようにしています。被写体が極めて小さいことが多いため(1mm未満など)、安定したホールドがないことにはカメラのモニターで探すことも追い続けることもできません。
そのためには筋肉と体の柔軟性がものをいいます。あと多少の虫の襲撃には動じないメンタルも必要です。
──しっかり画を作り込んでから撮影をする印象です。RAW現像や写真の編集はしていますか?
ジーク:していますが、基本的には撮影時にほぼ完結するようにしていてそこまで編集はしていません。シャドーとハイライト、トーンの調整をしてホワイトバランスの色味の微調整をするくらいです。
被写体がいるところの背景によって全体の色が少し変わってくるので色の微調整は必須です。
──他の人があまりやっていないような撮り方や道具はありますか。
ジーク:倍率10〜35倍くらいの超高倍率撮影をしています。道具として特殊なものはあまりありませんが、接写リングを最大で226mm使っています。35倍(フルサイズ換算)だと画面横幅が1mmいっぱいとなります。定規で見てみてください笑
あとバリアングルモニターであることを活かして変わった角度で撮影することも多いです。超高倍率撮影では被写体をモニターで捉えるのが難しいうえ、被写体が頻繁にお尻をこっちに向けたり微妙に撮りたい角度で撮れなかったりすることが多々あります。そんな時はモニターで被写体を入れ続けたままカメラの角度だけ体が向いている姿勢に対して90度変えたりすることもあります。通常は自分-カメラ-被写体が一直線になっている状態で撮影することがほとんどだと思うので、他の人とは違う撮り方かなと。慣れればなんてことはありません。
──車中泊でフィールドを回っているとお聞きしましたが、車内での過ごし方も気になります。
ジーク:車中泊遠征時はきちんと睡眠をとれないと翌日のフィールドワークに支障が出るため(特に年を重ねると)、快眠できるようにマットはインフレーターマットを使用しています。中にウレタンフォームが内蔵されているためバルブを開くことで自動的に空気を吸い込んで膨らむタイプです。朝になっても空気が抜けづらく、自宅で寝るのとそこまで大差ない寝心地です。その代わりそこまでコンパクトにはならないためやや嵩張ります。
夏はその上にニトリのNクール敷パッド、冬は連結できるシュラフや電気毛布を使用します。

──機材の汚れや結露の対策はどうしてますか。
ジーク:機材管理は特別なことは全くしていませんが、毎日その日の終わりにはザック内にいつもの場所に機材をそれぞれちゃんと戻しておくのと、カメラのセンサーにホコリが付いた場合(超高倍率マクロだとどんな小さなゴミでも全部写真に出てしまう)はその日のうちにセンサースワブを使って自分でセンサー清掃をしています。
結露対策は吸水性の高いタオルで拭いてエアコンで湿度をとります。
──ちなみに車内での電源って…?
ジーク:電源はシガーソケットでタイプB、Cのコードを何本も用意し移動中はヘッドライトや補助光を少しでも充電できるようにしてポータブルバッテリーの減りを少なくしています。ポータブルバッテリーは2つあって一つは小型の144000mAh、もう一つは大型の160938mAhのものです。単三充電池を大量に使うのと上記ライト類やスマホの充電をしたり、炊飯器でご飯を焚いたり小型の水筒型の湯沸し器を使っています。また夏は扇風機、冬は電気毛布を使用するため1週間ほどの遠征ともなると2台は必要になってきます。
──数々のフィールドを渡り歩いて来たと思いますが、特に印象に残っている虫撮影のエピソードをお願いします。
ジーク:日本産土壌動物第二版のマメザトウムシの図を見てあまりの変な見た目に衝撃を受け、なんとしても見てみたいと思って地域を選んで環境を選んで先輩に案内して貰いました。なかなか見つからず3日目に訪れたところで何かを無言で撮影している妻の様子を見に行ったらモニターにマメザトウムシが写っていて膝から崩れ落ちそうになりました。当時(2013年)はまだ少なくともネット上には国内で撮影された本種の写真はなく、北米に隔離分布している個体の写真が数枚ある程度だったので、なんとしても自分で先に見つけたかった...

──同行者がいるときのあるあるですね。見ることができた喜びはもちろんあるけども…(笑) 初心者におすすめの機材や構成はありますか?
ジーク:自分に合ったものを購入してください。僕の機材は重すぎる上、被写体を見てすぐにサイズを目測で検討し(0.5mmなのか1mmなのか1.5mmなのかなど)、毎回接写リングを変えたり艶の有無で枯草泥舟スペシャルmarkⅢを付けるかどうかを考えるので物凄く大変です。全くお勧めしません。
手軽に高倍率を楽しむのであればマイクロフォーサーズ機に75-300mm+レイノックスのMSN202が倍率変更が容易で明るくて軽くてそれなりに写りますが、ピント合わせに癖があるのでそれなりの練習が必要です。
倍率に慣れてきたり、被写体が小さくて倍率が物足りないとなったらもっと高倍率な撮影としてlaowa25mmや10倍対物レンズも視野に入れると良いと思います。
──今後挑戦したい撮影や、気になっている機材は?
ジーク:LaowaのAurogonシリーズが気になっています。どなたかプレゼントしてください。
──最後に、これから虫撮影を始める方へお願いします!
ジーク:撮影に関しては高倍率マクロ撮影は技術よりまずとにかく慣れが必要なので低倍率(2~5倍あたり)から始めると良いかと思います。野外でいきなり撮影するより室内で4~5mmほどの何か(何でもよいです)をすぐにモニターで捉えられる訓練をするのがお勧めです。そうしないといくら野外で小さな生き物を見つけても撮影できずに終わります。僕も土壌動物撮影のため高倍率システムを組んだ当初は家の中で相当訓練を積みました(これはあくまで高倍率マクロ撮影の話で通常の撮影は実際に撮ってこそだと思います)。
上記スキルを習得すると、肉眼では見えない世界を野外で生きた状態でそのまま観察することが可能になります。生態的な知見を得るのが難しい小ささなので、どなたでも新発見をする可能性が高いのは大きな魅力の一つでしょう。

接写リング+LAOWA 25mm F2.8 2.5-5×ULTRA MACROで撮影。

粘菌を食べにくるトビムシを観察するのは土壌動物を探すうえで大きな楽しみの一つ。 LAOWA 25mm F2.8 2.5-5×ULTRA MACRO単体での撮影
ジーク:また、健康第一なので食事を見直し、筋トレ、ストレッチ、運動を適宜行いましょう。土壌動物は長い期間ずっとやっていても多様な分類群を含んでいるためなかなか極めることはできません。生涯ずっと楽しむためにも是非。撮影と観察のための安定したホールドのためにも非常に重要です。
そして土壌動物は乾燥に非常に弱い生き物なので、ひっくり返した石や朽木などは必ず元に戻すようにしましょう。

──ありがとうございました!
ジーク

土壌動物写真家
カニムシとザトウムシとトビムシとササラダニが特に好きです。
「土の中の美しい生き物たち」(朝倉書店)など。
HP : https://cagilis.jimdofree.com
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作品はBASEとSUZURIで販売しています。
書籍
○『季刊奇蟲』
毎回様々な土壌動物との出会いについて連載を書いています。
○『はたらく土の虫』
口絵の写真23枚を提供しました。
土壌動物が土の中でどういうことをしているのか初学者の方にも分かりやすく書かれておりお勧め。各分類群ごとの解説もあります。
○偕成社 『がろあむし』
写真提供、現地取材の同行、一部種の同定を担当しました。
○朝倉書店 『土の中の美しい生き物たち ―超拡大写真で見る不思議な生態―』
編著者、写真家として制作に関わった土壌動物の本が出版されました。
訳の分からない生き物にあふれている土壌動物の"あて"を付けるにはちょうど良い本になったのではないかと思います。
